2016.12.09 Fri UPDATE INTERVIEW

MJ INTERVIEW ROOM vol.11 
向井 理『RANMARU 神の舌を持つ男』

MJ INTERVIEW ROOM vol.11 <br>向井 理『RANMARU 神の舌を持つ男』

堤 幸彦監督が20年来温めてきた温泉ギャグミステリードラマの劇場版『RANMARU 神の舌を持つ男』。本作で“絶対舌感”の特殊能力を持つ朝永蘭丸を演じ新境地を開いた向井 理。デビュー10年の節目を経て思うモノ作りの醍醐味とは?

 

堤さんの衰えぬ情熱に頭が下がる思いでした

堤さんの集大成的作品出演できてうれしかった
 あの“舌”が帰って来る! 『トリック』や『SPEC』といったヒットシリーズを生み出し続けるエンタメ界の奇才・堤 幸彦が「20年来温めに温めてきた」という念願のアイデアをもとに、コミカルとサスペンスの融合を試みた連続ドラマ『神の舌を持つ男』の劇場版『RANMARU 神の舌を持つ男』。絶対音感ならぬ“絶対舌感”という特殊能力を持つ主人公の朝永蘭丸を演じるのは、ご存じ向井 理だ。
「最初に設定を聞いた時は“…?”というのが正直な感想でした(笑)。舐めたものの成分が瞬時にわかる…ということは物質を気化させて、その成分をキャッチするガスクロマトグラフィーの一種かなと思ったのですが、ならば舌よりも、むしろ鼻だろうし。一体どんな能力を持つ男なんだろうと。でも、堤さんの作品ですからね、そのへんは深く考えず、現場の勢いを大事にしよう。掛け合いにしろギャグにしろ、堤さんの頭の中を具現化するための手助けができればと切り替えました」
 全国の温泉を舞台に男女3人の珍道中を描いた温泉ギャグミステリー。木村文乃、佐藤二朗をはじめとする濃すぎる面々、2時間サスペンスや金田一耕助シリーズのパロディ…もとい、オマージュ。とめどなく繰り出されるハイブロウなギャグ。そこにほんの少しのラブ&エロス、社会派のエッセンスも加味した“堤節”も、そのまま。
「ドラマのクランクアップから2週間余りで劇場版の撮影が始まったこともあり(全10話のドラマから続く)11〜12話を撮ったような感覚。櫻井武晴さんの脚本はバカバカしくもしっかり計算されていて、変わらずおもしろいものでしたし、二朗さん、木村さんとの掛け合いも成熟した状態で臨むことができました。堤さんも、とても還暦とは思えないアグレッシブさで、衰えぬ情熱には頭が下がる思いでした」
 いわく、若かりしころ「衝撃のあまり思わず演出家の名前を調べた初めてのドラマが(堤の演出した)『池袋ウエストゲートパーク』」。やがて俳優となり映画『BECK』や『天空の蜂』、舞台『悼む人』などで現場を共にする機会を得たが、「いつか堤さんと連続ドラマをやってみたかった」そう。
「今までにない稀有なカメラワークや効果的な音楽の使い方。シリアスとギャグのバランス。どこか斜に構えて観る者に的を絞らせない、堤さんの独特の世界観に魅了されましたね。つかみどころのないものを見せられた衝撃に幾度となく見直しました。『神の舌〜』は、そんな堤さんの、ある種の集大成でもあるので本当にうれしかったです」

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 思えば昨今、リアリティは各段に増したものの、その世界にどっぷりと浸かれる、エンターテインメントを意識したドラマが減った気がする。
「もちろんリアリティも大事ですが、一方で作り手の熱量がそれを凌駕するような、はっちゃけたドラマがあってもいいと思うんです。堤さんの現場はまさにそうで、スタッフにしても誰に頼まれたわけではないのに、いろんなものを作り込んでくる。その“熱”に俳優は応える。今回の劇場版も、ものすごい量のエネルギーを使って作っていますから、スクリーンの隅々まで目を凝らしていただきたいですね」
 例えば、劇場版に登場する旅館・菩辺美庵(ぼへみあん)のシーン。
「女将は(『池袋ウエストゲートパーク』と同じ金曜日に放送されていた)『QUIZ』というドラマで主演されていた財前直見さんなのですが、そのプロデューサーは今回の劇場版と同じ植田(博樹)さん。だから『QUIZ』ネタが満載なんです。旅館の玄関には『QUIZ』の漫画が置いてあったりします(笑)。財前さんも、当時演じていた女性刑事のセリフをアドリブでおっしゃっていましたね」
 ほかにも登場する日本酒のラベルが連ドラのキーワードになっているなど、「誰も気づかないようなところに手間暇をかけている(笑)」。またゲストには木村多江、市原隼人らエンタメを標榜しながらも本気の面々がずらりと並び、おのずと現場の士気は高まった。
「堤さんをはじめスタッフも『これはどうですか?』とアイデアを出し合うチャレンジングな現場。それが当たり前でしたし、誰も苦に思っていない。そうすると俳優もそこに負けない何かを出そうと切磋琢磨するんです。台本を超えた力と言いますか、モノ作りのおもしろさを改めて実感しました」

 昨年デビュー10年の節目を迎え「新たなスタートとなった一年」に。「今、池袋の西口で『星回帰線』という舞台をやっているんですが(※取材時)、10代のころに『池袋ウエストゲートパーク』で見た場所だと思うと感慨深いものがありますよね」と振り返りながらも、その視線は次なる10年を見据える。
「理想は毎回、違う表情をお見せする。今回はコメディだったから、シリアスな役とか、悪役だとか。直球のラブストーリーをやったことがないので、それもチャレンジかな、とか。いかにもやっていそうと言われますが、実はないので緊張すると思うんですよ(笑)」
 共演者に「絶対にセリフを間違えないし、NGも出さない」と言わしめる向井の、そんな姿も見てみたい。
「やっていないことは山ほどありますし、チャレンジはし続けたい。まだ見たことのない自分を楽しみにしています」

OSAMU MUKAI
1982年2月7日生まれ、神奈川県出身。2006年に俳優デビュー。主な出演作は、映画『ガチ☆ボーイ』『BECK』『僕たちは世界を変えることができない。』『劇場版SPEC〜結〜』『天空の蜂』など多数。ほかドラマでも活躍。近年は、堤 幸彦が演出を手掛けた『悼む人』など、舞台にもその活動の場を広げている。

 

 

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(C)2016 RANMARUとゆかいな仲間たち

『RANMARU 神の舌を持つ男』

伝説の三助の孫・朝永蘭丸(向井)は放浪の末、鬼灯村にたどり着く。そんな折り、村で溺れた蘭丸を人口呼吸で助けてくれた女医のりん(木村多江)にひと目惚れするのだが…。

原案・監督:堤 幸彦、出演:向井 理、木村文乃、佐藤二朗木村多江 市原隼人ほか。全国公開中。

 

 

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