2017.04.22 Sat UPDATE CULTURE

カバーインタビュー 綾野 剛

カバーインタビュー 綾野 剛

綾野 剛の、1年半ぶりとなる連続ドラマがスタートする。タイトルは『フランケンシュタインの恋』(日本テレビ系。毎週[日]午後10:30~、初回のみ午後10:00~)。本作で演じるのは、120年もの間、森の奥でひとり暮らしてきた“怪物”だ。『メンズジョーカー』本誌では企画の成り立ちから、あくまでラブストーリーにこだわる彼の思いを語ってもらったが、『メンズジョーカー プレミアム(以下、MJP)』では、気になる怪物のビジュアルや撮影の裏側について聞かせてもらおう。

 

関わりたいけれど、関われない…そんな普遍的で根源的な物語にしたい

――『コウノドリ』以来1年半ぶりとなる主演ドラマ『フランケンシュタインの恋』が4月23日[日]よりスタート。綾野さんご自身も深くかかわった企画の成り立ちや本作に懸ける思いは、現在発売中の『メンズジョーカー』本誌のインタビューを読んでいただくとしまして。ここでは、演じる“怪物”について、もう少しお聞きかせください。

ポスターをご覧になっていただければおわかりだと思いますが、見た目は顔に傷、継ぎ足したコートを着用し、1話の入浴シーンであらわになる全身も傷だらけ。みなさんが思う、頭にボルトが刺さっている怪物のイメージとは違うと思います。日本では映画『フランケンシュタイン』や『怪物くん』のフランケンが定番ですが、海外では、もっと人間に近いビジュアルのものもたくさんあります。

――設定には、ビジュアルは一見、人間に近いものの人間とかけ離れた肉体とパワー、そして永遠の命を持つ生き物であり、内面はユニークでキュートで誰よりも人間らしい…とあります。

そのギャップは意識したいです。先ほどの入浴シーンにしても、普段は穏やかでチャーミングに見えるけど、肉体の傷を受けてやはり怪物なんだと。小説や映画の『フランケンシュタイン』は、怪物が自分を人間だと認めてほしくて闘う人権の話。本作は人権を勝ち取る話や、人間になりたいという願望の話でもない。自分が怪物だときちんと認識している主人公が、僕が生きる怪物です。

――ちなみに台本によれば、怪物は“ある姿”に変身するそうですね。

“変態”ですかね。“変形”と言った方がいいかな。自分の理屈では説明できない事、例えば恋だとか、怒り、苦しみ、嫉妬など、そういった事態に陥ると心拍数が上がり、身体中の傷から胞子が出てきて、怪物の手が変形する。その状態で人に触ると、相手の命を奪ってしまう。怪物の心の変動変革が肉体に具現化され現れるんです。そしてその手はある種、美しさを追及しています。悲しいクリスタルのような光に包まれたイメージ。

――そこはVFXで表現されるのですか?

怪物の変形したビジュアルに関しては造形でやっています。極力CGを使わない“ナマ感”にこだわっています。

――光に包まれ、異形の者へと変形する綾野さん。デビュー作『仮面ライダー555』で演じたスパイダーオルフェノクを思い出します。

あれは“変身”ですね。ベルトこそ巻いていないですが。スパイダーオルフェノクに変身するものの基本的には“人間”ですから。本作で演じる怪物は“怪人”ではなく、あくまで“怪物”であり、完全な人間ではないし、自分の意志であの姿になるわけでもない。そこが大きな違いです。

――その怪物は、かつて一度は死んだものの、医学博士である怪物の父の手によって蘇り、120年以上もの間、森の中でひとり暮らしてきた男。お芝居のプランはいかがでしょう?

とにかく“隙”だらけなんです。彼にとっては見るものすべてが目新しいため、街に出ると目をキラキラさせて、話しかけられてもまったく気づかない。そうした部分で、隙を作りながら、緊張感や物事を決めつけないように生きたいなと。楽しい時は5、6歳児のようで、そうでない時は自分でも整理のつかない、過去に人間であった時の闇があるところも感じさせる。そうしたお芝居は難しくもありますが、やり甲斐を感じます。

――クランクインは3月の中旬。実際に演じてみて感じたことは?

初日は、自転車に乗って坂を駆け降りるというシーン(第1話)を撮ったのですが、そこで少しだけ彼に近づけた気がしました。実際、現場に出てこそ、わかることがあるので。怪物は自転車の存在は知っていても“電動機付き”は知らないから、僕が知っているものを一度、全部捨てていかなくてはいけないわけです。そうすると(心が)浄化されると言いますか。自然と彼に近づいていける。

――本誌では、ある種ファンタジーの世界にいる異形の者が持つ“ピュアさ”を表現する上で「あたかも実在するかのような人物にしなければいけない」と。そこで、ふと浮かんだのが先の『シザーハンズ』であり、「浮かんだ瞬間、ピンときたんです。それは両手がハサミであるがゆえに人間として認められず迫害されてきたシザーハンズの、あの造形に対してではなく、“愛する者を抱きしめたいのに抱きしめられない”という悲しみ(哀しみ)という部分に」。「『シザーハンズ』が、実は『フランケンシュタイン』を題材にしていることを知って、その想いは確信へと変わっていきました」とも。

そうですね。山奥で120年育った怪物が人に出会い、人と触れ合い、人を知っていく中で人に恋をして、世界を知っていく。そんな物語にしたいなと。その過程で、なぜ怪物の記憶が喪失しているのか、なぜ自分の名前を知らないのか。120年以上も生きていられるのか。そうした秘密も暴かれていく。ラブストーリーというレールがしっかりとあって、そのほかはその枕木のような話なんです。だからミステリーでもなければサスペンスでも社会派のドラマでもない。あくまで、ラブストーリー。僕らは…もちろん本筋を支える枕木の部分もおもしろいのですが、見ている人たちがいつしか怪物であることを忘れ、人間に見えてくる――男と女の恋の物語として楽しんでいただけるように彼を生きたい。愛する人に触れたいけど、触れられない。もっと言えば、関わりたいけれど、関われない…そんな普遍的で根源的な物語にしていきたいと思っています。

――そのラブストーリー。先日出演された朝の情報番組では「恋とは?」と聞かれ「答えのないものですよね」と即答を。普段から「恋とはなんぞや」とか、考えているんでしょうか?(笑)

いや、何事も断定するのがあまり好きじゃないんです。断定して、そこに縛られるのが嫌いなんです。僕自身も常に変態、変形していきたいタイプなので。

――また「彼(怪物)にとっての傷はコンプレックスだと思うんです。でも、コンプレックスって自分で認めたり、誰かが愛おしいと思ってくれた瞬間、味方になる」とおっしゃっていて。確かに“恋をする”“誰かを愛する”って、そういうことだなと思いました。

あの時はそう言ったものの、今、彼を現場で体感して確信しました。彼自身はコンプレックスという概念がない。むしろ悩み人。ひたすら自身と向き合い悩み続ける。ただ顔の傷や、首の突起物などを受けて、そういうふうに見る人間が大勢周りにいる中、怪物が愛した津軽継実さん(二階堂ふみ)は、いつか彼の傷を愛おしいと思い、触りたくなるかもしれない。そこに向かっていく物語です。

――綾野さんご自身はコンプレックスがありますか?

僕はコンプレックスの固まりで、若い時はそれこそ髪の毛のクセから耳の大きさ、目、全部イヤだった。でも、それを「役のためになるのであればいい」と、さらけ出してからは味方にもなるし、武器にもなると現場に教えていただいた。今でもそれを積極的にさらけ出せるかと言えばわからないけど、それを「良し」と言ってくれる人がいるのであれば、その言葉を信じる方が人生は豊かになると思った。また自分で自分のコンプレックスを認めることで、視野や可能性も広がる。ラブストーリーとともに、そうした怪物の成長も見届けていただけるとうれしく思います。

 

 

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