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2016.05.31 Tue UPDATE CULTURE

クリエイティブディレクター 佐藤可士和さんの書棚

クリエイティブディレクター 佐藤可士和さんの書棚

トップクリエイターが選ぶ
視点を与えてくれる一冊

ユニクロに楽天、セブン‐イレブン…街のそこかしこで目にする佐藤可士和さんの仕事。行動力、決断力、そして人とは違う発想力で日本を代表するクリエイティブディレクターとなった佐藤さんが紹介してくれるのは、これら“力”を最大限に引き出すにあたり普段から心掛けている“ある姿勢”がよくわかる一冊『人口知能は人間を超えるか』だった。

「もともとAIには興味があり、著者の松尾 豊先生とは以前、対談させていただいたのですが、今後のクリエイティブの行方についてお聞きするなかで、より興味が。AIの歴史から、AIに何ができるのか、できないのか? 一歩踏み込んだ話題までわかりやすく解説されているので、入門書としては最適だと思います」

AIと聞くと身構えてしまうが、おなじみSiriをはじめ、いまでは身近な存在。また一昨年、AIの進化によって、10〜20年ほど先には米国の702の職業のうち約半分が失われる可能性があると報じられるなど、今後の生活に直結している。

「なくなっていく職業もあれば、逆に必要な能力もでてくる。本書を読んで、世の中の向かう先を冷静に見つめることが大事なんじゃないかと気持ちを新たにしました。常に先を見て、情報をキャッチアップしながらその内容を理解する。これができる人とできない人では仕事の成果が大きく違ってくると思うんですよ」

しかし、おもしろい、楽しい、美しい…AIが進化しようと「人間の本質は変わらない」と、佐藤さん。

「ただ、それらを伝える方法が変化することによってコミュニケーションも大きく変わるでしょうから、デザインの仕事にもきっと影響がでてくる。だからこそ、先を見なきゃ」

かつては「常に7〜8冊の本を同時に読みながら」情報を収集。これを咀嚼し、アイデアにも反映、デザインとして送り出してきた(著書『佐藤可士和の超整理術』に詳しく)。

「デザインやビジネス書を中心に政治、科学、カルチャーなど雑多に読みます。最近はネットも活用しますが、AIの話題にしても情報を羅列したものがまだまだ多い。本は『人工知能は〜』であれば、松尾先生の視点が入り編集されているから、著者の思考の流れがよくわかり、それが学びに。直接は関係なくても深い部分で仕事に影響を与えています」

本を読む理由は「視点を与えてくれるから」。世界で活躍するCDとなったいまでも、常に「視野を全方位に広げること」を心掛けている。

「若いうちはできるだけ難解な本を読んだほうがいいと思います。咀嚼しにくい本を読むことで、視野の幅が広がってくる。歳をとると老眼などの肉体的な理由から、それがなかなか叶わなくなってくるので(笑)」

本とは「出会いが重要」と語る。

「読んだときの年齢や状況によって、受け取り方が変わるもの。だから、そのタイミングで自分とピッタリ合ったものが特別な一冊になる。そうした本と出会うためにも、多く本に触れてみることをおすすめします」

 

【PROFILE】
佐藤可士和
1965年生まれ。東京都出身。1989年、多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。博報堂を経て’00年に「SAMURAI(サムライ)」設立。主な仕事に国立新美術館、ユニクロ、楽天グループ、セブン-イレブンジャパンなど。慶應義塾大学特別招聘教授、多摩美術大学客員教授も務める。

 

 

図2

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