時計マニアなら知っておきたい腕時計についての基本用語を、機構や素材、加工など各種ジャンルからピックアップして紹介して行く連載企画。知れば今まで以上に時計の魅力を理解できるだけでなく、さり気なくウンチクを披露すれば、デキる男アピールだってできるかも。覚えておいて損は無しだ。
●カ行
回転計算尺
数字や記号が描かれたリング部品を文字盤外周部に描かれた数値やマークと合致させるように回転操作することで、掛け算や割り算、キロとマイルの換算など、各種 計算が行なえる装置。元来は科学者や技術者用の携帯型計算機器だが、ブライトリングが1942年に初めて腕時計にこれを装備。「ナビタイマー」シリーズなどパイロット向けのモデルに現在も搭載している。
回転計算尺を装備したブライトリング 「ナビタイマー ヘリテージ」。
回転ベゼル
回転して操作することができるベゼル。ダイバーズの場谷はベゼルに0〜60の数値を描いて潜水開始からの経過分、GMTウオッチの場谷は1〜12や1〜24の数値を描いて第2時刻帯などを表示することができる。
回転ベゼルを装備したベル&ロス「BR 03-92 ダイバー ブルー」。
カボション
フランス語で「丸く磨いた宝石」の意味。リューズ先端部に、装飾性を高めるために設置され、腕時計の場谷はサファイアやエメラルドが用いられることが多い。
カリテ フルリエ
スイス連邦政府などによって独立性と公平性を保証された「カリテ フルリエ財団」が認定する時計規格。クロノメーター級の高精度に加え、部品仕上げの精密さや美しさなども厳格に審査される世界最難関な時計規格のひとつ。
緩急針
テンプの受け板部分に設置される装置。+と一表示に針を動かすことでヒゲゼンマイの振幅する長さを変化させ、時計の進み・遅れを微調整することができる。その 構造により、現在はエタクロン、トリオビス、スワンネックの3方式に大別されている。
逆回転防止式ベゼル
回転して操作ができるベゼルのうち、運針とは逆万同にしか回転しないよう設計されたベゼルのこと。潜水中に誤ってベゼルが回ってしまっても、ダイバーの潜水経 過時間(分)が実際より短く誤認されないよう、主にダイバーズウオッチに装備されている。
操作性の良い逆回転防止ベゼルを装備するミッシェル・エルブラン「トロフィー インランド」。
キャリバー
ムーブメントの形式番号(型番) のこと。カタログなどでは通常、 cal.と略されて表記される。元来は「口径」を意味する言葉で、中世時代にはムーブメントは大き さ(口径別)で分類されることが多かったため、現在にもその伝統が継承されている。
オリスのキャリバー114。2017年に発表された自社製キャリバー113をベースに、第2時間帯表示を与えたもので、大きな香箱がポイント。
クォーツ
結晶化した石英(クォーツ)が発する規則的で安定した振動数を電子回路で計測&カウントし、振動数が1秒に達するごとにステップモーターで針を動かす機構。一般的な機械式時計がテンプのリズム(毎秒5〜10振動)をベースにしているのに対し、クォーツの場谷は石英の振動数(毎秒3万2768回ほど)をベースにしているので、その精度は機械式時計の数十倍(月差士20秒〜)にもア ップすることができる。
クロノグラフ
ケースサイドに設置されたリューズ上下の2つのボタンを押して、簡単に操作できるストップウオッチ機構を搭載した時計。機械式の場谷は上のボタンがスタート&ストップ、下のボタンがリセットとなるのが一般的だが、スタート・ ストップ・リセットをーつのボタンで行なう「ワンプッシュ式」と呼ばれる方式もある。
逆回転防止ベゼルもカーボン製。エドックス「クロノオフショア1 クロノグラフ オートマチック」。
クロノメーター
ISO 3159によって定められた「高精度時計」の国際規格。15日間に及ぶ精度テストを公的機関が実施し、すべての項目をパスした時計に対して認定される。テストを行なう公的機関はスイスのC.O.S.C.が最も著名だが、フランスやドイツにも(かつては日本にも)設立されている。
クロノワークス
ブライトリングが2016年に発表した、精鋭集団の特別部門。 時計師をはじめ設計や化学、素材に精通した社内のスペシャリストで構成され、世界最先端のテクロノ ジーを駆使。ムーブの素材や性能を極限までアップさせる研究を行ない、その成果を製品にフィードバックしている。
クロマライト
ロレックスが2006年ごろから採用している新型夜光。蓄光型夜行で、従来品の「グリーン」ではなく「ブルー」に輝くのがその特徴となっている。
ケース
ムーブメントやダイヤルを収める時計の外殻部品。そのデザインはメーカーや時代によって千差万別。それぞれ、ムーブの形(丸型や角型)や製品イメージ、装着性などを総合的に考慮して決定されるが、現在では加工がしやすく量産が容易なタイプが主流となっている。
・ケースデザインの主な種類
ラウンド
丸型ムーブを効率よく収納でき、針とインデックスのバランスも良いため視認性は抜群だ。
トノー
中央部が膨らんだ樽型形状。優美でクラシカルなラインが、時計をドレッシ ーに演出する。
スクエア
シンプル&シックに徹した端正な表情が魅カ。フランス語で「カレ」と呼ばれることもある。
レクタンギュラー
ブレスレットを彷彿させる縦長形状。縦・横の比率はメーカーによってさまざまに変化する。
クッション
丸型のダイヤル&べゼルを、丸みを帯びた四角いケースで包む。古典的で暖かなイメージが魅カ。
コインエッジベゼル
硬貨のフチ部分のような、ギザギザ紋様が刻まれたベゼル。ベゼル部の光の反射を抑えて視認性を向上させるのと同時に、回転ベゼルの場谷は滑り止め効果でその操作性も高めている。
コインエッジベゼルの他にも大型のリューズが特徴。オリス 「ビッグクラウン ポインターデイト ブロンズケース」
コート・ド・ジュネーブ
ムーブメントの受け板(ブリッジ)部などに、専用旋盤機を用いて描かれる等間隔のストライプ紋様。その名の通りスイス・ジュネ ーブ地方を発祥とする装節技法。熟練職人が手作業で丹念に描くため、主に高級時計に施されている。
C.O.S.C.
コントロール・オフィシャル・ スイス・デ・クロノメーター(スイス・クロノメーター検定協会)の略。国際標準化規格ISO 3159に基づいたテストを行ない、「クロノメーター」の認定を実施するスイスの組織。ちなみに、検定数など規模はC.O.S.C.が世界最大だが、同じようにクロノメーターのテスト&認定を行なう機関としては、ドイツのグラスヒュッテ天文台検定所による「WEMPE」、フランス政府運営の時計・宝飾テクニカルセンターによる「CETH EHOR」も有名。
コネクテッドウオッチ
スマートフォンと接続することで、メールの送受信通知やGPSによる位置情報&地図ナビゲーションなど、各種アプリの機能をダイヤル(液晶)に表示することができる機能を持った時計。
コラムホイール
クロノグラフのスタート&ストップ、リセットといった動きを制御するための部品。歯車部分にア ーム部品が喰い込んだり外れたりすることで、その作動を制御する。現在は構造を簡略化するため、この部品の代わりに「作動カム」と呼ばれる部品を採用するのが一般的だが、ハイブランドの高級仕様クロノグラフの一部には、現在も採用され続けている。ピラーホイールとも呼ばれる。
Text:Akihide Toyama (TOY’S HOUSE)
〜次回は“サ行編”を紹介します!〜