時計マニアなら知っておきたい腕時計についての基本用語を、機構や素材、加工など各種ジャンルからピックアップして紹介して行く連載企画。より時計の魅力を理解できるだけに、ぜひ覚えていただきたい。
●ア行
IP加工
イオンプレーティングの略。真空の中で材料となる物質を蒸発(気化)させ、これを対象物の表面に吹き付けて薄い皮膜を堆積させていく表面加工技術で、乾式メッキ(PVD加工)の一種。宇宙開発事業の一環としてアメリカでその原理が開発されたPVD加工の中では(PVD加工には基箸法やスパッタリング法など各種がある)、プラズマ電荷処理を加えるぶん、特に廊署度の高い皮膜を形成することができる。
アニュアルカレンダー
年に一度、2月の末日にだけ調整が必要だが、他の月は日付けを自動的に正しく表示するカレンダー。永久カレンダーの一種だが、機構を簡略化することで価格も抑えめに設足されている。年次カレンダーともいう。
オメガ
コンステレーション グローブマスター アニュアルカレンダー
アブライドインデックス
アラビア数字やローマ数字などを象った金属塊を文字盤に貼り付け加工したインデックス。一般的なプリントタイプに比ベインデックスがダイヤルから立体的に浮き上がるため高級感があり、視認性にも優れている。
アラーム
設定した時刻になると、ベルが鳴る装置を搭載した時計。機械式の場谷は、内部に音を鳴らすためのハンマーやベル(リング)など音響用部品が組み込まれている。
アンチショック
機械式時計の中でも、特に繊細で級密な構造を持つ調速機構は落下などの衝撃でズレなどが生じることがあるため、天真(テンプの中心軸)の軸受け部に枠やバネを設けてそれみ防正する装置。
アンチマグネティック(耐磁時計)
時計の機械部品が磁気を帯びて正確に作動しなくなることを防ぐため、軟磁素材や非帯磁素材をケースや部品に採用した時計のこと。要件やテスト内容は国際標準化規格ISO 764と日本工業規格JISB7024によって厳格に規定。それに合格したモデルが「アンチマグネティック」と名乗る(刻印する)ことが許されている。 ちなみに、JlSではさらに要件を厳しくした2種規格も設けられている。
ジン
EZM3.J
一般的なステンレススチール製裏ブタに磁石をくっつけると、下のクリップも引き寄せられる。
しかし〈ジン〉の「マグネチック・フィールド・プロテクション」の裏ブタなら、磁力線が遮断されるため、クリップも引き寄せられない。
石
歯車部品の軸は常に回転しているため、軸受け部分はどうしても摩耗してしまう。それを防ぐため、軸受け部品の中心に設直される人工ルビーのこと。カタログなどでは通常「J」と表記され、「21J」と記載ざれていれば、その時計は機械部品に総計21個の石を使用していることを意味している。
インダイヤル(サブダイヤル)
文字盤内に設置される小さなダイヤルのこと。クロノグラフの30分積算計や12時間積算計などが有名。日本ではインダイヤルと呼ぶことが多いが、海外ではサブダイヤルやカウンター、レジスターと呼ぶ方が一般的。
インデックス
時を示すために文字盤に設置された数字や記号。下のようにローマ数字やアラビア数字、図形など各種があり、モデルの個性やトータルデザインを考慮して採用されるのが一般的。加工方法には文字盤に直接印刷するプリント、金属塊を貼り付けるアプライド、文字盤を裏からプレスして数字の形に浮かび上がらせるエンボスなどがある。
【インデックスの主な種類】
アラビック
アラビア数字。読み取りやすさや瞬時の視認性にも優れるため、現在は最も多く採用されている。
トライアングル
逆三角形の先端部で0(ゼ口)位置を示すのに適したインデックス。主に12時位置に配される。
バー
棒状タイプ3・6・9・12時など特に目立たせたい部分は2本棒や極太にすることもある。
ボイント
シンプルな丸型タイプ。3時や6時、9時は数字表記など、アラビックや口ーマンと併用される例が多い。
口ーマン
口ーマ数字。幾何学的でドレッシィなイメージなので、ドレス系高級モデルとの相性は抜群だ。
インナーケース
ムーブメントを磁気や湿気から守るため、二重構造になったケースの内側部分。耐磁目的の場谷は、磁気を帯びやすく透過しやすい(放出しやすい)性質を持つ軟磁性金属(軟鉄など)が素材に多く採用されている。
インナーベゼル (インナーリング)
時・分など数値が描かれ、文字盤外周に設置された回転式リング部品。ケース外周部に設直されたリューズやボタンで簡単に操作することができ、ダイバーズやGMT、ワールドタイマーなどに主に採用されている。
アウターベゼルを回すと連動してインナーベゼルも回転するボールウォッチ「エンジニアマスタ111ダイバーⅢ」
WATER RESIST (防水時計)規格
時計内部に水気が浸入しないよう、リューズや裏ブタのねじ込み構造、パッキンなどを用いて気密性を高めた時計のこと。ISO 22810とJIS B 7021によって要件やテスト内容が規定され、耐磁時計の場谷と同様にそれに合格した時計のみが「防水時計」の表記をすることが許されている。ちなみにJISの場谷、防水性能は日常生活防水 (2~3気圧防水)、日常生活用強化防水(5気圧、10気圧、20気圧防水)に区分され、それぞれテストが実施されている。
永久カレンダー
2月や6月、9月など28日~30日までしかない小の月を、蒔計が自動的に判別し、月末~翌月には正しく「1日」を表示するカレン ダー機構。4年に一度の閏年も正しく認識し「29日」を正確に表示することができる。
エスケープメント
機璽詮計はテンプなどの調速機構で正確なリズムを作り出し、それを時・分・秒針を動かす輪列機構部に伝える構造になっているが、その調速機構部と輪列機構部とを繋ぐ役目を果たす機構部のこと。先端部にパレッツと呼ばれる爪石を装備し、テンプの正しいリズムによって動きを制御される「アンクル」と呼ばれる部品と、輪列機構部に直結したガンギ車と呼ばれる部品で構成されている。日本では脱進機構とも呼ばれている。
ETA
スウォッチグループに属する世界最大のムーブメント製造専門メーカー。機械式とクォーツを合わせて、その生産数は年間1億本以上といわれている。
エル・プリメロ
1969年にゼニスが開発。量産型としては世界最速となる毎時3万6000振動を実現した自動巻きクロノグラフ・ムーブメント。 誕生後半世紀以上も進化を続け、現在でもゼニスの旗艦ムーブとして活躍。2016年にはスケルトンモデルも発表され話題に。
ゼニス エル・プリメ口 36000VpH
エンジンターンドベゼル
ギザギザの小さな溝が刻まれたベゼル。その外観が航空機のエンジンヘッドに似ていることからこう呼ばれるようになった。
オープンワークダイヤル
文字盤に透かし彫りを施干などして、スケルトナイズ。内部のムーブメントが見える加工方法のこと。スケルトンダイヤルともいう。
Text:Akihide Toyama (TOY’S HOUSE)
〜次回は“カ行編”を紹介します!〜