2017.02.15 Wed UPDATE FASHION

えっ、カナダグース春夏アイテム? 驚きの開発ストーリー①着心地編

良質、豊富なダウンで真冬の寒さから開放してくれる〈カナダグース〉。アークティック(北極)をかたどったブランドワッペンをワンポイントにあしらったソリッドなデザインで、日本では都市生活者から高い支持を受けている注目ブランドだ。その〈カナダグース〉が春夏アイテムをリリースし、トータルアイテムのラインナップに向けて始動するという情報をキャッチした。
そこで、春夏の新作アイテム紹介とともに、真冬のイメージが強いブランドが、どのような意図をもって進出していくのか、その決意をプレスの冨岡 玄さんに訊いてみた。
 

プレスの冨岡 玄さん。日本の〈カナダグース〉ファンへの情報発信とともに、日本のファッションシーンでの〈カナダグース〉のポジションをカナダ本国へ伝えるスポークスマンとしての役割も務めている。〈カナダグース〉の日本での展開の方向性を創造していくキーマンのひとりだ。彼の愛用アイテムは、〈カナダグース〉のブランドアイコン的モデル、エクスペディションパーカ。
 

第1回 実際に春夏物に袖を通して感じたファーストインプレッションをぶつけてみた

 
ーー今回紹介するS/Sのアイテムを実際に着てみたんですけど、まるで身体の一部になってくれるような服だと感じられたのですが、この着心地の良さの秘密は?
 
冨岡 玄さん(以下冨岡) 元々、F/Wでもハイブリッジライトシリーズというラインがありまして、これは運動力学を取り入れたデザインとなっています。ストレッチの効いた素材をサイドに使用していて、袖口などにはステッチによってフィット感を高めています。動いたときに心地よく感じることを追求したアイテムはF/Wから引き続き展開しているのです。なぜ、こういったアイテムを作ろうという話になったかというと、実は、ウルトラマラソン、アースマラソンの参加選手、登山家、犬ぞりの世界チャンピオンなど、実際に〈カナダグース〉を愛用されている方々からの意見やアイディアをフィードバックして商品を開発してきたという歴史があるのです。こういった〈カナダグース〉愛用者の方々を「グースピープル」と銘打ち、彼らとともに動きやすさや新しい素材を追求してきた積み重ねがすごく重要で活きてきていると感じています。「グースピープル」の存在はブランドにとってとても大切なものなのです。
 

DUNHAM JACKET 5万6000円 肘関節部分にストレッチの入った素材が配されている。
 
 

 

JERICHO BEACH JACKET 5万8000円 裏地のダズル迷彩がデザイン面での特徴。機能面では、やはり、肘関節部分のストレッチと、袖口リブの根元のステッチが効いている。動きやすさとフィット感の両面を実現。
 
ーー身体を動かしたときに、動くべき所は身体とともに動き、ピタッと止まって保温してほしい部分は止まっている。要は腕は自在に動き、そのときボディ面は吸い付いてくるような、感動モノです。
 
冨岡 ダウンを作る上で、外気を入れない、中の保温は逃がさないという点はスゴく重要で、ワキの下はもっとも体温をためてくれる場所だと感じるのですが、そこを完全にホールドするという作りをダウンで採用してきました。今回のS/Sでもこの仕組みははしっかりと受け継がれています。それで、着用されたみなさまが、スムース&フィットなフィーリングを受け取ってくださっていると考えられます。
 

 

SELWYN COAT 6万8000円 アームのダウンは驚くほどスムースに動く。ボディにはフィット感を高めるドローコードを搭載。
 
ーーデザイン面で大切にされていることは?
 
冨岡 〈カナダグース〉のアイコンとなっているのは、-50℃まで耐えられるスノーマントラというアイテムです。ここからすべてが始まりました。南極研究員のために、レスキュー隊員のために、パイロットのためにと、極圏で生活する人々のために作られたので、実際に使われる必要なディテールがデザインのベースとなっています。そこからタウンユースにも対応するアイテムへと昇華していく過程で、ギアブランドとして意味のあるデザインは残しつつも過度なディテールは削ぎ落していき、新しいデザインとしてリリースしていくという歴史を積み重ねてきました。カラーも初めは単色です。赤というのはブリザード時にも見つけてもらえる可能性が高い。バックストラップも滑落時に引き上げてもらうため。こういったものは継承されアイコニックなデザイン特徴として残っていきました。一方、グレーやオリーブといったカラーはタウンユースに向けて、時代のニーズに合わせて出てきたカラーリングです。赤、黒の単色ものは、元々のギアブランドとして、過酷な環境で必要不可欠という意味から継承してきたカラーリングですね。〈カナダグース〉は、今年で60周年を迎えまして、元ナイキや元ニューバランスの開発スタッフなど、クリエイティブディレクターやデザイナーに新たな方々を迎え入れ、常にブラッシュアップしたアイテムを放っています。武骨なイメージもあるのでしょうが、機能美という面が合わさってきて、ファッショナブルなアイテムとして認知されてきたのかなと感じています。
 

 

CABRI HOODY 5万円 袖を通したときに、自然と袖のリブの指ぬきに親指が誘導されていく。これにはマジ驚いた! 〈カナダグース〉が今回の春夏で提案するレイヤリングのコンセプトをこういった細かい部分でも表現している。要は、このアイテムの上に重ね着したときにアーム部分がたくし上がってしまうのを防いでくれる親切設計なのだ。
 
掲載商品に関するお問い合わせ/カナダグース☎03-6758-1789
http://www.canadagoose.jp/
 
※第二回に続く
 
Photo:YUTA KONO,KEIJI HIRAI

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