2018.04.04 Wed UPDATE CULTURE

一発録りも!! 新作ミニアルバムで、『パスピエ』が魅せた「振れ幅の広さ」 そのワケは?

本日4/4、ミニアルバム『ネオンと虎』をリリース!!

バンドメンバー各自が持つポテンシャルの高さを再確認しつつ、収録された7曲それぞれの振れ幅の広さにさらに驚いた!! これが最初に聴いたときの筆者の感想! そこで、今作ではどのようなスタイルで制作に取り組んでいったのか? とことん伺ってみました!!

「好きなジャンルは異なるけど、好きな音楽の時代感がバンドの共通言語なんです」

--初めに、パスピエがスタートしたときのエピソードを教えてください。

成田 メンバーがそれぞれ別のバンドで活動していて、そんな状況の中で知り合ったメンバーではあるのですけど、いきなり「せーの」で、4人同時で集まったというわけではなくて、僕が最初、ボーカルの大胡田に声をかけて、ギターの三澤に声をかけて。それで、ギターの三澤とベースの露﨑はもともと同じ専門学校で、というつながりなんです。僕がバンドでこういうことをやりたい、音楽的欲求があって、それを「このメンバーで表現したいんだけど、ぜひやらないか!」と声をかけていったんです。

--バンドというのは、共通言語が通じ合うメンバーとやったほうがいいということを、過去のインタビューで拝見させていただいたのですが、その共通言語とは?

成田 メンバーそれぞれ聴いている音楽のジャンルの好みがありまして、こんなふうにテイストを変えていきたいよねとか、いろんな話をしていく上で音好きな者同士だからこそわかるワードだったり、そういったところで意気投合した部分も大きいですね。

--具体的にそのキーワードは何だったのですか?

成田 このアーティストがいいとかそういうことよりも、’80年代とか、’90年代初頭の音楽だったりとか、時代的な面での興味が共通のキーワードとなったんです。たとえば、僕は’80年代のニューウェーブ、露﨑はファンク、三澤はヘヴィロックが好きだったり、大胡田は’80年代の歌謡シンガーが好きだったりとか。そういう時代感の人たちをみんな好きなんだ、みたいなところがありました。


成田ハネダ(Key)

--時代感が共通言語だったと。

成田 そうですね。

--では、実際に成田さんから声をかけられたとき、どんな印象を受けましたか?

大胡田 私は、以前、成田さんとお会いしたことがあったので、鍵盤が上手な方だなと思っていて。で、声をかけられて、初めて一緒に2人でスタジオに入ったときに、ちょっと軽く合わせたりとかデモテープを聴かせてもらったりとか、演奏を聴かせてもらったりして、そして話も聞いていくうちに、「あ、この人、一緒に音楽をやったら、私が表現したいなと思っていたものが、すごく純度が高く形になっていくんだろうなと思って。もう、二つ返事で「よろしくお願いします!」でした。


大胡田なつき(Vo)

--まさに運命的に出会ったというか。

大胡田 そうです!

--あー、いいですね。

一同 (笑)

--音楽をやっている人間としては一番冥利に尽きる。

成田 はい。

--さらに、リクエストも強くなっちゃったり。

成田 (笑)そうですね。

大胡田 ぐいぐい来てくださって、良かったです…的な。(笑)。

--三澤さんは、成田さんの印象いかがでしたか?

三澤 僕は、成田さんとは、とある仕事で出会ったのですけど、僕らは高校時代からずーっと一緒にコピーバンドから始めて、みたいなバンドではないので、もうみんなある程度の年齢になってから出会ったバンドなんです。音楽のスキルというか演奏技術の面では、すでにものすごく信用できるという状態だったんです。さらに、音楽への情熱もあるし、一緒にやったら面白いだろうなあと思って、僕も二つ返事で受けました。


三澤勝洸(G)

--情熱という、気持ちの面が大きかったっていうことですね。では、露﨑さんは?

露﨑 僕は、ギターの三澤と専門学校が一緒で、三澤に誘われてという形です。リーダーの成田に初めて会ったときの印象は、すごい熱意のある人で「ウォーッ、すごいな!」みたいな。どんなビジョンが見えてるんだろうみたいな感じで。正直、たじろいだ部分がありつつも、取りあえずスタジオ入ってみようぜとなって。で、スタジオ入って「あっ、すげえ、この人」みたいになって。「あー、もうこのバンドでやってみよう」みたいな感じでしたね。


露崎義邦(B)

三澤 半ば強引に。

大胡田 結構ね。こう、「やろうぜ」みたいにね(笑)。

--音楽をやっている人間として、一番「すげえなあ」「まいったなあ」と思った部分って、具体的に述べると?

露﨑 一番最初の印象は、やっぱり演奏のスキルが高い!っていうところではあったんですけど、同時に彼は作曲者でもあり、もともとクラシック畑で培われてきた人なので、曲の作り方とかもふだん耳にしていなかったような感じで、すごく新鮮に感じたので、なんか面白いことができるんだろうなっていう期待感がありましたね。

成田 なんか、すみません、ほんとに。

一同 (笑)

今作収録曲の振れ幅は、かなり広い! 4人のせめぎ合いで一発録りの楽曲も!!

--今回のミニアルバム『ネオンと虎』の制作は、どのように進んでいったのですか?

成田 スタジオに入ってお互いアイデアを出し合いながら、僕的には「こういう曲ができた」とラフを提示して、じゃあ、こんな感じでアレンジや音作りを考えようと進めていって。で、プリプロダクション(仮レコーディング)を聴きながら、ああだ、こうだ、直していくいう感じです。歌詞は、「せーのでジャン」、と出していくというよりは、大胡田がテーマを家に持ち帰り、自分の言葉で紡いでいくという感じですね。

--音のみ渡して、メンバーの創造にまかせるパターンですか? それとも、先にコンセプトまですべてをメンバーに伝えてしまうのですか?

成田 えー、うーん。出すこともありますし、あえて何も伝えないみたいなときもあります。

--今回はどっちのパターンが多かったのですか。

成田 今回は、最初に割と、こういうふうにしていこうと思うと伝えたパターンのほうが多かったかね。

三澤・露﨑 多かったかも。

--それは明確に言葉にして?

成田 それこそ今回改めて、「’80年代の自分らが好きとしてきた音楽に通ずるような曲を書いていきたいね」といった面があったので。

--今作収録の7曲は振れ幅広いな! いろんな方向に向かって進化しているなというのが、最初に通して聴いたときの感想でした。そこはやはり狙ったとこなのですか。

成田 大胡田の声がすごく特徴的っていうのもあるし、楽器隊もそれぞれが主張しているバンドなので、ただでさえ音の色が強くなってしまったりする部分もあるので、アルバムとして聴かせるときは、なるべく振れ幅は広いほうがいいんじゃないかな、と考えることが多いですね。

三澤 曲の振れ幅はデモを聴いた段階で、今回は広いなと感じましたね。僕ら、もともと音楽のルーツが全員別々で。そんなところも、バラエティ豊かになっている要因なのかもしれないですね。

--すると、曲によっては実際に作っていく過程で、途中から俺がイニシアチブ取っちゃうよみたいなこともあったりするんじゃないですか? あー、ここは。ギターが引っ張っているなぁとか、ベースが引っ張っているなぁと思える曲が…。

三澤 スタジオでみんなでやっていると、「こういうのやりたいんだ」っていうところから広がっていったりもしますね。

--基にあったものがどんどん化学変化のように。

成田・三澤 そうなんです。

--あー、いいですね。それは本当にバンド冥利につきる。

成田・露﨑 その通り!

成田 もはや狙ってこうしているんだよみたいなところではなく、たとえば、ビートに対して、自分が前に出よう、後ろに出ようみたいなところも感覚的な部分だったりもするので、「あ、じゃあ、そう来るんだったら、こうしようかな」みたいに。

--ジャズの即興と同じような感性で。

成田 やっぱり作品を作るまでは4人の中でせめぎ合って作っていくものだとは思っているので。

--パスピエを称するキーワードとして「ニューウェーブ」や「プログレ」と書かれることが多いとは思いますが、決してそれだけではないなという印象があって…。’80~’90年代のニューウエーブ、プログレという洋楽のジャンルとはまた違うなという印象なんですけど。

成田 本当は、カテゴライズしにくいものなんだろうなと思ってはいるのですが。じゃあ、パスピエという音楽を、外に対して説明していくときに何なのだろうとなったときに、重きを置いているカルチャー、カテゴリーは、やはりニューウェーブとプログレッシブなところではあるなと思っています。で、今回、そういうところに向き合って作った楽曲もいくつかあるので…。1曲目の『ネオンと虎』と、あと、6曲目の『オレンジ』はすごくニューウェーブ。ほかにも、ディスコサウンドだったりとか。

--『オレンジ』のイントロの出だしからして、「うわーっ、キター」っていう。

成田 そうですね。で、2曲目の『マッカメッカ』は、プログレッシブな…。転変拍子を意識したりっていう感じではありますね。

--『マッカメッカ』で気になったことが2点あって。まず歌詞のほうでは、すごく韻踏んでますよね。

大胡田 私、韻を踏むのと言葉を選ぶのが大好きなんです。しかも『マッカメッカ』はパスピエの数ある曲の中でもすごく早口め! なので、まっ正直にメッセージを伝えるとかではなく、メロディーに載ったときの言葉の面白さと、全体を見渡したら実は内容がある! みたいなふうにしたいなと思って、歌い出しから多めに韻を踏むことを考えましたね。

--パートごとに歌詞の内容が対になっていて、その面白さがすごくあると感じちゃいました。

大胡田 言葉1つひとつの面白さを重視しつつも、全体を見渡したときには、例えば、急に普通の歌詞の展開になっているかと思えば、「あ、飛んで、こことここで韻が踏まれているんだ」みたいな。そういう面白さを表現できたかな、と思います。

--かなり練ったんじゃないですか?

大胡田 実はそんなに書き直してはいないんです。でも、サビは結構考えましたね。サビ候補の言葉はいっぱい浮かんで、どれが一番いいかなっていうのを選ぶのに、みんなでリハーサルをやる中で試しに歌ってみて、「んー、これは違うかな」って、取捨選択をかなりしましたね。

--テンポの変化だったり、間奏の部分でいきなり楽器隊が引っ張っていったりとか、その辺が「やられたな」と。いわゆる全然違う何曲かが1つになったっていうイメージを受けました。

成田 僕の中ではそこが一番のプログレ感かなと思うんですね。曲の展開というか。「あ、こういうふうにつながっていくんだ」っていうのが、『マッカメッカ』の持っている面白さではないかなと思います。

--成田さんがトラックを作って、皆さんでアレンジしていく。

成田 やっぱりキャラクターが出ますからね。得意というか、自分が好きなフレーズだったり、それがより立つようにみたいな。で、それぞれが、今はまっているモードってのもあるし。そこら辺は、毎回変わってくるので面白いなっていう部分ですね。

--露﨑さんは、ベースという立場で、コード進行を司るという面から、この『マッカメッカ』を論じると?

露﨑 おっしゃってくださったように、間奏から急激に変わる場面からの盛り上がりのところを、スタジオで生で演奏していたときの感動がすごくありますよね。それをCDというパッケージに詰められるようにレコーディングしましたので、その辺を感じ取ってもらえたらうれしいですね。

--ベースの立場から、ボーカルの大胡田さんへの攻めていった部分とかは?

露﨑 歌詞の言い回しも速いですし、言葉も詰まっているので、細かい16分音符で打っています。その辺がうまく絡むようにみたいな。それは、楽器隊の間ではもちろんなのですけど、歌ともちゃんと絡むようにっていうのを意識してやっていますね。

大胡田 ゆっくりなところ、拍の間をあけるところのスイッチは、露さんのベースがリードしてるじゃんみたいな。

露﨑 ああ、あそこ。あそこで、なんかベースが目立った感じになってくれているので。

大胡田 ねっ!

露﨑 個人的にはありがたいことです。

大胡田 あれはすごくいいと思いました。

--楽曲で会話するということですね、みなさんの間で。

成田 そうです!

--そんな気持ちが入っているのですね。いや、いいなぁ。で、4曲目の『かくれんぼ』では、いきなり「あれ? 声が低くなったな」って。

成田 ああ、確かに。

大胡田 うん。

--それもびっくりしたことではあったのですけど。

大胡田 私、結構今までずっと、声高い! みたいなイメージがついていると思うのですけど、ちょっと前ぐらいから、自分の表現とか、言葉自体が持つ意味をもっと生かすために、声の幅を広げたほうがいいなと思っていて。で、今回のアルバムは、そこを重視してやっているんです。今まで歌った中でもだいぶ低い声だと思うのですけど、『かくれんぼ』の曲の雰囲気で、それに乗る歌詞と声は出せたなと思っています。

--自分の中の成長ということにトライしてみた歌!

大胡田 なんか自分で言っちゃった(笑)。どうでした、どうでした?

成田 いや、まあ、そうですね。声を低くしていこうキャンペーンっていうのは、だいぶ伝わったので。

--大人への成長みたいな。

大胡田 それで、そういう曲を持ってきた。

三澤 今回、結構、曲のキーを決めるのに、いろいろ試行錯誤していたような気がするんですけど、なんか意図が?

大胡田 私ですか?(笑)

三澤 いつも、歌いやすいキーはどこかっていうのを定めるけど、それを今回はたくさん試していたような感じがした。

大胡田 やっぱりキーが変わると、曲の聴こえ方がだいぶ変わっちゃうので。半音だ、全音だっていうのでも違いますし、自分の声が生きる場所っていうのがすごく大事なんです。でも、曲の雰囲気っていうのも大事にしたくて。この曲なら雰囲気を、楽器の鳴りとかを優先したいから私が頑張ろう! みたいな曲もありました。逆に、楽器のほうを合わせてもらうということもありますし。そこは曲によって調整しますよね。

--チームワークですよね。

成田 その通りです!

--アルバムの構成的にも狙いどおりにいったと。

成田 アルバムをパッケージしていく上で、狙ったものにしていきたいという思いはあるので、それは今回もできたかなと思います。

--『恐るべき真実』では、余白とか余韻が感じられて、さらに、次のアルバムを聴きたいなっていう、「あー、最後にこの曲を持ってきたか! いいなぁ」と感じました。そして、最初、タイトルだけ見たときは、「え、どんな歌なんだろう」と。あっち側かなと思ったら、いや、全然曲調明るいじゃんみたいな、その辺のギャップもすごくやられた気分で。僕は個人的には一番好きで。

大胡田 おー、うれしいですね。

成田 プログレってジャンルは、構成に関しては、意外とシステマティックにここでこういうアプローチをしていこうみたいな、枠組みをしっかり作ってやるような感じなのですけど、この『恐るべき真実』っていう曲では、構成自体はざっくり決まっていたのですけど、レコーディングでは一発録りっていう直しの利かない全員で「せーの」で録ったんです。そ基本的には、後ろでメトロノームを鳴らしながらレコーディングをするというのが一般的なのですけど、そういうガイド的な役割も一切なしで、ライブチックに緩急を付けて、リアルに毎テイク、違う緊張感の中でレコーディングしてみようと。それが音の面白さにつながっていったのかな、とは思います。

--なるほど。何となく、そう、本当にライブ、現場の空気みたいなものを感じました。あと、終わり方も。ここの部分、錯覚かもしれないんですけど、この曲だけ、最後の音が消えてからが長く感じて。うわーっ、なんかこの感覚もいいなぁみたいな。

露﨑 やっぱ、空気感はすごくある楽曲になったと思いますね。一発録りを終えて、その直後それぞれの顔を見ながら、やり遂げたって!

--一発録りで。しかも、メトロノームも使わない。面白いですねえ。緊張感がすごくあるという。お話伺って、ちょっと寒気がしました。

一同 (笑)ありがとうございます!!
 
 
 
PROFILE
メンバーは、成田ハネダ(Key)、大胡田なつき(Vo)、三澤勝洸(G)、露崎義邦(B)。
2009年結成、バンド名はフランスの音楽家ドビュッシーの楽曲が由来。卓越した音楽理論とテクニック、あらゆる時代の音楽を同時に咀嚼するポップセンス、ボーカルの大胡田なつきによるミュージッククリップやアートワークが話題に。現在まで4枚のフルアルバムを発表。5/13川崎 CLUB CITTAを皮切りにパスピエ TOUR 2018“カムフラージュ”がスタート!
4/19には東京・TSUTAYA O-EASTで開催されるライブイベント「uP!!! SPECIAL ライブナタリー 201804」でホストアーティストであるポルカドットスティングレイとの対バンにパスピエが出演決定!!

http://passepied.info
 
 
 
ミニアルバム
『ネオンと虎』

ワーナーミュージック・ジャパン
4/4発売


初回限定盤(CD+オリジナル・特製マルシェバッグ 特殊パッケージ仕様)2500円
 
 

通常盤(CD)1800円
 
 
 
Photo:TAKEHIRO HAYAKAWA
Text:Ko
Special Thanks:SAYURI MIZUNARA

« 一覧