2018.06.03 Sun UPDATE CULTURE

『西郷どん』のあのイケメン武士は誰?町田啓太インタビュー

2014年のNHK連続テレビ小説『花子とアン』を皮切りに、近年は『定年女子』『女子的生活』など、NHKのドラマにも数多く出演してきた俳優・町田啓太。そして2018年、念願であった大河ドラマ『西郷どん』への出演が決定した。同作で演じる小松帯刀の役柄のこと、役者としての日々の心がけ、自他ともに認める「LDHっぽくない」自身の雰囲気をどう捉えているか……など、たっぷりと話を伺った。

注目俳優・町田啓太に聞いたLGBTについてどう思いますか?

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28歳で家老になった小松帯刀を
28歳になる町田啓太が演じる

――大河ドラマ『西郷どん』への出演が決まりましたが、どのような心境でしょうか。NHKのドラマには多く出演している町田さんですが、大河ドラマへの出演も、時代劇への出演も初めてですよね。

町田 時代劇はずっと「出演したい」と言っていたので、夢や目標は願いつづければ叶うものなんだな……とあらためて感じました。しかもそれが、NHKの大河ドラマというのは、本当にありがたいことだと思います。日本の歴史を扱ったドラマに出演し、実在した歴史上の人物を演じるというのも、やはりすごく楽しみでした。

――時代劇ということで、出演にあたっては様々な準備もされたのではないでしょうか。

町田 薩摩ことばについては、早い段階から音源をいただいて準備をしてきました。ただ、僕が演じる小松帯刀は、あまり歴史的な資料が残っていないんです。薩摩藩の家老として、西郷隆盛や大久保利通らと明治維新に尽力したことや、大枠の事実は分かっていても、細かな部分は不明なことも多くて。それでも参考になる資料をできるだけ取り寄せて、自分なりに準備をしてきました。

――不明な点が多いぶん、自分で考えて演じる部分も大きい役柄といえるのではないでしょうか。

町田 そうですね。もちろん台本に書かれていることをしっかり深掘りするのが大前提ですが、自分で想像しなければいけない部分もあると思います。実在した人物なので、リスペクトを込めて演じていきたいですし、自分との共通点や、共感できる部分をできるだけ増やして演じていきたいと思っています。

――小松帯刀は若干28歳で家老職に就いた経歴の持ち主で、町田さんも間もなく28歳……という部分は共通点と言えそうですね。

町田 今の僕とほぼ同じ歳で家老職になったというのは、やはり凄いことだと思いますし、本当に学問もできて、四六時中頭を働かせて生きていた人なんだと思います。僕はそこまで勉学に励んできたタイプではないので、その点はプレッシャーもありますが(笑)、若くして大役を任されるような雰囲気を演技でしっかり出していきたいです。

――また小松帯刀については、『篤姫』(2008年のNHK大河ドラマ)で瑛太さんが演じた役でもあるんですよね。同じ人物を、別の作品で別の役者さんが演じている……というのもNHK大河ドラマの面白さだと思います。

町田 『篤姫』の小松帯刀は、篤姫との恋があったりと、独自のフィクション要素がありました。瑛太さんは『西郷どん』にも出演されていて、共演するシーンも多そうなので、何かヒントになることを教えてもらえたら……と思っています。ただ、今回の『西郷どん』では小松帯刀の描き方が全然違ってくると思うので、僕は僕なりの小松帯刀を演じていきたいです。

『花子とアン』でも抜擢してくれた
中園ミホさんの期待に応えたい

――『西郷どん』の脚本は、以前に町田さんが出演された『花子とアン』でも脚本を書かれた中園ミホさんですよね。

町田 そうなんです。『花子とアン』のときはオーディションを経ての出演でしたが、オーディションでは途中から中園さんも参加されていて、その段階からお話させていただく機会がありました。結果として重要な役をいただけたのは光栄でしたし、僕が演じた村岡郁弥のキャラクターに、中園さんが僕と話したときの印象も盛り込まれていた……というのも嬉しかったです。

――いわゆる“当て書き”の要素があったというわけですね。

町田 スタッフの方からそう伺いました。オーディションのときから僕のことをしっかり見てくださって、いろいろなことを汲み取っていただけたことに感激しましたし、僕もとても演じやすく、演じていて楽しい役柄でした。また今回の『西郷どん』の出演についても、中園さんが僕の名前を出してくださったそうで、それも本当に嬉しかったです。だからこそ『西郷どん』では、中園さんが台本に書いた小松帯刀を迷いなく演じていきたいですし、起用していただいた期待に応えたいと思っています。

イケメン・小松帯刀との共通点は
病弱で幸が薄いイメージ?

――ちょんまげ姿も初挑戦なわけですよね。

町田 そうですね。かつら合わせのときも、小松帯刀の数少ない写真を参考に、実際の姿に近いかつらを用意してくださって。監督さんやスタッフの意気込みが感じられました。

――町田さんは彫りが深いし、眉もしっかりされているので、武士の姿は似合いそうですよね。

町田 どうなんでしょう? 最初の衣装合わせのときは、タートルネックを着ていってしまったので、抜群に合わなかったですね(笑)。似合う姿になれるよう頑張っているところです。

――小松帯刀は写真を見ると美男子で、ネット上でも「町田さんに合った役だ」という声を多く見かけました。

町田 そうなんですか。僕も資料を読んでいると、会った人の多くが小松帯刀の容姿を褒めていたのが気になっていて。調べれば調べるほど不安が募っています……(笑)。

――シュッとした雰囲気や顔立ちも、どこか似た雰囲気は確実にあると思いますよ。

町田 小松帯刀は子供の頃から体が強いタイプではなかったそうですが、僕も病気がちな幼少期を過ごしているので、そこが似ているのかもしれないですね(笑)。『花子とアン』のときも僕は物語の途中で亡くなる役で、「幸薄いイメージがあるのかなぁ」というのは感じています。

『花子とアン』で兄弟を演じた
鈴木亮平の包容力と気づかい

――『西郷どん』というドラマの魅力はどのような点に感じていますか。

町田 やはり一番は、鈴木亮平さんが演じる西郷隆盛の魅力ですね。あの懐の深さや包容力、すがすがしさは本当にすごいなと思いますし、そのストーリーに自分が入れることにワクワクしています。

――鈴木亮平さんは『花子とアン』でも兄弟役として共演されていましたよね。

町田 はい。なので、はじめての大河ドラマですが、とても心強く感じています。

――出演が決まったあと、お話はされましたか?

町田 僕がかつら合わせをしているときにスッと現れて、「おぉ~久しぶりー! 帯刀かあ」と声を書けてくださいました。後でスタッフの方に聞いたら、亮平さんは他の共演者のかつら合わせのときも、同じように挨拶に伺っていたそうで。本来なら、僕から主演の亮平さんに挨拶に行くべきなのに、そういった気遣いはさすがだなと思いました。役作りについても相変わらずストイックで、今回の役柄に合わせて恰幅がすごく良くなり、まるで体型が変わっていたのにも驚きました。

――「帯刀かあ」という言葉には何か含みがありそうですね。

町田 亮平さんはその後に「あれ? 瑛太君がやっていた役じゃないの?」と言っていましたね。何か、いいプレッシャーをかけられている感じはありました(笑)。

――時代劇や大河ドラマを見続けている方の中には、「今回は小松帯刀がどのように描かれるのか」と楽しみにしている人も多いと思います。

町田 今回は僕が演じるので、僕なりに解釈をした帯刀像をドラマの中で見せられたらと思っています。

――大河ドラマは以前から見られていたんでしょうか。

町田 好きで見ていた作品はいくつもありますね。岡田准一さんが主演した『軍師官兵衛』は大好きでしたし、『篤姫』も見ていました。『篤姫』については、脚本を書かれた田渕久美子さんのドラマには2回出演させていただいた……という不思議な縁もありました(NHKの『美女と男子』と『定年女子』に出演)。

――歴史はもともと好きなんですか。

町田 好きでしたね。テストの成績は悪かったですけど(笑)。だいたいの男の子は刀を振るのが好きだと思いますけど、僕は実際に中学生の頃まで剣道をやっていて。単純に「武士ってカッコいい」と思っていました。今回は小松帯刀の役なので、殺陣のシーンはないはずですが、もしあったら本気で頑張るつもりです(笑)。

――武芸よりは割と頭が切れるタイプの人なんですよね。

町田 そうなんです。でも帯刀自身は、刀もきちんと振れる人で、乗馬も得意だったそうです。資料を読んでいて、そのあたりは発見で面白かったですね。

ドラマや映画で素敵だと思った人は
実際に会うともっと素敵な人ばかり

――町田さんはNHKのドラマへの出演が多いですよね。

町田 日本の端から端まで電波が飛んでいる放送局なので、その作品に出演できることは毎回ありがたいと思っています。NHKの作品への出演は、おじいちゃん・おばあちゃん孝行にもなっていて。電話をしたり、帰って話をしたりすると、「病院とかでも同年代の人たち出演したドラマの話ができる」と喜んでくれています。

――多くの方が見るドラマに出演したことで、世間的な知名度も上がってきた実感はありますか。

町田 それは全くないですね。街中もぜんぜん普通に歩けているので(笑)。でも仕事でお会いした方に、「あの作品見たよ」と言ってもらえることは増えましたし、お仕事の依頼でも、「あの作品の演技を拝見して、今回こんな役柄をお願いしたいと思いました」と言っていただけるようになりました。ありがたいことですし、だからこそ一つ一つの役柄を、誠心誠意込めて丁寧に演じていきたいと思っています。

――役者としてよりいい仕事をするため、何か心がけていることはありますか。

町田 普段からドラマや映画などの作品を見たり、いろいろな人に会って話を聞いたりすることは意識的にしています。役者の演技には、普段の生活ぶりもにじみ出ると思うので、私生活のちょっとしたことにも気をつけるようにしています。

――私生活が出るというのは、なぜそう実感されたんでしょうか。

町田 やっぱりドラマや映画を見ていて「素敵だな」と思った方は、実際に会ってみるとそれ以上に素敵な人ばかりなんですよね。だから役者さんの人柄とか実直さというのは、画面を通しても伝わるんだなと感じましたし、僕もそれが伝えられる役者になっていきたいです。『西郷どん』の西郷隆盛も、亮平さんが普段から持っている人柄や包容力が表れているからこそ、魅力的に見えているんだと思います。

俳優としてLDHのイメージの幅を
もっと広げていきたい

――いろいろな作品で様々なタイプを演じてこられた中で、役者としての自分の強みは何か見えてきましたか。

町田 何だろう……。昭和顔かな(笑)。

――以前も自分のことを「残念な昭和系男子」と仰ってましたよね(笑)。

町田 強みが何かは分からないですが、毎回意識しているのは本当に普通のことで、「演じる役にきちんと近付こう」ということです。自分の持っている一面を、その役に合わせて膨らまして出していくことができれば、役ごとに違った顔を見せられるはずですし、「次はどんな演技をしてくれるんだろう」と楽しみにしてもらえる役者になれるはずです。だからこそ丁寧に1つ1つの役に向き合っていきたいと思っています。

――やはり誰かの役を演じていても、そこには自分の何かしらの一面が反映されている……という感覚があるわけですね。

町田 自分の人生経験が反映される部分は絶対あると思いますね。どんな役を演じるにも、「この人はこういう過去があったから、こういう人柄になったんだな」と自分なりに理解できれば、役に入りやすい部分はありますし、だからこそ色々な経験をしていきたいと思っています。あと、いろいろな経験をした人の話も聞きくのも好きで。そういう人の話は面白いし、聞いていて惹きつけられますよね。そういった人間力は役者にも必要なものだと思うので、自分もそこを磨いていきたいです。

――そう考えると、町田さんの事務所にはEXILEをはじめとしたアーティストが多数在籍していますし、様々な人生経験を持った人達の宝庫ですよね。

町田 それぞれが全然違った人生を歩んできているので、みんな感性が違いますし、話を聞くのが本当に面白いです。また僕の所属する劇団EXILEもLDH全体も、仲間を大切にする意識は本当に強いので、ありがたい環境にいるなと実感しています。

――でも町田さんは、あまりLDHっぽさがないですよね。

町田 「え、LDHなんですか?」ってよく驚かれるんです。ドラマや映画の顔合わせのときも、「イケイケな人が来るかと思ったら、なんだか地味な人が来た」って言われたり(笑)。でも僕は、それをポジティブに捉えていて。「あ、こういう人もいるんだ」というところから、劇団EXILEや、LDHのアーティストにまだ興味がなかった人にも、目を向けてもらうきっかけを作れると思うんです。だから「LDHっぽくない」というのは、僕はありがたい褒め言葉として受け取っています。

 

町田啓太
1990年7月4日、群馬県生まれ。2010年8月に「第3回劇団EXILEオーディション」に合格。同年12月、舞台「ろくでなしBLUES」で俳優デビュー。2014年放送のNHK連続テレビ小説「花子とアン」で注目を浴びる。近年の主な出演作は、映画・ドラマの「HiGH&LOW」シリーズや、映画『劇場霊』、NHKのドラマ『美女と男子』『女子的生活』など。映画『OVER DRIVE』が6月1日に公開、7月期はテレビ東京『ラスト・チャンス』に出演。

photo:JUNJI HIROSE
Styling:MASAHIRO HIRAMATSU(YsC)
Hair&Make:YUSUKE UKAI(TRON)
Interview&Text:SEIICHIRO FURUSAWA

 

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