2018.08.27 Mon UPDATE CULTURE

KREVAが新作『存在感』の制作秘話を大公開!

音楽活動の危機を乗り越えて。KREVAが示す唯一無二の「存在感」

1990年代よりアグレッシブな活動を続け、日本のヒップホップ・シーンになくてはならない「存在感」を示している、KREVA。昨年は伝説のクルー、KICK THE CAN CREWが再始動するなど、ますますその活動に熱い視線が注がれるなが、5曲収録の最新作が完成。その名は『存在感』。この作品が完成するまでの苦悩、そこで見つけた真理、さらに今後の展望を直撃した。

 

 

音楽に面白味を感じられなくなってしまった

 

──昨年は、ソロでの活動のほかに、KICK THE CAN CREWが再始動するなど、例年以上に忙しい1年だったのでは?

昨年は、自分のアルバム『嘘と煩悩』をリリースした後にツアーをおこなって、その最終日にKICK THE CAN CREWの再始動を宣言して、またアルバム出してツアーもやってと、アウトプットの多い1年でしたね。また、KICK THE CAN CREWのライヴでは、基本20年くらい前に作った楽曲を披露することが多く、常に最新のものを発信したい自分の気持ちと乖離していた部分もあり、すべてのツアーを終えると、音楽に面白味を感じなくなってしまったんですよね。今までこんな気分になったことはなかったかもしれないくらいに。

──その精神状態から、どうやって抜け出したんですか?

とりあえず、自分のスタジオには毎日行こうと。最初は、そこにあるレコードとか全部処分しようかなと、整理し始めたんですけど、結局どれも手放せなかったんですよね(苦笑)。そうこうしているうちに、元々作りためていたトラックがたくさんあることにも気づいて、聴いているうちに、自分はそれにのせる言葉が出てこなくて、今の状態にあることに気づきました。なので、ストックしてあるトラックに歌詞をのせるという通常のアプローチではなく、自分の口が言いたいこと、気持ちよく感じられる言葉を、ただ純粋に吐き出してみようと思ったんです。それで最初に出てきたものが「健康」という言葉で。やばい!これは今後ずっと言えるものができたぞ!ということで、それにあうトラックや歌詞を肉付けしていったら、楽曲が完成したという感じだったんです。そうしたら「存在感」の何度もくりかえして言いたくなるフレーズも浮かんできて、徐々に楽曲が完成して、そうやってアイデアをストックしていく作業をしていくうちに、自然とセラピーになったというか。結局、音楽を作っていなきゃダメな自分に気づいた、というオチなんですけどね(笑)。

──なるほど。だからか、このたび完成した『存在感』は、そこまでラップや韻を踏むといった「形式」にこだわらずに、自由に言葉を発信しているKREVAさんの姿が伺えました。

これまで、経験上ずっと自然と<韻は踏んでいくもの>という考えのもと、じっくりと考えながら1曲を制作することが多かったのですが、今回は完成まで一気に持っていくやり方だったので、そういう部分があるのかもしれないですね。

 

 

アルバムに匹敵するくらい濃密な全5曲

 

──本作はインタルードを含めて、全5曲の構成。

今回の楽曲は、シングルのように単発でなく、一連の流れのなかで聴いてもらいたいと思い、結果5曲が収録されました。今回は、EPとかミニアルバムとかいった表記をあえてつけていないんですけど、自分にとってはアルバムに匹敵する内容になっていると思っています。

──確かに。濃密な5曲ですね。オープニングを飾る「INTRO」は、インスト曲なのですが、ピアノの旋律がとてもメロディアスな仕上がりに。

この作品をまとめていく段階で、他の楽曲候補もあったのですが、何か違うなと感じていて。作りためていたトラックの中に、これがあったんです。最初は、ピアノで流れている旋律を歌おうかと考えたりもしたのですが、この楽曲のアウトロに、次に続く「存在感」のイントロが聞こえてきたので、そのままで収録しました。

──続くタイトル・トラックの「存在感」ですが、何だか身につまされる歌詞でした。自分はこれまでで、一体何を世界に残してきたのか?と。

思いっきりストレートな説教ソングを作ってやろうと思ったんです。聴いてて、耳が痛くなるようなヤツをね(笑)。あとは「存在感」って言いたかっただけというのもあるんですけど(笑)。でも、歌詞を作っていくうちに、自分でも何かを残せているのか?と考える部分はありましたね。

──この楽曲のミュージック・ビデオも、独特な存在感を放つものですね。

自分のなかで、ビデオに対して見えているイメージがあって。枯山水みたいな日本庭園なものが。それを伝えて、具現化してくださりそうなディレクターさんにお願いして製作しました。展開の多い場面のなかに、和洋折衷感など、自分が好きなものがあり、想像した通り、いやそれ以上の仕上がりになっていると思います。ただ、無駄にでかい岩の上で歌うシーンがあるんですけど、その撮影時は怖かったですね(笑)。

──「俺の好きは狭い」ですが、KREVAさんはこれまでいろんなミュージシャンとコラボしたり、いち早く世界のトレンドを取り入れて、柔軟に幅広く音楽を取り入れているイメージがしていたので、このタイトルにはギャップを感じました。

今回の作品制作を通じて、この言葉をいう機会が何度かあったんです。音楽って、むちゃくちゃ広いものだと思うんです。そのなかで自分が好きになるものは、相当狭いなと痛感することが多くて、それをストレートに楽曲にした感じですね。

──ちなみにKREVAさんが好きになる音楽のポイントって?

リズム感というのはポイントとして大きいけど、それだけじゃない気もします。ただ「俺の好きは狭い」って言うと、ネガティブに感じるのかもしれないですけど、逆に好きな音や人に対してはとことん追求しているという証拠にもなるんじゃないかって。だから、これまで共演してきたミュージシャンの方々、取り入れてきた音楽は、自分が本当に好きだということなんです。

 

 

新たな出会いを通じて見つけた、人間の「真理」

 

──ちなみに、KREVAさんが、音楽以外で「好き」なことって何ですか?

最近、高校生以来ぶりなのかもしれないくらい、音楽とは全く関係のない友人ができたんです。サッカーや、食、健康など、共通する話題が多くて。また、その方は今のように注目される前からオーガニックな食材に興味を持って、ビジネスにされている。自分も、まだ世間に認知されていない時期からヒップホップをやっていたから、そういう部分も繋がりを感じて、話していると刺激になるから、好きですね。

──その刺激の結果、「健康」と言う楽曲が生まれたのかもしれないですね。

はい、自分が今後何を言うべきか困っている中で、口をついて出てきたのが、この言葉だった。結局、健康じゃなきゃダメでしょっていう。人間の真理ですからね、これは。40代にして境地に辿り着いちゃった感じ(笑)。でも、それがクールに聴こえちゃうんだなと、楽曲を完成させてみて思いました。

──ではKREVAさん、健康のために気をつけていることは?

運動は欠かさないですよね。それに加えて、食べるものにはこだわります。最近は、チアシードやマキベリーを食べるようになったんですけど、それ以来風邪をひかなくなりましたね……。とか、健康話だったら、いつまでも続けられると思うし、だから永久に歌える楽曲なんだと思います。

──(笑)。ラストの「百人一瞬」は、今後も健康に気遣いながらも、多くの人を瞬間で釘付けにしていく音楽を発信し続けると言う、KREVAさんの決意を感じる仕上がりに。

これは、僕の子どもが学校で百人一首を覚えなくてはいけない課題があって、それを一緒に覚えていくうちに、「百人一瞬」という楽曲にしたら面白いのでは?と思ったら、フレーズが次々に浮かんできたという。今回の作品は、最初の段階から手直ししなかったんですけど、これだけはちょっと変更しました。ちょうど冬季オリンピックでカーリングが注目されていた頃だったんですけど、ああやって結果を出せたから、世間の脚光を浴びることができた。でも、そうじゃない競技をやっている人もいる。子どもの頃から夢中になってやっている競技なのに、大人になってみるとそれだけでは生きていけないことに気づくんだけど、それでも好きだからやり続けている。他のことでもそうですけど、そうやって頑張っている人にも響く曲にしたいと思って手直ししたんです。

 

約15年ぶりシングルは、岡村靖幸をフィーチャー

 

──KREVAさんの今の思いが詰まった作品『存在感』。その翌週にはKICK THE CAN CREWの約15年ぶりとなるシングル「住所 feat.岡村靖幸」がリリースされます。

『存在感』の制作があったので、このシングルに関しては野望というか展望みたいなものはありませんでしたね。岡村さんや、プロデューサーの蔦谷好位置くん、他メンバーの意見を取り入れながら、ソロとは違う楽しみ方で制作した感じです。

──岡村さんとのコラボはどういうきっかけで?

以前、取材の現場でお会いすることがあり、楽曲を一緒に作りましょうという話になったんです。それで今回、KICK THE CAN CREWのシングルの話があり、共演していただくなら、この作品がいいのかなって。それにしても、岡村さんは本当にワード・センスがすごいですよね。「住所」ってタイトルを否応無しにつけなくてはいけないような、迫力がありましたから(笑)。

──そして8月31日には「908 FESTIVAL 2018」(チケット完売)が、9月1日にはKICK THE CAN CREW「現地集合~武道館ワンマンライブ~」が、ともに日本武道館で開催されます。

「908 FESTIVAL 2018」は、かなり濃厚で、相当面白い内容になると思いますので、チケットを手にしている方は楽しみにしていてください。KICK THE CAN CREWは、パッと現場に集合して、その場で余韻にひたらずに帰ろうよ的な<ノリ>を楽しんで欲しいですね。

 

今後の日本のヒップホップに残したい「存在感」

 

──2日で、異なる楽しみ方ができそうなライヴですね。そして今後は、どんな活動を目指したいですか?

今回の『存在感』は瞬発力で完成させた作品。そういう楽曲の作り方って、今の時代にあうと思うし、またみんなでじっくり時間をかけて作る音楽のよさもあると思う。その両方をバランスよく表現していけたらと思います。

──海外(特にアメリカ)では、ヒップホップがポップ・ミュージックをしのぐ人気を獲得しています。それと比べて、KREVAさんが思う日本のヒップホップ・シーンとは?

現在のアメリカの盛り上がりを考えると、日本のシーンは独自というか閉鎖的な雰囲気を感じてしまいますね。今の日本って、ラップのうまい下手はなんとなくジャッジできるんだけど、リズムのことやライミングに関しては語れなかったり。総合的にヒップホップという音楽を評価できる人が圧倒的に少ないと思うんですよね。だから、面白いと感じられるようなものが生まれていなくて、今の状況に陥っている気がする。もっとみんな自信を持って、自分の意見を語っていいと思ったりします。そういう風通しのよさを、自分から作ってもいいのかなって。ただ、僕が認める人って、かなり限られると思いますけど(笑)。

 

KREVA『存在感

スピードスター 2300円(初回限定盤)8月22日発売

初回盤には「存在感」のミュージック・ビデオおよびメイキング映像が収録されたDVDがパッケージ。

 

KICK THE CAN CREW『住所 feat.岡村靖幸』

スピードスター 8月29日発売 2000円(初回限定盤)

初回限定盤には、昨年リリースされたアルバム『KICK!』10曲のライヴ音源を収録したボーナスCD付き。

 

PROFILE

1990年代よりKICK THE CAN CREWのメンバーとして活動開始。04年よりソロとしてのキャリアをスタートさせる。これまで23枚のシングル、7枚のオリジナル・アルバムをリリースし、どれも高セールスを記録。今やヒップホップという枠を超えて支持される存在に。

KREVAオフィシャルサイト

http://www.kreva.biz/

KICK THE CAN CREWオフィシャルサイト

http://www.kickthecancrew.com/

 

 

Photo:DAISHI SAITO

Text:TAKAHISA MATSUNAGA

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