2016年にリリースされた「夜を使いはたして feat.PUNPEE」のヒットで注目。同年に発表したデビュー・アルバム『Pushin’』は、生音ヒップホップやR&Bの影響を感じるメロディアスで洗練されたサウンドで、多くのリスナーを魅了。その後、昨年にはAlfred Beach Sandalとの共作ミニ・アルバム『ABS+STUTS』の発売、さらに今年に入ると星野源の楽曲に参加するなど、幅広い活動で着実に注目度を高めている、STUTS。
「デビュー盤をリリースしてからの約2年半、さまざまなジャンルの方とのコラボレーションや、バンドに混ざってセッションから曲を作り上げる経験をさせて貰ったことで曲作りの幅が広がりました」
そして、このたび2ndアルバム『Eutopia』が完成した。今回は、仰木亮彦(在日ファンク)、nakayaan(ミツメ)らをバンド・メンバーとして迎え、彼らとのスタジオでのライヴ・セッションをサンプリング、再構築させた楽曲を多数収録している。
「この手法は、以前から挑戦してみたかったことで、今回実現できてうれしかったですね」
バンド・メンバーとのセッションを加えることによって、描く音も変化があったそうだ。
「今回バンド編成で作った曲は最初にデモやコード譜を用意して、ビート以外の部分をバンドで演奏していただいたものをさらにサンプリングしたんですけど、想像を超える素晴らしい音が生まれたんですよね。自分では予想もしなかったフレーズや質感が生まれたのはバンド演奏にしかできないことだと思いました。ただバンド演奏の素材をそのまま使うのではなく、タイミング等の細かい修正をしながら、さらにビートやシンセを自ら演奏することで、自分が心地よいと思えるグルーヴを作りました」
アルバム全体には、甘く贅沢な気分にさせてくれるグルーヴはもちろん、人間と人間の鼓動が重なりあうことで生まれるスリルやドラマなども流れている気がした。
「いろんなセッションを重ねていくうちに、自然とこうなったという感じですね」
そのグルーヴのなかには、彼の真摯な思いを閉じ込められている。
「生きていると自分に合わない環境に放り込まれることもあると思います。その中で頑張るのか、別の環境を探すのかは人それぞれだと思いますが、理想的な状態を追求することを諦めたくないといった思いがあって。アルバムを聴いてもらってどう感じるかは皆さんに委ねたいのですが、個人的にはそういった思いをこのアルバムに込めました」
本作を従えて11 月にはライヴが決定。そこでも、しなやかさがありながらも強い芯の通ったグルーヴを堪能することができるはず。
「バンド形式を取り入れたりだとか、いろんなことを考えています。また今までは自分でMPCを演奏することが多かったのですが、他の楽器にも挑戦してみたいですね」
NEW Album
長岡亮介(ペトロールズ)、一十三十一、JJJから、タイ人ミュージシャンのPhumViphuritまで、個性豊かなミュージシャンがゲスト参加。都会の喧騒をさまよいながら、力強い一歩を踏み出すまでの様子を、丁寧かつ甘美なグルーヴで表現している印象の1枚となっている。
Atik Sounds / SPACE SHOWERMUSIC /2500円/発売中
1. Eutopia Intro
2. Dream Away feat. Phum Viphurit
3. Ride feat. G Yamazawa, 仙人掌 & Maya Hatch
4. Pursuit
5. Breeze feat. Daichi Yamamoto
6. Paradise (Ever Green)
7. Sticky Step feat. 鎮座DOPENESS & Campanella
8. Circle Interlude
9. Above the Clouds feat. 長岡亮介, C.O.S.A. × KID FRESINO & asuka ando
10. Never Been
11. Voyager
12. FANTASIA feat. 一十三十一
13. Eutopia
14. Eternity
15. Changes feat. JJJ
Guest Musician: 仰木亮彦(在日ファンク), nakayaan(ミツメ), 岩見継吾, 高橋祐成, MC.sirafu(ザ・なつやすみバンド)
1989年生まれのトラックメーカー/MPCプレイヤー。 2013年にNYハーレム地区の路上でMPCライヴを敢行した動画をアップしたことで注目され、16年にデビュー。11月3日圡には東京・WWW X、16日㊎には大阪・MUSEにてレコ発ライヴを敢行する。
取材・文/松永尚久