5月23日に自身2年ぶりとなるソロシングル『Underdog』を発売するEXILE SHOKICHI。直訳すると“負け犬”というタイトルを冠した楽曲に込めた思いとは。また、カップリングにhide with Spread Beave『ROCKET DIVE』のカヴァーを選んだ秘話についても聞かせてもらった。
――新曲『Underdog』聴かせていただきましたが、昨年10月にリリースされた配信シングル『Back 2U』やEXILE THE SECONDで表現されていた官能的で色気のあるSHOKICHIさんの楽曲とは打って変わって、ストレートでポップさもあるロックチューンだったのが意外でした。
「そうですね、『Back 2U』と比べると、かなり振り幅があるなと我ながら思います(笑)。ただ、ソロやEXILE THE SECONDの活動でセクシーだったり大人っぽい楽曲をリリースしたことで、過去の自分との約束を果たしたかのごとく、すべて消化できた気がするんです。だからこそ今はとてもフラットなフィーリングで曲作りに向き合えていて、そうなったときに今の自分が作りたいのはどんな曲なのか、自分の内側から出てくるものを表現しようと思った結果が『Underdog』だったんです」
――楽曲製作にはどのくらい前から取り組まれていたのでしょう。
「取り掛かり始めたのは1年くらい前なのですが、EXILE THE SECONDの活動の中でファンの方から“ソロツアー待ってます”とか、“リリースを楽しみにしています”という声をいただいたことでそれが後押しとなって、じゃあ頑張ってみよう、とソロプロジェクトをリスタートさせることができました」
――なるほど。今作のサウンドは盟友のUTAさんと、BACK-ONのKENJI03さんとの競作という形なんですよね。
「ソロをリスタートさせようと決めた1年くらい前から、サウンドの構想はなんとなく頭の中に鳴っていたんです。その音を形にするために、UTAくんに声をかけさせてもらって。そしたら、こういう方向性の曲を作りたいならぴったりの人がいるよ、ということでKENJI03くんを紹介してもらいました。KENJI03くんとは初対面だったけど、ルーツが似ていたりとバイブス面でフィールして、すぐに意気投合しました」
――ヒップホップやロックなどの音楽がジャンルレスにミックスされていますが、音作りはどのように進められていったのでしょう?
「ロックやヒップホップの要素はあるけど、どこか一方に偏りすぎると楽曲の良さが消えてしまう気がしたので、そのさじ加減が難しくて。何度もスタジオに入って全員でギターを手に何度もセッションを重ねて行くバンドのようなスタイルでブラッシュアップさせていきました」
――タイトルの『Underdog』は直訳すると“負け犬”。どういった思いでこのタイトルを付けられたのでしょうか?
「もちろん“負け犬”という意味もあるのですが、成り上がりとか、たたき上げとか、ストリート出身とか、そういう意味合いで使うこともあるそうなんですよ。だから、いまも夢に向かって必死に頑張っているやつ、というような思いを込めて。自分に重なる部分も多いな、と感じましたし、リスタートするこのタイミングにふさわしいのかな、と。ポジティブソングにしたかったのですが、直球で明るいというよりは、光があるから影がある、というようなイメージに近づけるために取り組みました。ちょうど新生活をスタートさせた方が多い時期だからこそ、ちょっと落ち込んだときにパワーを感じてもらえるような曲になっていたらいいなと思っています」
――SHOKICHIさん自身、壁にぶつかってしまったときの対象法などはありますか?
「昔はマイナスなことが起きたら“これは神様からの試練だ”とポジティブに受け止めるようにしていたのですが、曲を作る上ではちゃんと痛みを感じられる人でないといけないな、このままだと自分の人生が浅いままだなと思ったんです。ここできちんと受け止めておかないと多くの人に共感してもらえる曲を作り続けることって難しいんじゃないかなと5年くらい前にふと思って、そこからはバッドな自分も大事にしようという考え方に変わったんです。だから、例えば壁にぶつかって転んだらそのときに喰らったフィーリングを大切にしたいから、倒れたまんま“ああ、いま書けるぞ”みたいな。その瞬間に生まれる言葉をものすごく大切にしています」
――痛みを引き受けるって、しんどくないですか?
「かなりしんどいですし、くじけそうになります(笑)。でも、音楽を作るとその気持ちの持って行きどころがちゃんと見つかるし、痛みが浄化される感じが最近はあります。だから自分も音楽にすごく助けられているし、聴いてくださる方にそういう言葉をいただくと、音楽をやっていて良かったな、音楽を続けていく意味を持たせてもらったな、と思います。以前は、自分が音楽を続けようと止めようと誰からも求められていないような感覚があって」
――そんな時期があったんですか?
「ありましたよ。世の中に作品をリリース出来ていない時期も長かったので、そういうときは音楽を続ける理由を自ら作らなくちゃいけなかったんです。でもいまは、音楽を続けて良い理由がきちんとあることが心からうれしいし、恵まれているなとも思います」
――やはり一番実感するのはライブですか?
「そうですね。ライブで、自分の作った曲で皆さんが盛り上がってくれたり、涙してくれる姿をみると、痛みを感じられる自分で良かったと思うし、様々な感情が昇華されていくようです。ここ10年ほどの活動の中で、ファンの皆さんとの間に絆みたいなものも生まれて来ていて。だからこそ皆さんに音楽というツールを使って恩返しをしたいし、この時代を一緒に戦っていきたいんです」
――カップリングナンバーは、hideさんの名曲『ROCKET DIVE』のカヴァーというこれまたサプライズな楽曲です。
「自分の音楽の原点がhideさんなんですよ。初めて聴いたときに自分の中にビッグバンが起きて宇宙が誕生したくらいすごい衝撃を喰らったんです。そんな風に僕の音楽が生まれるきっかけをくれたhideさんの楽曲をいつかカヴァーしたいと思っていたところ、このリスタートのタイミングで挑戦させてもらえることになって。色々と調べてみるとたまたま今年がhideさんの20周忌だったり、亡くなった年齢と今の僕が同じ歳だったり、不思議なリンクがたくさんありまして。この時期に、自分のマイ・ファースト・ヒーローの名曲をカヴァー出来たことは心から光栄に思います」
――数多あるhideさんの名曲の中から『ROCKET DIVE』をセレクトされた理由があれば教えてください。
「大好きな曲がたくさんあるのですが、特に歌いたかったのが『ROCKET DIVE』と『ピンクスパイダー』だったんです。でも、hideさんが『ROCKET DIVE』をリリースした時期というのはX JAPANが解散して、hide with Spread Beaverとしてリスタートするタイミングにリリースした楽曲だったので、おこがましいのですがそこに自分を重ね合わせ、共感したことからこの曲をカヴァーさせていただきました。あまりアレンジも加えずなるべく原曲に忠実に歌うことで、リスペクトを込めさせていただきました」
――『Underdog』と『ROCKET DIVE』は2曲を通して聴くとよりお互いの楽曲の良さが引き立てあうようなバランス感があるように感じました。
「『Underdog』を製作しているときから、『ROCKET DIVE』をカヴァーしたいと思っていたので、この2曲で1枚の作品として意味のあるものにしたかったんです。せっかく盤という形でリリースが叶ったので、1つのアート作品として昇華できていたらいいなと思っています」
――hideさんのファンの方はもちろん、これをきっかけにhideさんの作品に新たに出会う方々もきっといますしね。
「はい。hideさんはレジェンドであり、日本が誇るカリスマアーティストなので、微力ではありますが自分をきっかけにhideさんの作品がさらに広がるお手伝いができるのであれば本望です」
――今後のソロ活動の構想を伺えますか?
「ソロツアーをするのが1つの目標ですね、アルバムもリリースしたいですし。あとはいまLDHの中にLDHmusicという会社もあって、そこに籍を置かせてもらっているんですよ。なので、プロデューサーとしても活動の場を広げられたらと考えています」
――ソロ・アーティスト、EXILE THE SECONDに加え今年はEXILEとしての活動も始まっている中で、日々のスイッチングなどはどうされているのですか?
「僕自身はEXILE SHOKICHIとして常に誇りを持っているので、心持ちが変わらなければ、どこへ行ってもブレることがないんです。音楽的な側面でいうと、これはソロに合いそうだなとか、EXILE THE SECONDでパフォーマンスしたいなとか、そういう意味での住み分けはだんだん出来るようになってきた感覚があります」
CD+DVD/1,800円(税抜)
CD/1000円(税抜)
EXILE SHOKICHI
2007年より二代目J Soul Brothersの一員としての活動をスタートさせ、‘09年にEXILEへ加入。’14年6月にはソロデビューを果たし、1stシングル「BACK TO THE FUTURE」はオリコン週間チャート2位を獲得。EXILE THE SECONDのメンバーとして、また音楽プロデューサーとしての顔も持つ。
スタイリスト/jumbo(speedwheels)、ヘアメイク/大木利保、写真/早川岳大、取材・文/加藤 蛍