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2017.01.27 Fri UPDATE CULTURE INTERVIEW

今月の映画のハナシ。松坂桃李 菅田将暉『キセキ -あの日のソビト-』

今月の映画のハナシ。松坂桃李 菅田将暉『キセキ -あの日のソビト-』

まさに「キセキ」と言っていい!
疑似体験ドキュメンタリー

親子とは、兄弟とは、歌とは…
少年漫画のような実話の重み

歯医者と歌手、ふたつの夢を追いかけた若者たちの、本当にあったキセキの青春映画が完成した。メンバー全員が歯科医という異色のボーカルグループ・GReeeeNの実話を基に描かれる本作は、GReeeeNのプロデューサーである兄・JINと、ボーカルのひとりである弟・HIDEという実在の人物を松坂桃李と菅田将暉が演じることで、数々の“奇跡”が描き出した“輝石”のような青春の“軌跡”が、その姿を得て生き生きと観る者に迫る。

「どこかドキュメンタリー映画のような現場だった」と語るふたりは、まさにタイトルとなった「キセキ」をヒットさせたドラマ『ROOKIES』世代。この作品にどんな思いで挑んだのか聞くと、男同士の熱い兄弟・親子論、歌声論が飛び出した。
「撮影前に、JINさんとHIDEさんと僕らで食事会をさせてもらった時にうかがったご実家のエピソードがすごくおもしろかったんです。とにかくお父さんの存在がふたりにとって大きいんだなと…」(松坂)
「怖すぎるんですよね、お父さんが。もう伝説級に」(菅田)
「お父さんは自分と同じ医療の道に進んでほしかったのに、特にJINさんは音楽への目覚めが早かったから反抗してはぶつかって。その怒られ方が本当にスゴイ(笑)」(松坂)
「でも、医師として尊敬できる人だから、HIDEさんは歯医者になる夢も諦めなかったんです」(菅田)
 そしてJINについて、ふたりは不思議な魅力を感じたそう。
「本当に心がピュアでキレイなんですよ。純粋すぎて妙に惹きつけられるというか、穏やかで濁りがなく、吸い込まれそうになります」(松坂)
「精霊感や仏感があったね」(菅田)
 一方で、演じてみて初めて「実はカラオケでちゃんと歌えている人はいないんじゃないかってくらい」に緻密で攻めた“イカつい”音楽性に気づいたという。だが、HIDEから「技術どうこうじゃなくただ楽しむことが、技術のあるJINとの対比になる」という言葉をもらい、菅田はデビュー前の純粋な音楽愛を重視した役作りに臨めたという。
 そんなふたりに、今回演じたふたりと似た青春の葛藤を抱いたことがあるか尋ねると、こんな答えが。
「僕は大学2年でこの仕事を始めて、すぐ拘束時間の長い戦隊(スーパー戦隊シリーズ主演)に入っちゃって。大学も休学せざるを得ず、撮影所の近くで一人暮らしになり…と、環境が急に変わった時、うちの親父が『お前、大学辞めんのか!』とマジでキレまして(笑)。普段温厚な人だからこんなにキレたの初めて見た~って、ケンカ状態のまま家を出たってのはあります。その後もしばらく気まずくて、何の交流もないまま続けていたから、うちと少し状況が似ているなと思いました」(松坂)
「うちも親父が厳しくて…僕は長男なんでどちらかと言うとJINさんに似ていたかもしれません。長男と父親って、ふたりとも大黒柱だから家に2本もいらないんでしょうね、何かぶつかってしまう。でもHIDEさんが進路について親父にちゃんと報告したように、きっと父親は話してさえくれればいいんです…多分。知らないってこと自体が寂しくて腹が立つ。だからあのシーンは僕も経験があるというか、これは親父と男同士1対1で話さなきゃいけないなって場面は未だにあります」(菅田)
 実生活では松坂が姉と妹に挟まれた中間子で、菅田が弟ふたりの長男。共演の多いふたりだが、初めての兄弟役の感触はどうだったのだろう。
「僕は女の立場が強い家だったから男兄弟に憧れがあるんですけど(笑)、今回菅田と演じてみて『やっぱいいな~』と。自立するかしないかっていう微妙な年頃の兄弟って、普通はもうちょっと難しいと思うんです。でも、菅田とだからスッと入れた。家庭環境のあれこれをすっ飛ばして、いきなり兄弟になれたのは菅田の存在が大きいですね」(松坂)
「僕は逆に兄貴が欲しかったんで…ま、お姉ちゃんの方がよかったんですけど(笑)。もともと桃李くんは僕にとって、事務所の先輩の中でも特にお兄ちゃん感があるから、距離感はイメージしやすかったですね。また実際のJINさんとHIDEさんの関係がすごくいいんですよ。会うとバーってしゃべり出して、JINさんの天然をHIDEさんが突っ込むようなやりとりを漫才のように延々と繰り返す(笑)。普段別々に暮らしているのに、すぐその感じになるのがやっぱ兄弟だな~と思ったし、それは桃李くんと僕の関係にもどこかリンクしていました」(菅田)
「男兄弟ってこんな感じが理想かもしれないね。菅田もグリーンボーイズのメンバーといるときはちょっと騒がしいくらいなのに、僕といると自然と無言になって、だけどどっかで『今こう思ってんなコイツ…』って何となく分かった。リスペクトもちゃんとしているけど、言う時は言える絶妙な距離感。そんな兄弟の疑似体験ができた気がする」(松坂)
 疑似体験と言えば、本作にはアーティストとしての歌唱シーンも。菅田は「桃李くんは昔から歌NGと言っていたから、うわぁ桃李くん歌うんだって、すごい楽しみで」と笑いながら、彼の歌声の魅力をこう語る。
「桃李くんが歌っている冒頭、ま~カッコイイんですよ。普段どちらかというと温厚で、感情の起伏の見えない桃李くんのハードロックな素顔が見えて僕は大好きです。実は以前、事務所のみんなで行ったカラオケで、彼はザ・ブルーハーツを歌ったんです。それがすごいカッコよくて…カラオケで選ぶ曲って、その人が顕れると思うから、『あ、この人そっちなんだ!』と俺は思ったし、お芝居で力が入った瞬間にも通じる“何か”を感じた。今回はそれがハードコアでパンクなジンのライブシーンに合ってるな~と思いました」
 その分析に盛んに照れながら、「歌にはその人の性質みたいなものが出てしまうから、ごまかしが効かないんですよね…」と頷いた松坂。グリーンボーイズのボーカルとして歌声を披露した菅田たちの印象は?
「すごいですよ、ところどころ『あ、これ本物のGReeeeNか?』と思うほどクオリティが高い上に、演じる4人(菅田、横浜流星、成田凌、杉野遥亮)のオリジナリティもしっかり活かされて、この4人グループの曲として成立している。聴くと確かにこれはデビューさせたくなるし、売れる! と思えるんです。それが作品にドキュメンタリー的な厚みを与え、物語の持つメッセージを色濃くしていると思います」
 ではそのメッセージを含め、ひとりの映画ファンとして客観視するこの作品の魅力は?
「最近では珍しくなってきた“ザ・青春映画”だと思います。希望とか夢とか勇気とか…そうだなあ、週刊少年ジャンプみたいな(笑)」(菅田)
「あー、確かに! マガジン、サンデーよりジャンプっぽいね」(松坂)
「二兎を追う者が二兎を得たって話なんで、出来過ぎだろうってくらい王道感があるんですけど、でもこれはGReeeeNに実際に起こった話という重みがある。本当にタイトルそのままだと思います」(菅田)
「うん、ドキュメンタリー的な空気が流れていて、気持ちがいいくらいストレートに想いが伝わってくる。だからこれは10代20代の人だけじゃなく、30代、40代と仕事をしてきた人にも観ていただきたいんです。ヒデのように二兎の夢を掴んだ人もいれば、ジンみたく夢に折り合いをつけて、違う形で夢に携わっている人もいる。そういう対比の話でもあるので、どの立場の人にもきっと何か刺さるものがあるんじゃないかなと思います」(松坂)

 

PROFILE
まつざかとおり/1988年10月17日生まれ、神奈川県出身。2016年は映画やドラマ『ゆとりですがなにか』に出演し、舞台『娼年』で新境地に。2017年は連続ドラマ『視覚探偵 日暮旅人』(1月22日[日]~。日本テレビ系)の主演でスタート。

すだまさき/1993年2月21日生まれ、大阪府出身。昨年はドラマ『ラブソング』『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』のほか、映画9本に出演。現在、主演映画『帝一の國』(4月29日[土]~)や『銀魂』『あゝ、荒野』が公開待機中。

 

 


(C)2017「キセキ -あの日のソビト-」製作委員会

『キセキ -あの日のソビト-』
メタルバンドのボーカル・ジン(松坂)は、厳格すぎる医者の父に反発して家出。一時はメジャーデビューするも、頓挫してしまう。一方、ジンの弟・ヒデ(菅田)は歯科大学の仲間たちとデモテープを作成。兄の尽力でデビューが決まるが、音楽活動を許すはずのない父親の存在に頭を悩ませて…。

監督:兼重 淳、出演:松坂桃李、菅田将暉、忽那汐里、平 祐奈ほか。1月28日[土]より全国ロードショー

 

 

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