2016.09.09 Fri UPDATE CULTURE

話題の人物を直撃! スペシャルインタビュー
山田孝之

話題の人物を直撃! スペシャルインタビュー<br>山田孝之

原作史上、最も危険な問題作“洗脳くん編”を描き話題沸騰中の『闇金ウシジマくん Season3』。終了後は、映画『Part3』&『ザ・ファイナル』が連続公開。6年間にわたるシリーズの幕がこの秋、ついに閉じる――。
’10年に始まった『Season1』から主人公の“ウシジマ”こと丑嶋 馨を演じてきた山田孝之は今、何を思うのか? 映画公開を前に、かく語る。

 

――’10年にテレビドラマがスタート。6年にもおよぶシリーズとなった『闇金ウシジマくん』ですが、演じる主人公、丑嶋 馨=ウシジマのキャラクター作りに手応えのようなものを感じたのはいつごろだったんでしょう?

『Season1』が終わった後、原作者の真鍋(昌平)さんと対談させていただく機会があって。僕が「ウシジマはどんなイメージで作ったんですか?」と聞いたら「虫みたいにしたかった」とおっしゃっていた時に、自分のアプローチは間違ってなかったと思いました。「虫って形も変だし、何考えているかわかんないし。それが欲の渦巻く人間社会の中にポツンと入ったら、おもしろいんじゃないかと思い作った」と。それでまあ、手応えと言いますか、安心はしました。

――映画『Part2』(’14年)公開前に本誌のカバーに初登場。その際は「ウシジマは人間がそこに“いる”というより物体が“ある”ような不自然な存在にしたかった」と。

そうですね。「機械」とも表現していましたが、過去や背景は探らず演じてきたので、メガネと髪と髭と、あとピアスとか歩き方、瞬きをしないとか、内面ではなく外見を磨いていった感じです。だから以降のシリーズも、そうしたウシジマのキャラクターを一切、変えたつもりはありません。

――シーズン毎にご自身で詰めが甘いと思うところを「磨いて、磨いて。顕微鏡で見るほどの細かい凹凸も研磨してきた」とも。

詰めが甘いというか「もうちょっとこうできたな」と思うところを。もちろん、手探りの状態だった『Season1』を今見たら“んん!?”と思うところはあるでしょうけど、それはそれであの時は正解だったと思いますし…。原作も最初はめっちゃしゃべる、めっちゃ怒るところがありましたから、真鍋さんの言う「虫」って部分はブレないようにしつつ、シーズン毎にちょっとずつ変化させていった感じですかね。

――間もなく公開される映画『Part3』をご覧になった感想は?

社長(ウシジマ)に関して“んん!?”と思うところはなかったです。キャラクターにしろ世界観にしろ、もう完全に完成したんだなと。映画『Part2』の時にも完成したと思いましたが、もうこれ以上やることはないと改めて思いました。

――シリーズもののおもしろさのひとつに群像劇の成熟があると思います。

『Part3』を観る前に『Season3』を一晩でガーっと見直したんですよ。そうしたら、そこに出てくる登場人物がそのまんま『Part3』にも出てきたんで、うれしくなりました。いちファンとして「わ、きたー!」って(笑)。

――シリーズは、いわゆる“脇”のキャラが濃くなっていくところもおもしろい。女闇金の犀原 茜(高橋メアリージュン)であるとか、その部下の村井(マキタスポーツ)とか。実際『ザ・ファイナル』では、2人とも重要な役割を担っていますし。

撮影中は全然、しゃべんなかったですけど、おふたりとも完全に入り込んで、作り込んで全力で現場に入られているから、楽しんでいるんだなと。(物語の舞台となる)カウカウファイナンスのメンバーもそうですが、映画ではそれぞれのキャラクターがよりいい感じで成熟しているんじゃないかと思います。

――映画を観る前にシリーズを見直すというのは、みなさんにもやってみてほしいですね。

ええ。ぜひぜひ、やっていただきたいです。より楽しめますよ。

――また『Part3』は原作の「フリーエージェントくん」と「中年会社員くん」がベース、『ザ・ファイナル』は「ヤミ金くん」がベースということで、どう完結するか期待するファンも多いと思うんですよ。原作とは順番が逆ですからね。

当初はそのままの順番でやる予定だったんですけど、脚本が出来上がっていく中で逆の方がおもしろいなと。『Part2』の時にすでに完成したと思ったキャラクターや世界観の流れでやるなら『Part3』の内容の方がよかったし。その完成したものを一度、崩して最後を迎えるという意味ではウシジマの過去を描く『ザ・ファイナル』の内容の方が適していた。実際『Part3』では、いつもの『ウシジマ』の世界観の中で、いつもとはちょっと違う真司(本郷)というキャラクターを通して、とりわけ若い人にお金とは何たるかが示せるんじゃないかと思います。今の世の中、労せずして「お金欲しい、お金欲しい」ばっかり言っている若い奴らがいっぱいいますし。そういう人に、お金は将来の安心にはならないこと、お金で人は満たされないことがわかってもらえるんじゃないかなと。

――そういう山田さんは『ウシジマ』をやる中でお金との向き合い方は変わりましたか?

変わりましたね。“お金とは何か?”を真剣に考えるようになりました。まあ、『Season1』で自分なりの答えには行き着きましたけど。

――その『Season1』から6年間にわたるシリーズが終了。ほぼ同時期に終了する『勇者ヨシヒコ』シリーズもしかり、続編はあまりやらないとおっしゃっていましたが…。

基本、今でもやらないですよ。やらないというか、「ドラマがヒットしからからじゃあ映画を…」というような安直なやり方が嫌いなだけで。(ファンの)声に後押しされたり、最初からプランにあるのであれば構わないです。

――『ウシジマ』はスピンオフのショートドラマなど数えると今回の映画で全10作。山田さんを惹きつけた『ウシジマ』シリーズの魅力は何だったんでしょうか?

今回の『Part3』でもお金との向き合い方をすごく見せていますし、なぜここまで金に執着し、金しか信じない人間(ウシジマ)が出来上がったのかを『ザ・ファイナル』では見せていますし。お金をはじめ、すべての物事は距離感が大事で、それがいかに簡単に崩れてしまうのかが、シリーズを通じたメッセージ。光と影は紙一重だし、単純に善悪で計れないところ。また金がいかに恐ろしいものか、考えさせられるところ。そこがやっていておもしろかったし、6年間にもおよぶシリーズでひとつ達成したところでもあると思います。

――本誌でもおっしゃっていますが、林 遣都さんに始まり、菅田将暉さん、窪田正孝さんや柳楽優弥さん、それに『Part3』に登場する本郷奏多さん。若手俳優の登竜門的存在と言わるようになったこともシリーズの功績かと。その’90年代前後に生まれた世代を見て思うことは?

お前らの世代は楽しそうでいいなって(笑)。俺らの世代はそこまで自由に動けなかったよ、って。まあ…グチになっちゃうんでやめますけど。

――(笑)、では一般の若い世代に思うところはありますか?

お金に掛けて言うと「金持ちになりたい」は別にいいんです。「金持ちになって何やりたいの?」って聞きたい。遊びたい、ラクしたい。聞こえてくるのは、そんな声ばっかりだから。それって金持ちじゃなくてもできるじゃんって。例えば10年で1億円貯めてやるって本気で思うなら、そこまでにどれだけの努力と我慢が必要で、どれだけのものを失うか…。でもみんな言っているだけで本気で動かないじゃないですか? その覚悟があるのかって言いたいです。

――これからの話も聞きたいのですが、以前「夢って言うと大それた印象があるけど、僕は目の前のものをちゃんと形にしていけば必ず実現できると思う」と。

そこは変わらないですね。飽きたらほかのことをやればいいし。

――俳優業に限らず音楽やファッションなどなど「やりたいことにチャレンジしたい」と。

そうですね。実際いろいろとやっていますよ。

――確かに有言実行ですよね。3月には初の随筆集『実録山田』を上梓。TEEさんの『恋のはじまり』のMVで初監督を務めたり、内田朝陽さんといっしょにアメリカを周られたり(盟友2人が企画・プロデュース・出演を務めるロードムービー風ドキュメンタリー『Trust Yourself』)。

『Trust Yourself』は700万円の予算をやりくりしながら、アメリカ大陸を横断しつつ向こうで活躍されている日本人にお話を聞いたんですけど、普通この予算じゃ無理なんですよね。だから、制作会社は入れずにスタッフはカメラマンのみ。飛行機はエコノミーで、現地では車の運転、アポどり、スケジューリング。全部、自分たちでやって。大変っちゃ大変でしたが、いい経験になりました。

――プロデューサー的作業を実際にやってみて感じたこと、新たにやりたいと思ったことはありますか?

映像に関しては、自分で撮りたいと思うものが今はないので。ないからといって、探しに行くという時間もないですし。ほかにやりたいことがいっぱいあるんで、そこに時間を割くほど前向きじゃないかな。

――ほか具体的に計画していることは?

「何やってんの!?」っていうものから「あー、そっち行ったんだ」「なるほど。そっち行きますよね~」ってものまで、すでに2、3の計画があります。いずれ出てくると思いますよ(※取材後しばらくして赤西 仁とユニットを組みデビューすることを発表)。ともあれ、ウシジマじゃないけど、芯の部分だけはブレずに。今後もやりたいことをやっていきたいです。

 

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□プロフィール 1983年10月20日生まれ。鹿児島県出身。’99年、ドラマ『サイコメトラーEIJI』で俳優デビュー。’03年のドラマ『ウォーターボーイズ』で注目を集め、’05年に公開された映画『電車男』で主演を務める。以降も映画、ドラマを中心に活躍。10月15日[土]より映画『何者』が公開。ドラマ「勇者ヨシヒコと導かれし七人」が10月から放送予定。動画配信サイト「Go Getterz(ゴーゲッターズ)」にて内野朝陽と企画したロードムービー風ドキュメンタリー『Trust Yourself』を配信中。

 

 

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