いよいよ公開まで、あと1カ月。
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は
エピソードⅢとⅣの時間を埋める物語となる。ということは、
我らがカリスマ、ダース・ベイダーは全盛期。
圧倒的な強さで大暴れすること間違いなしなハズ! と、たっぷりの期待を込めて、
編集部では仮定してみました。
そこで、豊富な知識に裏付けられたユニークな考察・レビューで、
映画ファンから多大な支持を受けている
「ORIVERcinema」編集長のNakatani氏に執筆を依頼。
ベイダーとは? そしてローグ・ワンでの登場は?
まったく新しいベイダー考察論、初出しの原稿をいただきました。
今日は第2夜!!
第2夜
理性と感性の間で
スター・ウォーズとは、ダース・ベイダーの悲劇の物語である。
かつて『選ばれし者』として将来を有望視されていたアナキン・スカイウォーカー青年は、悲劇に導かれシスの暗黒卿と成り果ててしまう。
彼の人生は、板挟みとなった立場から決断を迫られるという、残酷な瞬間の連続であった。
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初めての決断は、少年時代、故郷タトゥイーンに母を残して宇宙へ旅立つかという選択だった。この時わずか9歳にして、人生を大きく変える分かれ道を知らずうちに選択していたのである。
気弱ながら心優しいシミ・スカイウォーカーは、砂漠の惑星タトゥイーンの辺境で奴隷として苦しい日々を過ごしていた。不思議なことに、自然に身ごもり出産した子がアナキンだ。シミの善を受け継いだアナキンは、母を奴隷の身分から救いたいという強い想いがあった。
そこに偶然訪れたジェダイの騎士、クワイ=ガン・ジンによる”ジェダイの修行に身を投じる”という提案は、彼の想いとは相反するものであった。
生きとし生けるものには、”家族は無償で助けるべき”という本能がもたらす義務が宿っている。人一倍センシティブで、辛い日々を母とふたりで耐え忍んだアナキンにとって、その義務感はより鮮烈であった。
しかし、外の世界に羽ばたいて、銀河にとって立派な存在となる未来が待っている運命も、アナキンは早くも予感していた。結局、アナキンはジェダイとなるべくクワイ=ガンらに同行する道を選ぶ。母シミは「これはあなたの運命。運命は変えられない。沈む夕陽を止められないのと同じ。」と理解を試みるも、やはり物寂しい表情で我が子を見送る。
新たな運命に向かって歩み始めるアナキンが振り返ったとき、その憂いに満ちた佇まいを見逃していたわけではない。
ジェダイとしての修業の日々を邁進するアナキンは、理性と感性の間での決断を差し迫られることになる。クワイ=ガンらと共にタトゥイーンに訪れていた王女パドメ・アミダラに幼いながら恋心を抱いていたアナキン。彼が19歳になったとき、二人は再会する。ただでさえ恋愛を禁じられているジェダイ。アナキンは元老院議員であるパドメの護衛という立場であり、その二人が恋に落ちるなど言語道断である。
でも、そんなルール、誰が決めたんだろう? 若い二人の間に燃える恋の炎を、誰が止められよう? 大人たちが創り上げ、無理やり差し出してくる理性というやつは、刹那的な感情によっていとも容易く崩れ去ることを、アナキンは惑星ナブーの美しい湖のほとり、柔らかな日差しの中でぼんやりと悟っていた。
アナキンはここから、理性と感性の間での選択が迫られる瞬間において、常に感性にその決断を委ねるようになる。
タスケン・レイダーのキャンプで母シミ・スカイウォーカーが惨殺されたとき、アナキンは怒りに任せてタスケンの群れを皆殺しにしてしまう。
ジオノーシスにおいてドゥークー伯爵を追い詰めた時は、はやる気持ちを押さえきれず、オビ=ワンの制止を無視して飛びかかり、あっという間に蹴散らされる。
そして、シスの暗黒卿としての姿を露呈したパルパティーンをメイス・ウィンドゥが追い詰めていたとき、即刻処刑を試みるメイスに対し「ジェダイの道に反する」と理性を示すも、結局は咄嗟にメイスの腕を斬り飛ばし、パルパティーンに反撃の機会を与えてしまう。
これがダース・ベイダー誕生の決定的なきっかけとなった事は、よく知られている通りだ。
※明日に続く
[筆者プロフィール]
Naoto Nakatani
海外ポップカルチャーのファン・メディア ORIVERcinema編集長。
記事執筆やメディア運営、企業のプロモーション企画を手がける。インドカレーとバーガーキングが大好物。
ORIVERcinema
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