Ｑ４　俳優業で一番つらかったことを教えてください。

　俳優としてデビューした最初の舞台（2009年の『あたっくNo.1』）で、凄く怒られたことは悔しかったです。
　そのときは、「ドアを開けて入ってくる」という演技にOKをもらえず、僕のその場面だけで稽古に２日ほどを費やしていました。今振り返れば、どこがダメなのか分かるかもしれませんが、当時の自分には分かりませんでした。また、その稽古に先輩方もずっと付き合ってくれていたので、失敗するほど萎縮していきましたし、なかなかOKをもらえない歯がゆさもあり、演技の正解はどんどん見えなくなっていきました。
　そのとき言われた言葉で覚えているのは、「稽古なんだから、演技するごとに何か違うことしろよ」ということ。本当にその通りですし、NGを出されたら、俳優は新しい演技のアイディアを出し続けなければいけないんです。
　そうやって真剣に、自分の演技に向き合っていただけたことに感謝していますし、そのおかげで自分も成長できたと思っています。注意せずにやりすごすほうが楽だし、怒るのにも体力がいるのに、２日間もNGを出し続けてくれたのは、僕に「成長してほしい」という思いがあったからだと思いますから。
　舞台では１ヶ月ほどの稽古期間があって、みんなで密になって１カ月ほど汗をかいて、それで本番を迎えます。その過程にやりがいを感じますし、ずっと怒られ続けても、打ち上げで演出家さんに「お前の演技、良かったよ」と言ってもらえれば、それですべてチャラになります。怒られ続けて嫌いになっていた人でも、僕に対して真剣に向き合ってくれて、物凄いエネルギーを注いでくれていたことは分かっているので、その一言だけで好きになっちゃいますね（笑）。

Photo:JINJI HIROSE
Styling:SO MATSUKAWA〔TRON〕
Hair&Make:YUSUKE UKAI〔TRON〕
Interview&Text:SEIICHIRO FURUSAWA

『たたら侍』

原作・監督・脚本：錦織良成、エグゼクティブプロデューサー：EXILE HIRO、出演：青柳翔、小林直己、AKIRA、田畑智子、石井杏奈、高橋長英、甲本雅裕、宮崎美子、品川徹、でんでん、津川雅彦。5月20日公開。

青柳翔

1985年4月12日、北海道生まれ。2009年に俳優デビュー。その後劇団EXILEのメンバーに。映画『今日恋はじめます』『渾身KON-SHIN東京難民』『極道大戦争』などに出演。昨年には歌手デビューも果たした。