2017.10.03 Tue UPDATE CULTURE

話題のバンド「ネバヤン」。 never young beach スペシャルインタビュー

先日のフジロックにも出演し、懐かしさと開放感が共存するサウンドで、多くのオーディエンスを魅了させたnever young beach(ネバーヤングビーチ)。7月には、メジャー第一弾アルバム『A GOOD TIME』をリリースし、今は全国ワンマンツアーを行なうなど、充実の日々を過ごす彼ら。最新作に込めた思い、そして音楽ではなかなか伝わらない彼らのパーソナリティを、メンバーの巽 啓伍(B/写真一番左)と鈴木健人(Dr/写真一番右)に聞いた。
 

 
 
──今年からメジャーへ進出した訳ですが、心境に変化はありましたか?
 
鈴木 関わってくれる人の数が増えましたね。そのぶん、今まで以上に責任を持って活動していかないと、いろんなところに迷惑がかかってしまうなって思うようになりました。
 今までもラジオで自分たちの楽曲が流れているという話は耳にしていたんですけど、メジャー進出してから実際に聴くことができました。この間もドライブ中にカーラジオから流れてきて、本当にオンエアされているんだなって(笑)。
鈴木 俺も車の中で聴いたことある! あと、コンビニなどでも流していただく機会が増えて、それは嬉しい気持ちとまだ少しだけ恥ずかしい気持ちがあります(笑)。
 
──客観的にnever young beachの音楽を聴いてみて、改めて気づいたことってありますか?
 
鈴木 単純に嬉しいという気持ちが大きいですよね。特にアルバム『A GOOD TIME』は、いろんな場所で聴かれる作品になればいいという思いで完成させたものなので。だから、コンビニとかで聴いた時は、恥ずかしさと同時に「自分たちが目指した音は間違っていなかったな」って思えるようになりましたね。
 ある特定のシチュエーションに合うアーティストや音楽ってあるけど、僕らの音楽は全方位型なのかなって。朝から夜まで、一人でも大勢でも楽しめる音楽じゃないかって、客観的に思いましたね。あんまり押し付けがましくない、人に委ねている感じがする音になっているから、シチュエーションを選ばないのかなって。
 
──特にシングルカットされた「SURELY」なんて、とてもラジオ向きというか。多くの人が爽快さを感じるサウンドになっている気がしましたけどね。
 
鈴木 特に“ラジオ受け”とかを考えたつもりはないんですけどね(笑)。聴いてくださる人の幅を広げるために、今までとは違う音の作り方をしなくてはいけないのかもね、という話の流れで作ったのが、この曲。初めてストレートなビートの曲調になりましたね。
 ラジオやTVで流れていても違和感のない仕上がりになったと思います。あと、バンドを次のレベルに押し上げてくれそうな曲にもなるって思いましたね。
 
──この楽曲を含む今回のアルバム『A GOOD TIME』は、過去2作のアルバムとは異なるモチベーションで制作されたんですか?
 
鈴木 曲作りに関しては今まで通りですね。最初に(安部)勇磨がメロディとか元ネタとかを持ち込んできて、それを全員で肉付けしていくプロセス。ただ、その肉付けするにあたって、以前はデッドというか中音域とか耳に残る音を作るようにしていたのが、今回はギターに立体感をもたせたりとか、よりいろんな人がいいねと思ってもらえるようなものにしようという共通の認識みたいなものはありましたね。
 耳ざわりの良さ。大音量で聴いたとしても、心地よさを感じてもらえるものにしようという思いはありましたね。その結果、各パートの音がよりクリアに聴こえるようになりましたね。この曲では、みんなこういう動きをしているのか、というのがより伝わってくると思いますよ。
 
──そうすると、より自分のパーソナリティやテクニックを表現したいという気持ちは働きませんか?
 
鈴木 自分の個性を出すよりは、シンプルに削ぎ落とした音にする方がいいなって。純粋に楽曲の良さを引き出していった方が、このアルバムにはあうと思ったし、またシンプルがゆえに個性って自然と浮き彫りになってくると思うので。
 今回、勇磨のヴォーカルをいかに活かすか? ということを念頭におきながら制作していたので、ベースの音を楽しみにしていた人にとっては「つまんない」と思うかもしれないですね(笑)。でも、この音がないと成立しないよねと思える、削ぎ落とした「存在感」をアルバムに残せたんじゃないかなと。
 
──バンドの根幹を支える存在ですね。
 
 何がこのバンドで聴いてほしい部分なのか? をより意識して作った部分はありますね。
 
──そしてバンド名もあるし、リリース時期もあるし、アルバム全体には「夏」な感じも満載ですね。
 
鈴木 歌詞にも夏を連想させるものが入っているんですけど、意識してそこを表現しているつもりはないんです。勝手に出てしまっているというか(苦笑)。完成したものを聴くと、なんとなく「夏に合うな…」という感じで。
 
──みなさん、夏はお好きですよね?
 
 でもサーフィンはもちろん、スケボーもしないですからね、僕ら(笑)。海で泳ぐなんて、もってのほか(笑)。
鈴木 海に行ったら、潮で髪がベタベタになるから行きたくない! っていうメンバーもいるくらいですから(笑)。
 
──でもアルバム・ジャケットではみなさん楽しそうに海に入っていますよね?
 
鈴木 前作のアーティスト写真の撮影をした時と同じ海に行って、ボーリングの球を転がしてくれってカメラマンさんに言われたんです(笑)。僕ら、ライブ後にボーリングに行くことがあって。それを、ジャケット撮影してくださった奥山由之さんも知っていて、今回することになったんです。
 ボーリングの球を投げてほしいというリクエストもあって、投げた時に他のメンバーの球がひざに当たったりして、結構大変な撮影でした(笑)。
鈴木 でも、普段できないことを経験できたので、楽しかったです。
 
──ジャケットだけでなく、音からもみなさんがワイワイしながら楽曲制作している姿が伝わってきました。ところで、今回の安部さんの歌詞やメロディについては、どんな印象を持たれていますか?
 
 今までは、半径何メートルかの日常を綴った曲が多かった印象ですが、この作品ではそこも残しつつ、誰にでも当てはまるような出来事を意識して作っていた印象がしますね。
鈴木 だから、これまで以上に作詞には時間をかけていた気がしますね。結果、すごくいい言葉ばかりが並んでいると思います。あとヴォーカルに関しても、出せる声の領域が広がったからか、いろんな歌い回しをしていて。これまでで一番いいヴォーカルになっているなって思いました。
 
──また情景的というか、聴いていると映像が浮かび上がってきます。
 
鈴木 今回、歌詞に「あなた」などの人称をあえて入れていないんです。そのことで聴く人によって、恋人、友人、家族など、思い浮かぶ人の姿がそれぞれ違って見えてくるのかなって。
 「あなた」などの言葉を使わず、そこに人が存在している雰囲気を表現したいと言っていましたね。
 
──9月からスタートした全国ツアーでも、いろんな情景を感じられそうですね。
 
鈴木 アルバムを発売する前から、これら収録曲のいくつかは披露していたんですけど、それらを演奏するのが今すごく楽しくて。レコーディングで発見できなかった楽曲の魅力を知ることもできているので、やはりツアーは楽しいですね。
 実はワンマンでは初の全国ツアー。今までの楽曲もミックスしつつ、ひとつのストーリーを感じてもらえるようなステージを目指してやっています。
 
──ところで。巽さんと言えばハットという印象が強いんですが、こだわりがあるんですか?
 
 最近パーマをかけたので、そろそろやめてもいいかな? とは思っているんですけど、なぜかいつも被ってしまいますね(笑)。
 
──どれくらいコレクションしているんですか?
 
 20くらい? でも、結局決まったものしか被らないんですよね(苦笑)。
 
──そしてメンバーの皆さんは、古着をうまくコーディネイトされていますよね。
 
鈴木 そう、古着ですね。みんな洋服を買いに行く店がほとんど一緒なんですよ(笑)。スタジオに行った後で、そのお店に行くみたいな。でも、バンドを組んでからみんな服のセンスがちょっとずつ変わってきていますね。それまでファッションとかあんまり興味なかったんですけど、お互いにチェックしあって、どんどん進化している感じ。
 勇磨が時々「それダサい!」って指摘してくるので、「そうなんだ」って修正したりします。彼の意見は的を射ているので(笑)。
 
 
 
NEW ALBUM

『A GOOD TIME』
スピードスター/2600円/発売中
 
 
PROFILE
メンバーは、安部勇磨(Vo&G)、松島 皓(G)、阿南智史(G)、巽啓伍(B)、鈴木健人(Dr)。2014年より活動開始、翌年に1stアルバム『YASHINOKI HOUSE』、16年に2nd『fam fam』をインディーでリリース。日常の風景をそのまま描いたような歌詞と、親しみやすいメロディでありながらも、洋楽インディー・ロックの流れをくむドリーミーなバンド・サウンドで、話題を呼ぶ。17年7月にメジャー進出第一弾アルバム『A GOOD TIME』をリリース。9月3日~全国ツアー『TOUR2017 “A GOOD TIME”』を敢行中。
http://neveryoungbeach.jp/
 
 
 
Text:TAKAHISA MATSUNAGA

 

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