2000年にデザイナーの日高久代氏とパタンナーの宮原秀晃氏によって設立された〈Scye(=サイ)〉。19世紀のエドワーディアンスタイルにみられる、英国式のテーラリングをベースに、クラシックとモダンが融合した新しいスタイルを提案。カッティングや内部構造にまで配慮した、アナトミカル服作りから生まれる質の高いリアルクローズはファッション業界にも根強いファンが多い。そんなブランドが今年で17年を迎え、初の旗艦店〈サイ マーカンタイル〉をオープン。これを期に、改めて現在までの軌跡と新店の解剖を含めたこれからの展開をパタンナーの宮原氏に聞いてみた。
Photo/TAKEHIRO HAYAKAWA INTERVIEW/TAKUYA KUROSAWA
――17周年おめでとうございます。まず改めてブランドの成り立ちを教えてください。
宮原 ありがとうございます。デザイナーの日高と立ち上げたのがこのScye〈サイ〉ですが、そもそも出会いはもう30年前ぐらいになりますね。前職であるブランドの立ち上げメンバーとして一緒のチームになったのがきっかけで。そこでいくつかのブランドを一緒に担当するようになってから、今も変わらずずっと一緒に服を作っている感じですね。で、2000年にブランドを立ち上げて…。
――ブランド名の由来はテーラーリングの用語でしたよね?
宮原 そうですね。アームホールの一部である鎌の部分を指すテーラー用語ですね。英語だと「SCYTHE」になるのかな。僕らの服作りはテーラーリングが基本となっているので、そのことを表すような名前にしたかったんです。さきほども言いましたけど、もともとヨーロッパのテーラリングに興味を持っていて、そんなとき、ふと古い本でこの言葉を見つけて“いいな”って思って。けっこうこの「SCYTHE」にまつわる言葉が多く載っていたんですよね。で、シンプルで響きもよかったのでこの言葉をブランド名にしました。ただ、そこから商標を取るのが本当に大変で(笑)。とても苦労しました! もうすでに彩りの“彩”とか野菜の“菜”とかいろんな“サイ”が申請されていたので(笑)。当時そういった特許に詳しい人とかのツテもあまりなかったので僕が自分で特許庁に行って、審査官に申請したものの、最初は見事に「拒絶される」といった反応をいただきましてね。この言葉は誤解が生まれるから難しいって。そこから何度も申請し、最終的に通ったのがこの英語の「Scye」。この名前に落ち着いてよかったです。もう少しで「スーパークリエイティブイエローなんちゃら」みたいな造語になるところでしたから(笑)。
――で、あれこれあって17年。その年月の中でおふたりの服の作り方に変化はありましたか?
宮原 基本的にはないですね。日高がデザインで僕がテクニカルな部分を構築するといった役割は変わったことがないです。ただ、たまに日高がパターンも提案することなどはあったりしますかね。日高が自分で紙に描いて、切って、貼り付けて、組み立てて「こういう形で」っていう提案をしてくれるので、それを僕が原寸で考えて構築するみたいな。マスターパターンはフリーハンドでやるというベースは変わってないですね。お互い凝り性なので、思いついたらそれを具現化するところまで追求してしまうんですよね。
――そして遂に直営店をオープン。17年目の今年にお店を出した理由を教えてください。
宮原 もうそれは「理想の物件との出会い」というのが大きいですかね。もう何年も前からずっと「お店を出したい」ってことは決めていたのですが、希望に沿う物件がなかなかなくて。僕の頭の中では「4階建て」というのがマストで。1階がお店、2階がショールーム、3、4階が事務所という形態にすることは決めていましたから。というのもお店を開くにあたって、自分の目が届く範囲でやりたかったんです。デザインするだけでなく、ときにはお店に降り、お客様の話を直接聞いて、洋服の説明をちゃんとする。昔ながら対面販売みたいな。ちゃんと試着してもらったり、ディテールの説明をしたり、生地の説明をしたりと、お客様になるほどっていう納得の積み重ねをお届けした上で、洋服を着てみたいって思ってくれたらいいなと。
主に直営店〈サイ マーカンタイル〉について伺ったインタビューの後編も乞うご期待!
SCYE MERCANTILE(サイ マーカンタイル)
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷3-54-13
TEL:03-5414-3531
営業時間:12:00~20:00
定休日:火、水