2017.10.20 Fri UPDATE CULTURE

ワン・ダイレクションを離れて…ナイル・ホーランがソロで目指すのは? 緊急インタビュー

ニューアルバム『フリッカー』をリリースした ナイル・ホーラン。その想いを存分に語って頂きました

ボーイズ・グループ、ワン・ダイレクションのメンバーとして社会現象を巻き起こした、ナイル・ホーラン。2016年の活動休止をきっかけに、ソロ活動をスタートさせ、このたび初のソロ・アルバム『フリッカー』をリリースした。これまでポップの中心地にいた彼が、紡ぎ出したのはアコースティックギターをメインにした、時代に左右されない普遍性がある情緒豊かなサウンド。本格派シンガーソングライターとして、注目を集めるはずの1枚。そんなアルバムについて、そしてソロになった現在の心境を聞いてみた。
 

 

どうしても生のバンド・サウンドを入れることにこだわったんだ

──ソロで本格的に活動をスタートさせて、間もなく1年が経過するけど、この時間でいろいろと吸収したことも多かったのでは?どんな経験が印象に残っている?
 
このアルバムを作るにあたって、スタジオに入って、どうしても生のバンド・サウンドを入れることにこだわったんだ。それが実現して、自分の目の前でそれまで曲を知らなかったミュージシャン達が、感情を込めて曲を演奏してくれたのは凄く嬉しい瞬間だったよ。あともうひとつは、リリースした2枚のシングルの反応を目にしたときかな。特に(昨年秋に発表した)「ディス・タウン」は何も期待しないでリリースした。あれは、自分の近況報告のようなもので、当時たまたま手元にあった曲を発表しただけだったからね。その曲が全米・全英でヒット・チャート入りしたときは正直驚いたし、かなり印象に残っているよ。
 

 
──ソロとグループでの活動の違いはある?
 
レコーディング方法がまるで違うよ。グループでは、短期間で曲作りをして、ツアーに出て、ステージに立つ傍でレコーディングもしていた。それに対してソロでは、自分のペースでじっくり時間を掛けて作ることができた。マネージメントにもレーベルにも伝えたんだ。「じっくり時間を掛けて作るつもりだ。完成したら連絡するよ」ってね。で、実際そうやって制作に臨んだよ。時間を掛けたお陰で、自分が望む形で、自由に自分を表現することができたと思っている。
 
──グループの頃から、ライヴではギターを抱えてパフォーマンスする場面もあって、気になっていたんだけど。ギターを弾き始めるようになったきっかけは?
 
ギターを弾き始めたのは10歳か11歳の頃だったな。両親が兄にクリスマスにギターをプレゼントしたんだ。彼が全然それを弾かなかったんで、自分で弾いてみようと思った。ちょうどギターを手にした頃、動画サイトの存在を知って、それを見ながら、弾き方を覚えていったよ。長い間、コードをどう弾くのかわからなかったんだけど、動画サイトで弾き手の指の位置がわかるところをいちいち一時停止したりして、独学で覚えたよ。
 
──そして、ついに初のソロ・アルバム『フリッカー』が完成しました。
 
ナイル:アルバムには大物プロデューサーも参加しているし、グループの頃からお世話になっている、気心の知れたクリエイターの人たちにも参加してもらっているよ。どの楽曲も、自分が考えた言葉やメロディに、素晴らしい生命を注ぎ込んでくれたと思う。
 
──アルバムの収録曲について教えて。3rdシングルにもなっている「トゥー・マッチ・トゥ・アスク」はピアノがフィーチャリングされていて、イーグルスっぽいと思ったけど、この曲はどのようにして生まれたもの?
 

 
君の言う通りだよ。イーグルスとか、子供の頃によく聴いたんだ。だからこの曲ではああ言う感じを出したかった。スチール・ギターとかピアノを取り入れてね。この曲では(アデルなどを手がけている)グレッグ・カースティンと仕事をしているんだ。彼の何が素晴らしかったかって、僕が思い描いていた通りに曲を引き出してくれた。実はレコーディングする前から、この曲をどういう音に仕上げたいかってずっと自分の中ではわかっていたんだ。僕との会話の中で、彼はそれを汲み取ってくれて、思い描いていた通りの形にしてくれた。この曲は僕にとって凄くパーソナルな曲で、僕のことをそこまで知っているわけじゃない、曲の成り立ちをわかっているわけでもない、彼のような人が、僕のためにこの曲を大事に丁寧に仕上げてくれたのは嬉しかったね。
 
──タイトル曲になっている「フリッカー」は、ストリングスが入っていて、物憂げな雰囲気のあるシンプルなアコースティック・ナンバー。この曲ではどんなことを思い、作ったもの?
 
これは自分にとって最もパーソナルな曲で、一番気に入っている曲でもある。曲にするにあたって、まずプロデューサーのジャクワイア・キング(ノラ・ジョーンズなどを手がける)に言ったんだ。「できる限り、歌を繊細に仕上げたい。手を加え過ぎたり、過剰な演出や、押し付けがましさはいっさい要らない」って。プロデューサーもそれをきちんと理解してくれた。また、レコーディングでバンドと顔合わせをしたときも、全く同じことを言ったんだ。みんな肩の力を抜いて、僕に合わせてくれって。そして実際ギターを弾きながら、この曲をマイクに向かって歌った。3〜4テイクくらい録ったのかな。終わると、みんな無言で部屋をあとにした。凄くエモーショナルな曲だからしばらくその気持ちをそのまま引きずってしまったんだ。何について歌っているのかわからなくても、みんな歌から汲み取ってくれて、心のこもった演奏をしてくれた。僕にとってはアルバムを作る中で凄く感動的な瞬間だったね。
 
──また、ナイルの故郷であるアイルランドの伝統的なフォークっぽい雰囲気が漂う「シーイング・サウンド」では、グラミー賞を獲得していて、18年におこなわれるナイルの全米ツアーにも参加するカントリー系シンガーソングライターのマレン・モリスとデュエット。なぜ彼女と共演しようと思った?
 
まず、同じアイルランド出身のミュージシャンであるルース・アン・カニングハムという人と一緒に曲を作っていたんだ。歌詞を書いているうちに「これはデュエットになる」と確信した。そこで、誰と歌うのがいいだろうかって考えた。いろんな人の曲を聴きながらね。そんな時に、17年のグラミー賞を目にしたんだ。マレンはアリシア・キーズとパフォーマンスをしたんだけど、個人的には賞の中で最も印象的な場面だった。彼女の歌う姿を見て、すぐにこの曲のことを思い出したよ。それで、早速彼女にデモを送ったら、凄く気に入ってくれて、参加してくれたというわけ。彼女は凄いよ。一緒にアコースティック・セッションを何度かやったことがあるんだけど、最高だ。今では(マレンの拠点である)ナッシュヴィルに行った時は、彼女に必ず連絡をして、彼女の恋人も一緒に飲みに出かけるほど、仲がいいしね。本当に素晴らしいシンガーだよ。
 
──他のアルバム収録曲は、どんな感じ?
 
おそらく、これら3曲がアルバム全体の雰囲気を総括していると言ってもいいんじゃないかな。基本的にはああいう路線だよ。その中で「シーイング・サウンド」が最もカントリー寄りで、残りは、ヴァン・モリソンというか、ダミアン・ライスっぽい雰囲気だ。そこに2、3曲変わりネタが入っている感じかな。
 

 

子供の頃から聴いていた音楽に立ち返ることを意識してきたのかな

──現在は、エド・シーランやショーン・メンデスなどアコースティックギターを抱えた音楽スタイルの男性シンガーソングライターが注目されています。彼らからインスピレーションを受けることはある?
 
もちろん!今の状況は凄くクールだよ。4つ打ち(のビートの音楽)がシーンを独占している中でね。もちろん4つ打ち系の音楽も僕自身聴くし、いいんだけど、子供の頃からシンガーソングライターの曲をたくさん聴いて育ったから、それがまだ自分の中の核にあって、今後もそこは変わらないと思う。というのも、ここ数世代にとっては音楽の原点がそこにあるわけだから。エドはどの作品も最高だ。彼とは凄く親しくさせてもらっているよ。影響力もある。音楽を志す次世代にとって、みんながお手本にする存在になるだろう。ソングライターとしてみんなが彼を目標とする。ヒット曲を生み出す術を彼は知っているからね。ジェームズ・ベイやショーン・メンデスなんかも凄くいい。たくさんそういう人が活躍しているところに、自分も加われるのは嬉しいよ。
 
──そういった他のシンガーソングライターたちに対して、どういう違い・個性を打ち出していきたいと思っている?
 
なかなかいい質問だね。正直自分でもわからない。シンガーソングライターとしてできることは、心で感じたままに曲を書いて、ギター一本で勝負すること。どうなんだろう?自分の場合は、他の人たちとは違う形でスタートしている。グループでの活動があったお陰で、音楽業界についてこの5、6年間で多くを学ぶことができた。それがあったお陰で、(ソロとして)幸先のいいスタートが切れているのは確かだ。そこから先、自分が他とどう違いを出していくかはわからないけど……。自分としては曲を書くとき、できるだけリラックスして、考えすぎずに、自分が子供の頃から聴いていた音楽に立ち返ることを意識している。そう思って音楽を作っている人は多いと思うけどね。
 
──17年9月には来日公演を敢行。そちらでも、ソロで始動したばかりとは思えないほどの堂々とした佇まいでパフォーマンスしていました。また、日本の熱狂的なファンの声援にも、真摯に対応する姿も印象的。今後、日本のファンとは、どんな関係を築いていきたい?
 
日本のファンはみんな礼儀正しい。音楽に限らず、文化としてそうなんだと思う。だから世界のどの国とも違う雰囲気のライヴになるし、本当に日本でライヴをするのが楽しいんだ。また、みんなと会える日が待ち遠しいよ。ハイ!アリガトウ(笑)。
 
 
 
CHECK! NEW ALBUM

『フリッカー』


ユニバーサル/3000円(限定盤)/発売中
 
アルバム収録曲「スロー・ハンズ」

 
 
<ナイル・ホーラン プロフィール>
1993年アイルランド・マリンガー生まれ。10年に英国の人気オーディション番組「Xファクター」の第7シーズンに出演したことをきっかけに、ワン・ダイレクションのメンバーとして活動開始。16年の活動休止をきっかけにソロ始動。17年9月には、日本オフィシャルのファンクラブもスタートしている。
http://www.universal-music.co.jp/niall-horan/
http://niallhoran-fanclub.jp/
 
 
 
Text:TAKAHISA MATSUNAGA

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