鞄の老舗専門商社である林五から、2017SSに突如として発表された〈ブランク〉。「〈ナンバーナイン〉や〈ロンハーマン〉で経験を積んだアパレル出身のデザイナーが作る、ミニマルなバッグブランド」という枠組みで語られることの多かった同ブランドだが、2度のシーズンを経て、新たな展開を迎えようとしている。現在進行形で進化の過程にあるブランドのキーマンたる、デザイナーの大谷拓三氏に話を伺った。そのインタビューの後編をお届けしよう。
Photo/YUTA KONO INTERVIEW/SHUNSUKE HIROTA
――〈ナンバーナイン〉、〈ロンハーマン〉を経て、ご自身で〈ブランク〉を立ち上げるわけですが、ブランドのコンセプトについて教えてください
大谷氏 そうですね、まず個人的に、装飾過剰なデザインが世の中に氾濫していると思うので、できるだけ削っていくことを心がけています。ずっと生産管理の仕事をやっていたこともあって、色々なブランドのアイテムを見ていると「ここにステッチがあるだけで、このぐらい生産単価が上がってしまうよな」とか思うことが多いんです。そこにお金をかけるよりも、僕なら生地や縫製の質を上げたい。いまお付き合いしている工場の方たちも今までのキャリアの中で関係を築いてきた人たちなので「これから大きくなってくれればいいよ」という期待を込めて〈ブランク〉のアイテムを製作してくれています。そのため、他のブランドだったら3万円するような生地と縫製のアイテムでも2万円で作ることができている、という自負はありますね。
――大谷さん自身はアパレル出身の経歴ながらも、〈ブランク〉はバッグがメインコンテンツというイメージがあります。バッグとアパレルではデザイン上の制約や難しさがあるように思いますが、いかがでしょう?
大谷氏 僕の中ではバッグも洋服を作る生地と同じもので作っているので、アパレルのデザインと同じ感覚ですね。それに今まで〈ブランク〉は鞄のブランドがアパレルも作っているというイメージで語られてきましたが、次のシーズンからは「洋服の感覚で作る鞄」というラインは継続しながらも、よりアパレルにフォーカスを当ててメインに扱っていく予定です。
――アパレルに力を入れていく中で、2018年の春夏はデニムのラインナップが特に豊富ですね?
大谷氏 そうですね。デニムはクラボウさんの反応染めのデニムを使っているので、いわゆる色落ちが少なく長く綺麗に着続けることができるように考えています。反応染めのデニムはまだあまり洋服には使われていない素材だと思います。デニムというとアタリ感に注目が集まりがちですが、周りを見ていてもデニムが色落ちしないようにドライクリーニングで洗ったり、色落ちしたデニムと濃紺のデニムの2本を揃えてたりしている人が多いので、お客さんの中に、「クリーンに着続けたい」というニーズはあると思うんです。いずれは加工したデニムも作って見たいなと思ってるんですが、いまはまだベーシックでエレガントに見えるものを作りたいと思っています。
――試行錯誤しつつも、新しいアイデアもたくさん抱えているように感じます。今後の展開について教えてください
大谷氏 「良い素材を使って、シンプルにデザインする」というのがブランドのメインテーマなので、2018年春夏のコレクションでも色数や素材を絞ることで良い素材を使えるようにしつつ、トータルコーディネイトで提案できるようにスタイリングを組んでいます。今後は挿し色を入れたり、インナーに面白い柄物をリリースしたりしたいと思っていますね。2シーズンを経験してやっと問題点の洗い出しを終わり、次のシーズンこそが本格始動だなと思っています。
2017/18AWシーズンのアイテム。反応染めのデニム地を使用したデニムのテーラードジャケットは色落ちを気にせず綺麗目に着用可能。共地のデニムスラックスとセットアップで展開している。デニムテーラードジャケット3万4000円、デニムトラウザース1万5000円
ヴィンテージのGジャンのパターンベースにコーデュロイを使用し、着丈を長くするなどのアップデイトを施した。バックにアクションプリーツ入りで動きを妨げないのもポイント。3万5000円
Profile
大谷拓三/複数のアパレルブランドで経験を積んだ後に、2003年に〈ナンバーナイン〉に入社。宮下貴裕氏のもと、アトリエ統括マネージャーとして生産管理を担当する。2010年、日本に上陸してロンハーマンのデザイン・企画を担当、その後デザインオフィス「マスタープラン」を設立。2017年〈ブランク〉をスタートさせる。