2018.02.09 Fri UPDATE CULTURE

全米初登場1位! フォール・アウト・ボーイにNEWアルバムの制作秘話を聞いてみた

明日2/10からチケット発売!! NEWアルバム『マ ニ ア』を引っさげたジャパンツアーに向けて、MJP独占インタビューで、アルバム制作秘話をお届けします!!

痛快さとともに、時代の一歩先を行くバンド・サウンドを展開、日本でも圧倒的な人気を誇るフォール・アウト・ボーイ。最新アルバム『マ ニ ア』は、最前線を爆走し続ける彼らの今の勢いが詰まった最強にエキサイティングな仕上がりで、全米チャート3作連続で初登場1位、日本でもデイリーアルバムチャートではトップ5入りするほどのヒットを記録中。フロントマンであるパトリック・スタンプが、アルバムに込めた思いを語る!


 
 

「日本のファンによって、音楽の深い意味を見出せたんだ」

──前作『アメリカン・ビューティー/アメリカン・サイコ』をリリースしてから、バンドはどんな時間を過ごしていた?

クレイジーだったよ(苦笑)。前作はアルバム自体が人生そのものって感じの内容で、数多くツアーに出て、その中でオーディエンスがすごくいい反応をしてくれた。そんな光景を見られて本当にエキサイティングだった。ツアーを終えて、2016年の大半はオフを取ったんだ。それで、社会を静観してたんだ。2016年は世界中の人たちにとってはすごく忙しい一年だったと思うんだ。だから、僕たちがその年を外したってことは不思議とおもしろいことだったなと。

──昨年春にONE OK ROCKとの対バン来日公演もあったけど、彼らと同じステージに立ったことで、刺激はあった?

ONE OK ROCKは、最高だと思ったよ。彼らのパフォーマンスは本当に素晴らしくタイトだった。全員の息が完全に合っていて素晴らしい音楽だった。そう、僕たちは日本に行くたびにインスパイアされてるよ。今までしつこく言い続けてることだけど、日本は僕たちが一番好きなツアー場所なんだ。日本の音楽カルチャーってすごく興味深いんだよね。日本のオーディエンスのおかげで、僕たち自身の音楽に、より深い意味を見出すことができている。彼らが僕たちの曲をすごく大切にしてくれるから、もっと真剣に取り組む気になれるんだ。今回、以前よりも時間をかけて作曲したいって僕たちが思ったのは、オーディエンスが僕たちにそれだけのやる気をくれたからだと思う。作曲により時間をかけることで、見返りの大きい作品になったと思うよ。

──そして、来日公演直後にはアルバム『マ ニ ア』のリリースがアナウンス。当初は昨年秋にリリースする予定だったが、その後作品の完成度に納得がいかず発売をキャンセル。紆余曲折を経て、ようやく我々の手元に届くことになった。この苦渋の決断をした理由、またそれを選択したことで得たものとは?

実は単純に、完成していなかったんだ。おもしろいもので、アートとビジネスって完全に別物なんだよね。ビジネスとしては、紙面にアルバムの発売日を記していても、アーティストとしては、僕たちはアルバムがまだ出来上がってないって感じていた。まだ僕たちが望むものにはなっていなかったんだ。もっと時間をかければ、さらに良い作品になるってわかってたんだ…。これまで一度も発売を延期したことがなかったから苦しい決断だったよ。でも、それをやる価値はあった。本当にいいアルバムだと僕は思うし、ファンのみんなに聴いてもらうのが、すごく楽しみなんだ。僕たちにとって一番の自信作のひとつって言えるんじゃないかな。

──アルバムは前作、前々作とも全米チャート1位、日本でもトップ10入り。現在のロックバンドでヒットチャート上位をキープできる存在ってなかなかいないけど。そのことがプレッシャーになったりした?

確かにプレッシャーはかかるよ。時々過剰に感じることもある。誰かにテキスト(携帯メール)で、「新しいアルバムのことだけど、ヒットになるよね!」とか送りつけられるとね(笑)。でも、当たり前のことだけど、アルバムが毎回成功するなんて、制作のまっただ中では、まだ思えないんだよ。ヒットするぜ、なんて想定はできないものなんだ。だから、ヒットする度にびっくりするんだよ。前作の好リアクションにも本当に驚いた。僕は前作が大好きだったから、みんなも同じくらい好きになってくれて嬉しいのと同時に、すごく驚きでもあったんだ。
 
 

「『マ ニ ア』は統一感がありながらも、あちこちに飛んでいるアルバムだ」

──タイトルを『マ ニ ア』にした理由は?

ほぼ、ピート(・ウェンツ)がアルバム・タイトルを考えるんだけど、今回も彼が考えたんだ。で、僕の普段の役割は、彼が「これはどうかな?」って訊いてきた時に「ノー、それは良くないかも」って言う感じで。でも、今回の『マ ニ ア』はすごく良いと思ったんだ。例えば「ビートルマニア」とか、ポップ・カルチャーの中でマニアって言葉は夢中になって興奮してるっていうポジティブな意味で使うことがある。一方で、ネガティヴな意味でも使われることも。マニック(躁病)になるのは良いことじゃないからね。だから、“良い”だけでも“悪い”だけでもない二つの側面があって曖昧なところが、僕は気に入ったんだ。

──これまでの作品との違いは?

過去に僕たちは、スタイル面でバラバラなアルバムを作っていた。最初から最後まで聴くと、4、5枚の別のアルバムが一つになったような作品に聴こえるものもある。結果、少しだけアルバムのストーリーを損なってしまっているかのように感じてしまっていた。もっと一つのアルバムとしての結合力が必要だったかもしれないのに…。だから前作は、一つのストーリー性を感じるアルバムを作るのが目標だったんだ。それで、最初から最後まで全ての曲が一緒になるべきものとして響いていると思う。それを踏まえた上で、今作では奇妙なアイデアを思いついたんだ。この二つの概念を合わせてみようって! 最初から終わりまで一枚のアルバムに感じられて、かつスタイルは少しマニアックというか…。そう、あちこちに飛んでいくようなアルバムをね!

──なかでも印象的なのは「ホールド・ミー・タイト・オア・ドント」。これはラテンな要素を感じさせて、今までの縦ノリでエモーショナルなバンド・サウンドのイメージをいい意味で裏切る、ダンサブルな1曲。

確かに、ラテン風な感じに聴こえるのかもしれないけど、もともとはダンスホール・レゲエの曲として始まったんだ。ピートと僕は、実はレゲエが大好きなんだ。だから、レゲエを取り入れる話は昔から出ていて、それにインスパイアされた曲は何度もトライしていたんだ。でも、アルバムに合わなかったり、タイミングが合わなかったりで、一度も上手くはいかなかったんだ。でも今回はアルバムにフィットする曲を作ろうと。以前作った詞が見つかって、それがレゲエに上手くはまったんだ。で、デモを作ってメンバーに聴かせたよ。「この曲はいい! 皆も気に入ってくれるはずだ」ってね。でも、全員がノーリアクションだったんだ。誰も気に入らなかったし、気にもしなかったんだよ。それで僕はすごく心が折れて…(苦笑)。でも、アルバムの制作がほぼ終わりかけた時に「この曲は何?」ってピートに聞かれて。「すごい前に作った曲だよ」って言ったら、「何で俺に聴かせなかったんだ?」って。「え、聴かせたのに、その時ピート何も言わなかったじゃないか!」って言ってやった(笑)。だから、制作フィニッシュって時にもう一度スタジオに戻ってレコーディングしたんだ。ピートが改めて聴いてくれて、嬉しかったよ。僕が本当に好きな曲だから、絶対みんな気に入ってくれるはずだと思う。

──他には、どんな曲が? 聴く限り、FOBは新しい音楽領域へと進んだ印象がしたけど。

『マ ニ ア』は本当に多様性があるアルバムなんだ。一曲ずつそれぞれが個性的。たとえば、すごく静かな曲もあって、フォール・アウト・ボーイの曲でこんなに繊細で優しい曲があるってことに自分自身驚いたりもした。僕たちは決して繊細なバンドではないからね。一方、かなりアグレッシヴな曲もあるし、上手く説明ができないような曲もあって。それはサイケデリックな感じで、幻想的な雰囲気があるんだよ。多様な楽曲が収録されているってことに僕自身はすごく満足している。あと、皮肉ってるというか、笑える曲がいくつかあるんだ。コメディとまでは言わないけどシニカルな内容で。今まではシリアスな曲が多かったから、再び僕たちがユーモアのセンスを持てて本当に良かったって。
 
 

「どんな時代になろうが、素晴らしいことは存在している」

──アルバム全体を通して、リスナーにはどんなことを感じてもらいたい?

僕は、このアルバムが、みんなの助けになることを願っている。悪いことが起こっている時でも、世の中には本当に素晴らしい人たちや素晴らしい出来事が存在している。そのことを覚えておくのは大切なことだし、感謝することも大事だと思う。このアルバムを聴いて、リスナーが、世の中にはいいことって実はたくさんあるんだと気づいてほしい。僕は切にそう思うよ。

──4月には初となる日本武道館単独公演が決定。どんなショーになる?

どんなショーになるかはまだわからないけど、新しい曲をめいっぱいプレイしたいと思っている。また日本に行けることになって本当に嬉しいよ。日本にツアーに行くのは特に楽しい時間の一つだからね。僕たちがきっと素晴らしい時を過すことになるってことは、もう確実だね!

──日本のファンへメッセージを。
日本での公演が実現して、とても感謝しているよ。間もなく、みんなに会いに行くよ!
 
 
PROFILE
メンバーは、パトリック・スタンプ(Vo&G)、ピート・ウェンツ(B)、ジョー・トローマン(G)、アンディー・ハーレー(Dr)。2001年にアメリカ・シカゴにて結成。2005年に『フロム・アンダー・ザ・コーク・ツリー』でメジャー進出。日本でもアルバムがヒットチャートトップ10入りを何度も果たすなど、熱狂的な支持を受けている。待望の来日公演は、4月 26 日の日本武道館のほか、大阪、名古屋でも開催。チケットは2月10日より発売開始。
https://www.universal-music.co.jp/fall-out-boy/
 
 
NEWアルバム

『マ ニ ア』
ユニバーサル
2700円
 
 
 
Text:TAKAHISA MATSUNAGA

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