2018.08.18 Sat UPDATE 腕時計王

世界的画家・千住博とブルガリによるコラボから誕生した名作時計

誰がこの組み合わせを予想しただろうか?イタリアが誇る〈ブルガリ〉が世界的画家である千住博氏とコラボし、限定モデル「オクト フィニッシモ 千住博」を発表した。今回は、そのプロジェクトのキーマンである千住 博氏、ブルガリ ウォッチ デザイン センター シニア・ディレクターであるファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ氏を直撃取材した。

 

~スケールの大きなキャンバスに描かれた滝の画と、もっとも繊細で小さな世界の時計の組み合わせは、表現が難しいほど素晴らしいものになりました~

 

——そもそも世界的画家の千住氏と、ビッグメゾンである〈ブルガリ〉の組み合わせというのが特別なコラボレーションのきっかけを教えていただけますか?
ボナマッサ氏 これは私たちにとって、とても重要なコラボレーションであるとともに、日本が大好きな私個人にとっても、とても光栄なコラボレーションでした。それは千住氏が完璧を求める人物であったからに他ありません。
もともと千住氏の作品とコラボレーションをしたいと考えていましたが、ご存知の通り、千住氏の作品はとても壮大なものであり、我々の作品は時計と言うとても小さなもので、これを実現させることは、かなりの困難が予想されました。ただ料理の世界でもよくあることですが、まったく合わないであろうと思われていた食材同士でも、出来上がりでは素晴らしい味に仕上がっていることがあり、それと同じことが起きたのだと思います。スケールの大きなキャンバスに描かれた滝の画と、もっとも繊細で小さな世界の時計の組み合わせ。言葉に言い表せないほど素晴らしい出来事だと思います。このダイアルはMOP(マザー・オブ・パール)にプリントがなされているものですが、色合い、グラデーション…。今までの製品の中でも、もっとも難しいダイアルだったと思います。
千住氏 「プリント」という表現よりも、シルクスクリーンというか、「版画」に近いものだと思いますね。とても丁寧に作られている、より高度な「版画」だと…。
ボナマッサ氏 そうですね、「プリント」という表現を使いましたが、もちろん一般的な「プリント」とは全く違う繊細なものでした。千住氏が表現した「版画」に近いものだと思います。そして最終的にこの色になりましたが、そこに至るまでの過程で、何度も何度もトライアルを重ねてきました。千住氏の作品の繊細さ、情熱をダイアルで表現するという、本当に難しいものでした。

 

千住氏は「日本はもちろん、イタリアも大好きな私にとって、この作品に携われたことは本当に光栄ですね」とコメント

 

——千住氏の作品と言えばご存知の通り壮大なものが多いですが、もともとの原画はどれくらいの大きさでしたか?
千住氏 原画自体は非常に大きなものでしたね。この作品と同時に手掛けていたのが、世界遺産である高野山金剛峯寺の襖絵だったのですが、それは横幅44m。それを手掛けながらの今作だったので、当初は戸惑いもありましたね。ただ、今作はサイズ的には小さいですが、ダイナミックな作品になったと思いますし、金剛峯寺の襖絵は、とても大きなものですが繊細なディテールも特徴でして、お互いに良い影響があったと自分では認識しています。もう今では米粒に顔を描く自信もありますよ!(笑)そのくらいディテールにはこだわりました。いや、でも描いていて本当に面白かったんですよ。このブルガリの作品と高野山金剛峯寺の襖絵は、兄弟作だと思っています。どちらも、今後千年以上残る作品だと。自身のシグニチャーでもある「ウォーターフォール」がシンボリックだったということや、小さなダイアルでの表現にはもっとも効果的だということもあり採用されました。同じ時期に素晴らしい仕事ができたことは、私にとって生涯の喜びですね。

「日本が誇る世界的画家の千住氏との壮大なコラボレーションは、とてもエキサイティングなものでした」と語るボナマッサ氏

 

~滝というのは「時の流れ」だと。時の流れというものは、人間の手に負えない神の領域だと。宇宙の領域だと~

 

——ダイアルをキャンバスとして考えられた時に、インデックス(=針)の存在は難しくなかったですか?
千住氏 いや、それがあるから良いのだと思うんですよ。それがあるから画にも奥行きが出たり、リアリティが出てくるものだと。そしてこのダイアルには、凄くイマジネーションを刺激されました。どこか宇宙的、神秘的というか…。僕は常々、「滝」というのは単に水の流れではなく「時の流れ」だと思っていました。ですから時計に滝の絵柄というのはとても相応しいものだと思っていました。今まで存在していなかったようなので、そういう意味でも今回の作品は新しい、そして多くの人に受け入れられる作品に作ることができたと思います。

——千住氏の作品には滝が多いですが、どの滝が好きとかはありますか?
千住氏 滝を見ることは好きですが、例えば華厳の滝とか那智の滝とか白糸の滝とかとらわれてしまうと、絵はがきのようになってしまうので…。ですので、今回の作品も「ブルガリの滝」としか言いようがないんですね。まさにこの時計のための、この時計にしか流れない滝、というイメージで。心を無にして、邪念を払って集中して描きました。僕は元々ブルガリが好きでしたし、イタリアが大好きですし、イタリアのアートも大好きですし、大学でもイタリア語を専攻していましたし…。もちろん日本の文化も大好きで、そういう意味でもクロスオーバーというか、こういうスーパーブランドにコラボレーションを提案されたことがとてもうれしかったですね。日本人としてこのプロジェクトに携わることができたということ、こんな名誉なことはないですね。それ以前からも時計は「おもしろいな」と思っていました。自分のシグニチャーである「ウォーターフォール」をいつしかやってみたいなと。先ほども述べましたが、滝というのは「時の流れ」だと。時の流れというものは、人間の手に負えない神の領域だと。宇宙の領域だと。そういう意味でも、「ウォーターフォール」は、やはり時計にもっとも相応しいものだと。僕は時計というものが好きなのですが、時計とは時間の流れを表現するいわば“神器”であって、できる限り崇高であってほしいし、荘厳なものであってほしいですね。それが今作では見事に表現できたと思います。
ボナマッサ氏 滝というのはその瞬間ごとに姿を変えるものです。見た目が変わるだけでなく、音や香り、空気感…。それが瞬間ごとに変わる。そんなリアルな滝をダイアルの上に表現することはいかに難しいことだったかおわかりになったかと思います。色々な困難があったプロジェクトですが、その分、とても大きな期待感が込められた、まさに特別なものと言えるのです。

 

下に紹介している限定モデルの他に、チタン製「オクト フィニッシモ ミニッツリピーター」、ロジウムコーティングのステンレススチール製 「オクト フィニッシモ トゥールビヨン」、ピンクゴールド製「オクト フィニッシモ オートマティック」という3点を1つのボックスに収めた限定1セット(税抜5000万円)を発表。特製ボックスには千住氏のハンドドローイングが施されている。上の写真はその発表記念パーティーの模様。

 

SAP103051

リアルな「ウォーターフォール」が表現されたグレーのダイアル。チタン製ケース&ブレスレット。自動巻き、ケース径40mm、限定30本、税抜価格172万円、2018年6月発売

 

SAP103050

ロジウムコーティングのステンレススチール製ケース&ブレスレット。ブルーのダイアルが荘厳。自動巻き、ケース径40mm、限定30本、税抜価格162万円、2018年9月発売

 

SAP103053

ピンクゴールド製ケース&ブレスレットにピンクのマザー・オブ・パールダイアルはまさに優雅。自動巻き、ケース径40mm、限定14本、税抜価格515万円、2018年10月発売

 

 

日本画家 千住 博


スケールの大きな滝の絵で知られる日本画家。代表作「ウォーターフォール」は1995年、ヴェネツィア・ビエンナーレで名誉賞を受賞。長野県に同氏の名を冠した美術館がある。

 

 

ブルガリ ウォッチ デザイン センター シニア・ディレクター
ファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ


国立デザイン大学ローマ校でインダストリアル・ デザインを専攻。2001年、自らのデザイン画をブルガリ デザイン センターに送付。ほどなくして当時のCEOであるパオロ・ブルガリに認められ、ウォッチ デザインチームに参加。

商品に関する問い合わせ
ブルガリ ジャパン TEL:03-6362-0100

 

Photo:KATSUNORI KISHIDA

 

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