2017.11.02 Thu UPDATE CULTURE

2017年スタート!話題のブランド〈BLANCK〉のデザイナーを直撃!

2017年デビュー!今後大注目のブランド〈ブランク〉のデザイナーである大谷氏にインタビュー! 〜前編〜

 

鞄の老舗専門商社の林五から、2017SSに突如として発表された〈ブランク〉。「〈ナンバーナイン〉や〈ロンハーマン〉で経験を積んだアパレル出身のデザイナーが作る、ミニマルなバッグブランド」という枠組みで語られることの多かった同ブランドだが、2度のシーズン展開を経ていま新たに脱皮しようとしつつある。現在進行形で進化の過程にあるブランドのキーマンたる、デザイナーの大谷拓三氏に話を伺った。そのインタビューの前編をお届けする。

 

Photo/YUTA KONO  INTERVIEW/SHUNSUKE HIROTA

 

――〈ブランク〉をスタートする前に、そまざまな経歴があるとうかがっています。〈ナンバーナイン〉や〈ロンハーマン〉など、話題となったブランドを歴任されていますが、当時のエピソードなどを教えていただけますか?

大谷氏 ちょうど僕が〈ナンバーナイン〉に入ったのが、東京コレクションをやめて「パリコレに行くぞ」というタイミングで。今にして思えば物凄く激動の時期だったように思います。僕の担当はアトリエと工場の進捗や管理で、グラフィックをいつまでに仕上げて、生地がいつまでに工場に届いてというのを把握しながら、宮下さんがイメージしているものをサンプルとして仕上げる役割でした。とにかく大変だった思い出がありましたが、そのぶんショーがが終わったときの充実感や喜びはすごかったですね。全部終わった後に宮下さんがちょこっとランウェイに顔を出してバックヤードに戻ってきて、みんなとひとりずつ握手していくんですけど、その時が一番うれしい時間でしたね。

――ファッション業界の人間でも、なかなかパリコレの舞台裏は想像がつかなぐらい貴重な体験だと思いますが?

大谷氏 ショーが近くなるとサンプルチェックや進行状況確認等で気が休まりませんし、1日何時間もフル回転してるので、もちろん大変でしたね。
1月末がショー本番になるので、年末年始は工場さんにも動いていただきながらバタバタしてましたね。正月も元旦からサンプル状況の確認電話が入ってきたりと、常に万全な体制でいるためにアトリエには居るように心がけていました。

――特に宮下さんはこだわりも強いので、サンプルのチェックなども大変だったんじゃないですか?

大谷氏 そうですね、少なくとも僕が関わっていた頃の〈ナンバーナイン〉は、ほぼ全てのアイテムで生地からオリジナルで作ってたんで、もう大変でしたね。生地作るのも2ヶ月ぐらい掛かるんですよ。それにすべてのアイテムで色合わせをするので、色ブレにも凄く厳しかったですね。「本番のボタンが届かないから、とりあえず代わりのボタンをつけておこう」とか思っても、すぐにバレるぐらい宮下さんは生地の表情の違いや仕上げ感の良し悪しが敏感にわかる人でした。サンプルチェックの締め切りまでには絶対に間に合わせないといけなかったので、秋田の工場までサンプルを取りに行ったり、東京からパリまで持ってきてもらったりってこともありましたね。

――その後、デザイナーとして〈ロンハーマン〉で働きはじめますが、前職との違いはありましたか?

大谷氏 まずは〈ナンバーナイン〉の時は生産管理で、〈ロンハーマン〉ではデザイン・企画にシフトしたことがひとつ。〈ナンバーナイン〉では「宮下さんの考えていることを如何に正確に形にするか」が求められましたが、〈ロンハーマン〉では「いかに売れるアイテムをデザインできるか」が重要でした。そのためには雑誌も読んでファッションのトレンドを理解しなくてはいけないし、アメリカ出張に行った時も「現地で流行っているもの、次にトレンドになるアイテム」を探してくる必要がありましたね。

――まったく違う環境だと思いますが、どちらの方が楽しかったでしょうか?

大谷氏 まったく違う内容だったからこそ、どちらも魅力がありましたね。〈ナンバーナイン〉での生産の現場とやりとりしながら仕事をするやり方は勉強になりましたし、〈ブランク〉がメイドインジャパンにこだわっているのも、そこが原点です。今までのキャリアで付き合ってきた工場の方たちと細かく連携を取りながらモノづくりをしたかったんです。

――なるほど。当時の経験や人脈が今のブランドに活かされているんですね。〈ロンハーマン〉での経験はどうでしょう?

大谷氏 バイヤーの「今季はこういったカラーのアイテムを作らないと」といった販売の現場からフィードバックした情報をもとに作るのも勉強になりました。「売れるものを7割作って、残りの3割は好きなものを作って良いよ」というスタンスだったので、自分の作ったものが即完売となればうれしいですし。ただ、売れるだろうなと思って作ったものは売れるんですが、自分の好きなジャンルに偏ると売れないんですよね(笑)。自分のコアになる部分を表現しながら市場に受け入れられるアイテムを作るのは、自分でブランドを担うにあたって必要な課題だと思っています。

 

 

(写真上2点)「洋服と同じ感覚でデザインしています」と語るバッグ類も2017/18AWシーズンのアイテム。こちらのトートバッグはウェアのコレクションでも展開しているコーデュロイを使い、鞄専門の工場で仕立てている。バックパック2万7000円、トートバッグ1万7000円

 

Profile
大谷拓三/複数のアパレルブランドで経験を積んだ後に、2003年に〈ナンバーナイン〉に入社。宮下貴裕氏のもと、アトリエ統括マネージャーとして生産管理を担当する。2010年、日本に上陸してロンハーマンのデザイン・企画を担当、その後デザインオフィス「マスタープラン」を設立。2017年〈ブランク〉をスタートさせる。

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