2017.11.20 Mon UPDATE CULTURE

「攻めたものを作りたい」という想いを込め、違うスタイルのラップを披露したSWAYのソロデビュー

DOBERMAN INFINITYに所属する新世代のバイリンガル・ラッパーで、劇団 EXILEのメンバー“野替愁平”として俳優としても活躍するSWAY。彼が、ビースティー・ボーイズ、カニエ・ウェスト、Jay-Zなどのヒップホップ・レジェンドを輩出してきたDef Jam Recordingsからデビュー・シングルをリリースする。地元・札幌時代からの盟友・SHOKICHIらも制作に加わり、DOBERMAN INFINITYとは全く違うスタイルのラップを披露した本作の裏側を聞いた。

取材・文/古澤誠一郎 写真/早川岳大

 

――今回、Def Jam Recordingsからのソロデビューという話を聞いて驚きました。Def Jam Recordingsは、世界的な名門レーベルですが、どのような経緯でリリースが決まったのでしょうか。

 

SWAY  Def Jam Recordingsとは、いい意味で両思いになれた感じでした。僕の所属するDOBERMAN INFINITYでは、9月13日にAK-69さんとコラボした『Shatter』という曲をリリースしたんですが、その制作前にAKさんとお話する機会があったんです。そのときに「SWAYはソロやらないの?」という話になって、僕が「それは常に考えています」と話したら、「SWAYがDef Jamでやったら面白いのにね」みたいな話をチラッとしてくださったんです。そのときに「Def Jamでリリースなんていう可能性もあるのか」と気づいて。

 

――Def Jamはやはり昔からあこがれの存在でしたか?

 

SWAY そうですね。まだHIPHOPに詳しくなくて、何を買っていいのか分からずレコードショップに通っていた頃から、Def Jamのロゴがドンと入ったレコードは印象に残ってましたから。それでHIPHOPが少しずつ分かってきたら「とんでもないレーベルなんだな」と気づいて。

――近年は日本でもAK-69さんらが所属していましたが、日本で活動するラッパーにとってDef Jamは、長らく「海の向こうの手の届かない存在」というイメージだったのではないでしょうか。

 

SWAY そうですね。夢のまた夢だと思っていたんですが、「そういえばAKさんは契約したんだよな」と気づいて。それで自分がソロをやるならDef Jamで……という気持ちが湧いてきて、HIROさんはじめ色々な方に相談もしました。そしてDef Jamさんのほうも「やりましょう!」と言ってくださって、今回のソロデビューが実現しました。

 

――HIPHOP界のレジェンドが所属してきたレーベルからのデビューというのは、嬉しさとプレッシャーのどちらが大きかったですか?

 

SWAY プレッシャーはあまりなかったですね。自分にはDOBERMAN INFINITYという居場所があって、NIGOさんとVERBALさん、NAOTOさん、MANDY君とやっているHONEST BOYZ®というグループもある。HIGH&LOWプロジェクトでは、MIGHTY WARRIORSの楽曲も自分たちで制作していて、本当にありがたいことに活動する場所が沢山ある状態なんです。そのなかで「SWAYのソロをどう色分けできるか」というのを最初に考えて。「グループではなく1人だからこそできることは何か」「自分が挑戦できていないことは何か」と考えたとき、Def Jamからのリリースというのがピタリとハマったんです。

 

――ソロでの第1弾のシングルは、ラッパーとしてのカラーを決定付けるものになると思います。どんなことを考えて制作に臨みましたか?

 

SWAY やはりHIPHOPのアーティストである以上、「攻めたものを作りたい」と考えました。特に2曲目の『Lullaby』や4曲目の『Acting Myself』については、自分が作りたい曲のビジョンを強く打ち出しました。リード曲の『MANZANA』についても、今年の流行のラテン系やレゲトンも取り入れつつ、自分の声色をしっかり出せるものにしましたね。

 

――確かに『Lullaby』や『Acting Myself』といった曲を筆頭に、今回のシングルではSWAYさんの声の表情の豊かさが強く感じられました。

 

SWAY 声の出し方や張り方は、いつもとは違う味を出せたと思いますね。ドーベルでは「男5人で夢を掴もうぜ!」という熱さや絆感、ファミリー感が大事だし、120%の力をマイクにぶつけるのがスタイルです。そのスタイルをグループで出し切れているからこそ、『Lullaby』や『Acting Myself』はソロならではのスタイルを出せたのかなと思います。

 

 

――リード曲の『MANZANA』の歌詞には、ソロへの強い決意も感じられました。

 

SWAY ラテン系、レゲトン系の曲で行こうという話になって、この曲のデモバージョンが出来上がった段階で、『MANZANA』というタイトルは付いていました。リンゴ(MANZANA)と女性をかけたテーマも早くから決まっていたんですが、そこに「恋をしている場合ではなく自分のミッションを果たせなければいけない」という31歳の男である自分の要素を加えることで、SWAYらしく面白い曲にできたかなと思います。

 

 

――ミュージックビデオは突き抜けてHIPHOP色が強い仕上がりになっていますね。

 

SWAY もう30歳を超えていますし、変なこだわりは捨てて、「何でもやるよ」という覚悟はできています。スタッフのみなさんと相談して今のような形になりました。あとHIPHOPのカルチャーにはスニーカーが一つの要素としてありますが、今回はあえて素足で。「裸で勝負しよう」という姿勢は大事にしました。

 

――一方で、HIPHOPのカルチャーで「グリル」と呼ばれる金歯のアクセサリーも付けていましたね。日本のラッパーでも付けている人はかなり珍しいと思います。

 

SWAY グリルに関しては「それ何なの?」って思う人もいるでしょうけど、そういう部分でも攻めたいと思っていました。「好きな人がやっていることを真似る」とか、「人がやらないことをやる人をけなす」とか、そういう小さい世界で争うくらいなら、もう「裸にピンクのファーコート」みたいな突き抜けたことをしようと。そういうチャレンジができたミュージックビデオだなと思います。

 

――グリルも日本のアーティストだと、どこか恥ずかしさがあって付けられないのかもしれないですが、LDH所属でDef JamからソロデビューしたSWAYさんがそれを付ける……というのが面白いと思いました。

 

SWAY もしかしたら、来年には日本のみなさんがグリルをするようになるかもしれないし(笑)。ほんと、何が起こるか分かんないですから。

 

――2曲目の『Lullaby』は、サビのボーカルの甘さだったり、声のトーンを抑えつつ脚韻やフロウで魅せていくラップのクールな雰囲気だったりと、SWAYさんのカラーが強く打ち出された曲だと感じました。

 

SWAY こういうスタイルの曲をどうしてもやりたくて、SUNNY BOYと一緒にスタジオでゼロから作った曲なんです。そのSUNNYとは同い年であり、古い仲でもあって。自分がまだ札幌にいたときに、SUNNYはスーツケース1つでハワイから出てきて、そのころからよく長電話をする仲だったんです。作品として発表せずに一緒に作った曲もあったし、俺が作りたい音も分かってくれているので、今回のような曲が作れたのかなと思います。あとこの曲は、歌詞がない状態のときは「ラララ」でメロディを作っていて、そのときの譜割りが「ララバイ」っぽかったんですよ。

 

――それがタイトルになったんですね。

 

SWAY はい。それで「この曲のタイトル、『ララバイ』だったらダサいかな」「ちょっとまあ古いよね」「昭和的なワード感あるよね」みたいな話もして。

 

―ララバイは確かに古い言葉ですよね。

 

SWAY ですよね(笑)。でも、「ちょっとそこ攻めたいよね」というのもあって、あえての『Lullaby』というタイトルにチャレンジしたんです。それでこの曲を聞いたときに、「ラッパーのSALU君が書いたら凄く詩的なるだろうな」と思ったので、自分で物語を書いたうえで、それをもとにSALU君にリリックをお願いしました。

 

――本当にDOBERMAN INFINITYのSWAYとは全く違うカッコ良さを感じる曲でした。

 

SWAY 「ドーベルのSWAYがソロをやった」って印象で終わるのはもったいないと思ったんです。だから『Lullaby』はSWAYプロデュースというよりは、SALU君とSUNNY BOYがプロデュース……という曲ですね。それはほかの曲も同じです。

 

――一方で三曲目の『La Vida Loca』は、1曲目の『MANZANA』に通じるラテンな雰囲気の曲ですね。

 

SWAY もともとリード曲の『MANZANA』を選ぶ過程で出会った曲だったんです。『La Vida Loca』というのは、訳すと「狂った人生」とか「クレイジーライフ」という意味。そのタイトルから「自分にとってのクレイジーライフって何だろうな」と曲のテーマを考えて、そこで出てきたのが僕の場合は東京の友達でした。

 

――それはなぜ?

 

SWAY 僕はもともと札幌の人間で、東京に出てきて、SWAYっていう“偽名”を名乗って活動し、クラブへ行っていました。この曲のリリックを書いてくれたStaxx君も僕と同い年なんですが、彼は大阪から出てきて、同じようにStaxxというニックネームを名乗って、同じようにクラブで遊んでいる中で出会いました。でもお互いに本名を知らないし、家の場所も知らない。みんながニックネームのようなものを持っていて、酒を飲んだり音を聞いたりしながら夢を語り合って、このコンクリートジャングルの中でみんなが闘っている。そこで凄く打ち解けあっているけど、親友という言葉とも何かが違う。その関係が、ちょっと面白いなと思って、このクレイジーな友達のことを歌いたいと思ったんです。

 

――たしかに関係性が面白いですね。

 

SWAY みんなが夢でつながっていて、SNSでは毎日のように会っている関係なんですよね。それでこの曲も、Staxx君と実際にクラブで飲みながら、「こういう曲つくりたいんだよね」って相談して作ったんです。

 

――先ほどのSUNNY BOYさんも、今のお話のStaxxさんも以前からの知り合いということですが、4曲目で歌詞を一緒に書いているSHOKICHIさんも地元・札幌時代からの友人なんですよね。

 

SWAY 自分は16歳のときに札幌でラップを始めて、17、18、19歳の3年間はSHOKICHIや、今はメジャーで頑張っている佐藤広大たちと同じクルーで活動していたんです。そして今は一緒にLDHにいるSHOKICHIと、札幌時代から電話で話す仲だったSUNNY BOYの3人で、この3人だからこそできる曲をつくりたいと思ったんです。

 

――「自分を演じる」ということがテーマになった歌詞には、その頃の思いや記憶が反映されているんですね。

 

SWAY  ラップをはじめた頃は、親にも「HIPHOPって何なの?」「そんなんでお金稼げるの?」みたいなことも言われましたけど、それでも強い自分を演じている部分があったんです。落ち込んだり、悔しい思いをしたりして、ウソで自分を守ることもあったし、そんな自分にやりきれなさを感じることもありました。常に「自分対自分」で戦ってきたし、いまも本当の自分を探しているし。そういう話をSHOKICHIに歌詞にしてもらったんです。SHOKICHIが書いた「曖昧な空 けどキミは飛べそうかい?」という歌詞は、俺に言ってもらっている気もするし、一方で過去の自分のように「ラップでメシを食いたい」と思っている人たちにも届く歌詞だと思います。

 

――HIPHOPという音楽は「自分を演じる」ということに肯定的というか、それを積極的に行う音楽ですよね。やはり今もSWAYという存在を演じているという意識があるんですか?

 

SWAY ありますね。ただ、こういったインタビューを受けているときは、過去に自分がやってきたことを色々と思い出しちゃうので、あまり演じられていないかもしれないです(笑)。でも、ステージに立つ時は演じていますね。自分の中では、やっぱりこの曲について持っているイメージがあるし、そこでつくり上げている自分像もあるので。これからこの曲をパフォーマンスするにあたって、いろんなことを考えていくと思います。

 

――レコーディングをするのと、ステージでラップを披露するのはまた違う体験だと思いま。ライブについては、今はどんなビジョンを持っていますか?

 

SWAY ライブでも新しいものを魅せたいですね。あと、役者としての経験も生かしたいです。僕がLDHに所属させてもらうきっかけには、やはり劇団EXILEという場所がありましたし、そこでカッコ良さに関する考え方が変わったんです。それまでは「カッコいいことだけがカッコいい」と思っていたんですが、人前で大泣きしたりとか、怒り狂ったりとか、そういうカッコ悪い部分を見せることも、表現としてはカッコいいんだと衝撃を食らったんですよ。そんな経験もSWAYとして生かしていけたらと思っています。

 

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<プロフィール>

SWAY

1986年6月9日に北海道 札幌市出身。 2014年6月に結成された、4MC+1Vocalの男性グループ「DOBERMAN INFINITY」のメンバーとしてMCを担当するほか、HONEST BOYZ®やHiGH & LOWで結成されたMIGHTY WARRIORSのメンバーとしても活動。 また劇団 EXILEのメンバー“野替愁平”として映画「クローズ EXPLODE」「HiGH & LOW THE MOVIE」「ホットロード」などに出演。デザイナーとしてもDOBERMAN INFINITYのCDジャケット、グッズを始め、北海道日本ハムファイターズや、NEW ERA等とのコラボアイテムをデザインし商品が即完売となる等、マルチクリエイターとしての才能を発揮している。

 

デビューシングル「MANZANA」

2017年11月1日(水)発売

[CD+DVD(初回限定盤A)]UICV-9264 \2,037(税抜)/\2,200(税込)

【初回限定盤A】

 

[CD+動画ダウンロードカード(初回限定盤B)]UICV-9265 \1,667(税抜)/\1,800(税込)

【初回限定盤B】

 

[CD(通常盤)]UICV-5068 ¥1,111(税抜)/\1,200(税込)

【通常版】

公式HP

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