2007年の設立以来、リアルなヴィンテージ加工やオリジナリティあふれるパターンワークで人気を博しているドメスティックブランドの〈REMI RELIEF(=レミ レリーフ)〉。今年で10周年を迎えた同ブランドのデザイナーの後藤 豊氏とアポイントが取れたのは、2018年春夏の展示会場。100平米を超えるスペースに250型以上のアイテムが並ぶようすは、1ブランドの展示会の規模とは思えないほどバリエーション豊かだ。その尽きることなくあふれ出るクリエイティブに支えられた〈レミ レリーフ〉の10年について、話をうかがった。
Photo/TAKEHIRO HAYAKAWA INTERVIEW/SYUNSUKE HIROTA
――ちょうどいま展示会の最中(※取材が行なわれたのは10月中旬)ですが、今シーズンもすごい型数ですね! この数のデザインを考えてサンプルをアップするだけでも大変ではないでしょうか?
後藤氏 いまはシーズンごとに250型ぐらいサンプルを作っています。僕がファッションに目覚めた頃はパソコンも携帯もなくて、男は服とクルマにお金をかけて女の子にモテようとするのが当たり前な時代でした。ファッションがカルチャーの中心だったから、そこにお金を注ぎ込むのは普通だったし、アメカジからヴィンテージウェア、DCブランドとひと通りの経験もしました。服を“自分のお金で買って自分で着てきた”という経験が生きているように思います。ずいぶんヴィンテージウエアも買いましたが、古着ってアームホールが太くてモテなかったりするので、どんな高価なヴィンテージウェアでも自分でリメイクして着たりしてましたね。
――話は変わりますが、〈レミ レリーフ〉の強みは自社で生産背景を持っていることだと思うのですが、その辺りはいかがでしょうか?
後藤氏 アパレル生産のシステムってブランドと工場の間に“振り屋”さんと言われる人たちが居るんですね。ブランド側がお願いしたい内容を時間とか工程とかを踏まえて工場に割り振る作業をする人たちなんですけど、彼らに企画を話しても、僕らのお願いしたい内容だと手間がかかり過ぎてまったく割に合わないので「商売にならないな」って思われて、工場に話が行く前に断られちゃうんです。自分が一生懸命考えた企画を、その振り屋にはじかれるのが嫌だったから、2年目から自社工場を取得しました。でも当時はまだ赤字の状態だったから、赤字に赤字を重ねる状態ですね。いま考えると「なんでそんなことしたのかな」とも思うんだけど、結果的に自社工場を持てたのはブランドにとって良かったと思います。
――自社工場を持って良かった点とは、具体的にはどんなことでしょうか?
後藤氏 まずは自分たちが作りたいものを、好きなように作ることができることですね。普通に工場に外注すると何ヶ月もかかってしまうことでも、自社工場なら1ヶ月もあればできてしまうんです。たとえば〈レミ レリーフ〉のスウェットにしても、化学薬品を使わずに8時間ぐらいかけて本当に着込んだのと同じ自然なヴィンテージ加工を施しているんですが、それと同じことを「時間あたりいくら」という計算で動いている外注の工場でやろうとしたら工賃がメチャクチャ高くなってしまうんです。それに自社工場で作れば真似されることもないですし…。まあ真似しようと思っても僕たちはもうそんなんことを10年もやっているので、その10年分のデータの蓄積があるから負けない自信がありますけど。
――なるほど。確かにそれは真似できないと思います!
後藤氏 2年目に工場を手に入れてからもずっと生産せずに試作ばかりやってデータを取ってましたし、その時のデータをもとに加工用のタイコを特注したりと設備も改良していますので、他の工場で同じことをするのは不可能だと思います。今はセレクトショップさんも自社のブランドを持ってて、販売店でありながら30年以上のキャリアを持ったメーカーでもあるわけです。極端な話、ショップで売れているアイテムがあれば、付き合いのある工場で更にアップデートしたものを作ることができるノウハウがある。それに規模や販売面でセレクトショップさんのほうがずっと力を持っているんです。自社工場でしかできないモノ作りを続ける意味は、そこにあります。
――これからデザイナーを目指す若手にとっても参考になる話だと思います。最後にお伺いしたいのですが、次の10年の展開などは考えていますか?
後藤氏 いま〈レミ レリーフ〉を買ってくれているお客さんは20代から30代が中心です。現状では、僕自身の年齢よりも若い人たちに向けてアイテムを作っているのですが、〈レミ レリーフ〉をスタートしてから10年経ちました。ブランド創設時から買ってくれている方などは、10歳年を取っているわけです。当然僕も10歳年齢を重ねているわけで。なので、ざっくり“これからの目標”くらいに考えている程度なのですが、例えば10年後くらいには、年相応というか、より大人めというか、自分の実年齢に合わせたリアルクローズを展開するブランドを立ち上げてみたいなとは思っていますね。
Profile
後藤 豊(YUTAKA GOTO)
名古屋のアパレル系企業に勤務した後に独立し、間もなく自身のブランド〈レミ レリーフ〉を立ち上げる。デニムの聖地・岡山県の児島に自社工場を構え、徹底的に加工を追求。モノ作りに関するこだわりの姿勢には各方面からの評価も高い。