2018.01.20 Sat UPDATE REGULAR

【エンドケイプ】出汁をでじると読む人生 第八十七回【2000円の牛の人生】


以前この連載でも紹介したマルサンの1960年代模型「乳牛の秘密」の中身を整理していたら、隅っこから小さな厚紙が出てきた。
なんだろうと思い取り上げてみると、なんと当時の店頭値札だった。

-解剖牛 2000円-

正式名称を無視し見た目だけでつけた「解剖牛」というのも安直で当時の店主の性格が窺い知れる。
そしてこの解剖牛の定価が2000円だという事がポイントだ。
1960年代後半の2000円である。
2018年の今でも2000円あればそこそこ立派なプラモが買える値段だ。

 


ちなみに大卒初任給が30000円前後で銭湯は40円前後でラーメンは100円、映画館は600円の時代だ。
そんな時代の2000円。
子供が小遣いでどうにか出来る値段ではない。
その価格だけの迫力は確かにある訳で、写真のようにペットボトルと比較してもその大きさがよく判る。なにせ横の長さが46センチもあるのだ。
おそらく商店街の模型店はひとつ入荷して店先に飾り売れるか売れないかという状況だったと思う。僕の所持しているこの解剖牛もきっと売れずに閉店し、値札を箱にしまったまま整理され流れに流れて2018年に辿り着いたのではなかろうか。
そういうストーリーを想像するとちょっとしたタイムカプセルにも見えてくる。
そんなこの2000円という売れない高価な牛の模型が”売れなかった”故に時間の経過と共に高値で取り引きされるというのも、なかなか面白い話だ。

 

 

PROFILE
エンドケイプ
《りゅうちぇる》×《カネボウ化粧品suisai》コラボソング『TRUE TRUE』やジョジョの奇妙な冒険ダイヤモンドは砕けない3期オープニング『Great Days』等の作詞家でクリエイター
TV出演「笑っていいとも」「めざましテレビ」「モーニングバード!」「スッキリ!!」「Nスタ」「月曜から夜ふかし」他多数
Twitter https://twitter.com/endcape
Blog  http://lineblog.me/endcape/

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