3月21日に、これまでの客演曲を中心に収録したコラボレーションベストアルバム『ベストカタリスト -Collaboration Best Album-』をリリースしたSKY-HI。2005年AAAのメンバーとしてデビューした頃からMCバトルやクラブに出入りし、後にソロデビューを果たした彼に、バトルに出ていた時代を振り返ってもらった。
コラボレーションベストアルバムと開催中のツアーについて語ったSKY-HIインタビュー前編はこちら
――ソロデビューの以前は、レーベル非公認でMCバトルに出場していた時期もあったそうですね。「戦極 MCBATTLE」主催のMC正社員さんが、その頃の日高さんにネット経由で連絡を取ってバトルに出てもらった……という話をしていました。
SKY-HI(以下略)「MC正社員akaウニカリーね。mixiで連絡してきたんですよ(笑)」
――2009年のMCバトルでは、崇勲(『UMB2015 GRAND CHAMPIONSHIP FINAL』などで優勝経験を持つラッパー)と対戦していたという話も聞きました。
「そうそう。俺、昔のバトルは誰といつ戦ったのか忘れてることが多いんですけど、そのバトルはすっげー覚えてますね。たしかベスト4で崇勲に当たったんじゃないかな。崇勲は俺のことをひたすら褒めてきて、なすすべもなく負けたんですよ」
――バトルなのにディスってこないんですね(笑)。
「着ている服を褒めたりとか、あの手この手で褒め続けて勝つ……っていうね(笑)。相手の着ている服とかをディスるのは、バトルではよくある手段で、2005~6年の頃はKREVAさんがよくやっていたんだけど、2010年頃はそれも古くなっている時代で。そんな時期に崇勲は、ものすごい圧で服を褒めてきて、『どこで買ったの!それ!』とか言ってくるんですよ(笑)。しかも俺に勝ったあとの決勝でも俺の話をしてて。意味わかんないでしょ?」
――客席もバカ受けしそうですね。
「最終的に大熱狂でしたね。当時は『客席』っていっても、見ているのはほぼ出場者だけ。その日のバトルもエントリーが32人で、お客さんは出演者も入れて50人くらいだったんじゃないかな」
――出演者がほぼ客席に移っただけという。
「そうそうそう。だから負けた直後のヤツとかは、もうロクに判定する気もなくて。そういう現場をくぐり抜けてきましたね(笑)」
――今はMCバトルもブームと言われていて、ネット上にバトルの動画も山ほど転がっていますけど、当時はMCバトルに出ているラッパーも知る人ぞ知る存在だったんでしょうね。
「そうですけど、逆に人数が少なかったことで、口コミの広がるスピードは早かったですね。50人くらいしか出てないバトルをきっかけに、また別のイベントにも次々と呼ばれて。それでUMB(MCバトルの大会『ULTIMATE MC BATTLE』)の東京予選にも普通にエントリーして、という感じでした。あと、当時のMCバトルは今とは雰囲気がかなり違いました。今は『バトルが強い人が勝つ』というのが普通というか、それが当たり前なんですけど、当時はラップが上手くてカッコいい人が勝つ感じだったんです」
――勝敗の基準も違ったわけですね。
「そうでしたね。BESさんとかNORIKIYOさんはラップのカッコよさで優勝していた感じでした。BESさんは、バトルで相手が『雰囲気だけのヤツ お前もメッキ剥がれてる』みたいなことを言ってきたら、『君ちょっとスタートから間違ってる 俺にメッキ ハナからからないし haa?』みたいに返すんだけど、その『haa?』がクソかっこよくて。それで会場が湧く……みたいな感じでした。だから俺も当時は『バトルに勝ちたい』というより、カッコよくラップして『こいつヤバいな』って思われたくて、大会に出てました。あと東京のシーンは、上に行けば行くほど知っている人しかいなくなっちゃったんですよね」
――同じような相手と戦うことになるわけですね。
「うん。ベスト8くらいからは、対戦相手がだいたい友達だったから、ディスることもなくて。そうやってバトルに出ているあいだに、それなりに名前が売れてきて、FLOATIN’LABっていう企画(SKY-HIが毎月様々なビート・メイカー/ ラッパーたちと組んで楽曲を制作するプロジェクト)をスタートしたときには、賛同してくれる人も出てきました。そっちに居場所ができたこともあって、バトルのシーンからは徐々に離れていきましたね」」
――MCバトルに出ていた時期は「アイドルがラップしやがって」みたいなディスを受けることもあったそうですね。
「そういう声が出てきたのは、バトルに出ていた最後のほうの時期ですね。最初の頃は、誰も俺のことも知らなかったし、AAAもそこまで知られていなかったですから」
――じゃあ名前が知られるようになってから、そういうディスを受けるようになったと。
「そうですね。たしか2009年のUMBだったかな。何十回も渋谷のFAMILYとかで会ったことのあったラッパーに、バトルで突然そういうディスられ方をしたんです。しかもそいつは、内輪の暴露的っぽくそういうことを言うだけで、そのバトルでロクにラップもしなかった。それなのに放送事故的な感じで会場が湧いちゃって、すげえ腹が立ったのを覚えてます」
――その試合には負けたんですか?
「負けたんですよ。ただ、そのバトルを見ていた般若さんが『勝ったのは絶対お前だ』と言ってくれて。そこから般若さんとの交流もスタートしたから、プラスのこともあったんですよね。あとさっきも言ったように、当時のバトルは勝ち負けよりもカッコよさを競ってたから、いい形で負けたり、疑惑の判定みたいな形で負けたりするほうが、勝つよりも名前が売れたんですよ(笑)。でもそのバトル以降は、やっぱり口コミでそういう話が広まって、色んなバトルでヤジられるようになりました。「アイドル死ね!」とか言われながらラップする……っていう大変な状況ですよ(笑)。2009年、10年あたりの時期には、あらゆる種類の罵声と罵倒を浴びましたし、『死ね』とか『殺すぞ』とか言われるのはその時期に慣れました」
――そこで度胸がついたと。
「実際に殺されないですからね。今も俺に変なことを言ってくる人もいますけど、面と向かって『死ね』って言われる体験はそうないので、今は何を言われても気にならないんですよね」
――それだけキツい体験をしてきたわけですね。
「当時はアドレナリンが出まくった状態でバトルに出ていましたから、キツいとも思わなかったですね。あと、そのおかげで『もっと頑張ろう』と思ったし、『ラップもさらに上達しなきゃ』と思うようになった。オープンマイクや客演でファストラップ(早口のラップ)を見せることは今も多いですけど、あれは『分かりやすくスキルを見せられる』という効果もあるからなんですよ。個人的には、素人目には分からないスキルを持ったラッパーも好きなんですけどね。だからバトルで罵声を浴びた経験で、俺は精神だけじゃなくて技術も鍛えられた。結果的に、いいことばっかだったなと思ってます」
Catalyst (触媒) = 語リスト= SKY-HIがMICで引き起こす未知なる科学融合反応。SKY-HIがジャンルの垣根を越えて様々なアーティストとコラボレーションを行ない、創り上げられた楽曲と、自身のバンドTHE SUPER FLYERS、ぼくのりりっくのぼうよみ、尾崎裕哉&トラックメーカーKERENMIを迎え新たに制作されたコラボレーション楽曲3曲をコンパイルしたCollaboration Best Album!
<商品形態>
・mu-moショップ / AAA Party / AAA mobile専売商品 <初回生産限定>
CD+DVD(スマプラ対応) / 5,800円(+TAX) / AVC1-93847/B
CD+Blu-ray(スマプラ対応) / 5,800円(+TAX) / AVC1-93848/B
三方背ケース仕様 /ミニ写真集(4C / 52P) / 特製ステッカー付
・CD+DVD(スマプラ対応) / 5,500円(+TAX) / AVCD-93844/B
CD+Blu-ray(スマプラ対応) / 5,500円(+TAX) / AVCD-93845/B
初回盤:JKTサイズステッカー封入
・CD(スマプラ対応) / 2,800円(+TAX) AVCD-93846
初回盤:JKTサイズステッカー封入
Text:SEIICHIRO FURUSAWA