1997年にスタートしてから、すでに21年。「世界で最もクリーンなフェス」と呼ばれ、「ここに出ることがステータス」と語る海外のミュージシャンも多くいる、フジロックフェスティバル。今年も7月27日から3日間、新潟県湯沢町・苗場スキー場にて開催される。毎回、人々の記憶に残るステージが繰り広げられているが、今回は確実に伝説を刻みそうなアクトが多発の予感! その見どころを、いくつかのカテゴリーに分けて紹介しよう。チケットは、早めにソールドアウトになる可能性大。早めに入手しておきたい。
今年のフジロックにおいて、最も話題を読んでいるのが7月29日にヘッドライナーとして出演する、ボブ・ディランだ。これまでフジロッカーの多くから熱望され、22回目にしてようやく念願叶って出演が決定。しかも、彼にとって初来日公演から40周年、さらに通算101回目の日本公演、そしてノーベル文学賞受賞後初となる日本におけるパフォーマンスという、さまざまな「メモリアル」な出来事が重なっている、今回のフジ。ゆえに、国内外から多くのファンが押し寄せてくることになりそうだ。すると「ボブ・ディランの音楽の良さを知らないと、ステージを観てはいけないのでは?」と尻込みをする人もいるはず。だが、そういう人にも、心を震わせる何かを与えてくれる瞬間があるのだ。さりげなくギターを弾きながら、我々に語りかけるように歌ってくれるディラン。決して歌詞の意味を深く知ることができなくても、ふとしたフレーズに「音楽を好きでいることの喜び」や「色々あるけど人生はまんざらでもない」という思いが沸き上がってくるだろう。
また、ディランの出演もあってか、今年は言葉(メッセージ)に注目したいミュージシャンの出演が目立つ。1日目に出演するシンセ・ポップ・バンドのイヤーズ&イヤーズ、ダンス・バンドのチューン・ヤーズは、独自の音楽世界を放ちながらも、社会に対する思いを彼らなりの視点で描いていて、「こういう考えもある」ということを知らせてくれる。2日目のヘッドライナーを務めるケンドリック・ラマーも、先日ピューリッツァー賞の音楽部門を獲得したそのメッセージ力を体感してみたい。3日目に出演するジャック・ジョンソンは、サーフィンを通じて感じた自然や人間との向き合い方を提示。また同じ日に登場する平井 大も、シンプルに生きることが人生を豊かにすることをアコースティックギターを通じ伝える。
今年は、さまざまな考えやメッセージを知り、そして人生の新たな旅が始められる、そんな出会いが待ち受けているのかもしれない。
こちらはGREEN STAGE昨年の様子。約4万人を収容できるメインステージだ。
今年のフジロックにおいて、大きく騒がれたのがヘッドライナーのラインナップ。ボブ・ディランは、多くのフジロッカーが待ちわびた存在ではあったが、他の2日間はN.E.R.D、ケンドリック・ラマーというR&B/ヒップホップ勢がステージを飾ることになったのだ。以前もエミネムが登場したが、毎年英国(ヨーロッパ)のロック・バンドやミュージシャンが必ずトリを飾るのが恒例だったゆえ、「これはロック・フェスティバルなのか?」という疑問の声も上がっていたのだ。
しかし、海外のフェスに目を向けると、今やヘッドライナーがR&Bやヒップホップ勢で占められるのは当たり前の状況。また、観客もロック・バンドよりも、そういったタイプのステージに観客が多く吸い寄せられているのが現実。今年のフジロックは、世界基準にあうラインナップにしたという印象である。だが、これら二組は、決して「ロック」を否定している訳ではない。「バンド」形式でパフォーマンスをすることも多く、そこにはロック・バンドを凌駕するほどの熱いエモーションが伝わってくる。表現方法は異なるが、根底には「ロック」の血が流れていることに気づくはずだ。
この2組のほかにも、1日目に登場する、現在最も勢いがあるラッパーのひとりと呼ばれ最新アルバム『ビアボングス&ベントレーズ』が全米チャート1位を独走中のポスト・マローン、そして3日目に登場する現在のクラシカルでオーガニックな雰囲気漂うR&Bやヒップホップのムーブメントを作った立役者的存在であるアンダーソン・パークなども「ロック」なスピリットを、独自の解釈で表現しているようなミュージシャン。これらで「壁」を超えたその先の感動と興奮を味わってみよう。
↑N.E.R.D
↑ケンドリック・ラマー
どんなに体力が有り余っていたとしても、苗場の自然を相手にした3日間、常にハイテンションでいられるのは、かなり困難。時には、ブランケットのような柔らかい音楽に包まれて、贅沢な時間を過ごしたくなる。そんな時に、立ち止まってふと聴きたくなるアクトも豊富に揃っているのが、フジロックの特徴。
1日目は、ディジュリドゥを駆使した民族的なサウンドが印象的なGOMA & The Jungle Rhythm Sectionや、ハナレグミ。またカナダ出身のマック・デマルコなど、ピースな人柄がうかがえるステージで、心を潤わせたい。
2日目は、今年で結成20周年を迎えたハンバート ハンバートや、NYブルックリン出身のインディー・バンド、MGMTの浮遊感のあるサウンドも、肩の力を抜かせてくれるにはうってつけのステージかも。
そして最終日には、ボブ・ディランにジャック・ジョンソンという、アコースティック界の真打的存在のシンガーソングライターはもちろんのこと、グラミー受賞経験もある実力派のケイシー・マスグレイヴス、平井大などのナチュラル系や、ceroやチャーチズ(Voのキュートなルックスに心奪われるはず!)といったシティ感のある和める系サウンドのバンドも出演。2019年のフジロックまで耐えられるエネルギーをここで充填しておこう。
約5千人を収容できる大型テントステージ、RED MARQUEEにはマック•デマルコ、MGMT、シャムキャッツなどが登場!
例年以上にジャンルレスになっている、今回のフジロック。だが、「ロック」と付くからには、本格的なバンド・サウンドを聴きながら、ビールでひと盛り上がりしたくなる瞬間もあるはず。もちろん、そんな気分な時にもぴったりくる顔ぶれもきちんと揃えている。
1日目で、要チェックなのが、アルバート・ハモンド・ジュニアだ。21世紀を代表するガレージ・ロック・バンド、ザ・ストロークスのギタリストとしても活躍する彼が、ソロ名義で初の日本ロックフェスへの出演となる。最新アルバム『Francis Trouble』では、疾走感がありながらも胸に突き刺さるようなメロディが大評判。ステージでは、アルバムの収録曲を中心に、歯切れがよくかつスマートなバンド・サウンドで、フジロックの幕開けのテンションをさらに高めてくれること間違いなしだ。また、デビュー31周年を迎え意外にも初出演となるエレファントカシマシ、地元・新潟から登場するMy Hair is Badなどにも注目したい。
2日目に注目なのが、フー・ファイターズのデイヴ・グロールをはじめ、ロック・ミュージシャンが「今最も注目するバンド」というスタークローラーが見逃せない。フロントウーマンであるアロウ・デ・ワイルドのワイルドでアンニュイな魅力、そしてほぼティーンエイジャーで占めるメンバーのエネルギーに圧倒されるはずだ。またミクスチャー・ロック界のレジェンドであるフィッシュボーン、日本のeastern youthやThe Birthdayといった百戦錬磨のバンド勢のエモーショナルでいぶし銀なステージも、ビールやお酒をついつい飲んでしまうほど、アドレナリンが放出されるはずだ。
最終日は、ヴァンパイア・ウィークエンドやSuchmos、ceroといったアーバンな雰囲気の漂うバンド勢が目立つ。苗場の空気を吸いながら、グルーヴとお酒に酔いしれたくなる気分にさせるだろう。また、スペイン発の4人組バンドであるハインズや、名古屋発の4人組CHAIと、ガールズ・バンドも登場。彼女たちのフレッシュな魅力に、思わず乾杯したくなるはず。
飲み過ぎには注意して、スペシャルにロックな3日間を楽しんでもらいたい。
周りを林に囲まれた約5千人収容のステージ、フィールド・オブ・ヘヴンにはハナレグミ、GOMA & The Jungle Rhythm Section、ハンバート ハンバート、平井 大などが登場。
http://www.fujirockfestival.com/
入場券 チケット情報
■6月2日(土)より一般発売開始中!
3日通し券 ¥45,000
2日券 ¥36,000
1日券 ¥20,000
※中学生以下無料
保護者同伴に限り「中学生以下入場無料」となります。
<出演>
27日(金):N.E.R.D、サカナクション、ポスト・マローン、My Hair is Bad、マック•デマルコ、ジョン•ホプキンス、石野卓球、ハナレグミほか。
28日(土):ケンドリック・ラマー、スクリレックス、マキシマム ザ ホルモン、フィッシュボーン、MGMT、スーパーオーガニズム、アヴァランチーズ(DJセット)
30日(日):ボブ・ディラン、ヴァンパイア・ウィークエンド、チャーチズ、cero、ダーティー・プロジェクターズ、ハインズ、CHAIほか。
Text:TAKAHISA MATSUNAGA