ベトナムの「TIEN SON COFFEE」である。
パッケージのタヌキっぽいのはおそらくジャコウネコ。
最近都内でも多く出没するハクビシンもジャコウネコ科である。
このジャコウネコのウンチから採れる未消化のコーヒー豆から出来たコーヒーがいわゆるコピ・ルアクと呼ばれるものである。
せっかくなのできちんと飲みたい。
と、いう訳でこのためだけに大阪からコーヒーマスターのみのやん氏が来てくれた。
実に頼もしい。
だが、彼が新幹線に乗ってここへ向かっている途中で重大な事実が発覚していた。
現在本物のコピ・ルアクは高値で入手困難、そのため人為的に豆を発酵させたものが販売されているそうだ。
要するにパッケージのジャコウネコはイメージである。でもそんな真実をいまさら伝えるなんて僕には出来ない。
だって、はりきって大阪から来ているのだから。
「これが噂のコピ・ルアクか」と彼は呟いた。
「そうかもしれないし、違うかもしれない」と僕は村上春樹氏風にぼんやり答えた。
そんなみのやん氏が丁寧にいれてくれたコピ・ルアク(人為的)を飲んでみる。
これはコーヒーなのか?と思うほどチョコレイトの風味が強くクセがある(人為的)。
「ジャコウネコの消化酵素でここまで風味が変わるとは」とみのやん氏。
「そうかもしれないし、違うかもしれない」と僕。
晴れた日の昼下がり、僕らはこの人為的なジャコウネコのウンチコーヒーを飲みながら遠いベトナムの地を想ったのである。
みのやん氏が新幹線に乗ってまで飲みに来たコピ・ルアクが人為的なものだと気付くのはこのコラムを読んだ時である。