2017.11.29 Wed UPDATE CULTURE

俳優は“人に非ず”!?
映画『光』が公開中の「瑛太」ロングインタビュー!

このところ、瑛太の活躍が目覚ましい。連続ドラマ『ハロー張りネズミ』終了から間もなく映画『リングサイド・ストーリー』『ミックス。』が立て続けに公開。11月25日には、最新作『光』も公開された。デビュー以来、もっとも過密と言える日程の中、すべて主演ないしは重要な役どころ(なおかつ振り幅の大きな役)を演じるには、相当な準備と覚悟を要したことは想像に難くないが、当の本人は「忙しいといえば忙しかったですけど…」と、例によって(?)どこ吹く風といった涼し気な表情。しかし、その裏には、次なるフェーズへ向かうための確たる決意があった。

 

――大根 仁監督がゴールデン・プライム帯のドラマで初めて脚本・演出を務めた『ハロー張りネズミ』が終了するや、日本アカデミー賞ほか各賞を総なめにした『百円の恋』の武 正晴監督の『リングサイド・ストーリー』、そして脚本家・古沢良太さんのオリジナル作品『ミックス。』、大森立嗣監督の最新作『光』が立て続けに公開。さぞかしお忙しい一年だったと思います。

忙しいといえば忙しかったですけど…楽しい位置年、楽しめた一年でしたね。

――ドラマ好き、映画好きならば心躍る面々からのお誘い。どんなに忙しくても思わず手を挙げてしまいますよね。

(笑)。そういう(オファーがある)なかで僕に求められているものが何かあるとすれば、そこは自分でも大事にしていきたいですし、だからこそ、それ以上のところに到達して…やらせてもらうからには「何か爪痕を残したい」という思いでやっていました。ただ、そういう思いもありながら、最近はどこかで“抜いている”――上手く力を抜くことも身に着けられて。特に『光』なんかは重たい題材の作品だったんですけど、撮影中は心身ともに好調だったんですよ。

――心身ともにと言いますと?

『ミックス。』の卓球(ドラマ『最高の離婚』)に、ボクシング(ドラマ『ラッキーセブン』などで格闘技を)、『リングサイド・ストーリー』のプロレス(ドラマ『まほろ駅前多田便利軒』)…と、これまでの俳優人生において重要な作品に出てきたキーワードが一度にドドッとやってきて。神様がいるのであれば「身体を動かせよ」と言われている気もしましたし、実際に身体を動かしてみると気持ちがよくて、それとともに精神的にも調子が上がっていったというか。

――『光』は『まほろ駅前』シリーズや『舟を編む』などで知られる直木賞作家・三浦しをんさんの同名小説を井浦 新さん、長谷川京子さん、橋本マナミさんら、実力派の俳優陣を迎えて実写映画化した、ディープかつハードな作品。撮影は『リングサイド・ストーリー』『光』『ミックス。』の順番ですが、その撮り順もよかったのかもしれない。

そうですね。心身が好調といっても役柄的にはかなりしんどかったですが(笑)、これは俳優として次の段階に行くタイミングなのかな…と思ったので、なんとか上を目指してみようと。

――最低な人間ばかり出てくる物語のなかでも輪をかけて最低だったのが平田 満さん演じる輔(瑛太)の父親。人間の業の深さ、愛憎が胸に迫り、観ている方もしんどかったです。

平田さんは『ハロー張りねずみ』でも共演させてもらっていて、今(撮影中のNHK大河ドラマ)『西郷どん』でも僕(が演じる大久保利通)の父親役。監督の大根 仁さん、大森さんは以前、同じ三浦しをんさん原作の映画とドラマでご一緒しましたし、武さんは『嫌われ松子の一生』(’06年)の時に助監督をされていました。来年公開される『友罪』の瀬々敬久監督は『64‐ロクヨン‐』でもお世話になっていたり、(『友罪』でW主演となる生田)斗真も、今回で三度目の共演ですしね。次の大河のスタッフさんも『篤姫』で気心の知れた人が多い。そう考えるとデビューして(16年間で)ようやく一周したんだなと思いますし、そういうさまざまなご縁があって自分がいるんだなと、出会いの大切さに改めて感謝するようにもなりました。

――本誌『メンズジョーカー』のインタビューでは「一番は作品を観てくれた人たちの反応。歳のせいかな? 『すごかったです』とか『感動しました』という言葉が本当に、身に染みるようになってきて」とも。

作品への思いは変わらないのですが、より多くの人に観てもらいたいという気持ちは、年々強くなってきましたね。とりわけ今回の『リングサイド・ストーリー』と『ミックス。』『光』は、奇跡的に同じタイミングで、いろんな姿を観てもらえる3本が揃った。スケジュールなど、いろんな部分で厳しくはありましたが「もう、やるしかないだろう」って。

――『リングサイド・ストーリー』『ミックス。』の舞台挨拶では普段より饒舌に見えましたが、それも「観てほしい」との思いから?

自分が出演する作品には自信を持っていますからね。ひとりでも多くの人に観てほしいと思っています。僕らが直接、街に出て「観てください」って叫んでもいいんですよ。でも、メディアのみなさんの力を借りて作品を広げていただいた方がより多くの人に届く。だったら「何でもやりますよ」と。

――Twitterでは、坂元裕二さんの脚本で話題を呼んだドラマ『カルテット』について熱心につぶやかれるなど、ご自身の出演作以外でも、いい作品は「広げていこう」との思いを感じます。

そうですね。いい作品は、より多くの人に観てほしいですし、いい監督さん、脚本家さんには「もう一度、使ってほしい」という思いもあります。

――出演を熱望されていたのは、ちょっと悔しいとの思いもあったり?

それはまあ(笑)…正直、心身ともに好調とはいえ落ちる時もあれば気分が滅入る時もあるんです。でも「もうがんばんなくていいんだよ」と、ささやく自分もいて。“がんばんない”というのは、自分のペースで好きに仕事をして、楽しめばいいという意味で。それでも、ついついがんばっちゃう。監督や脚本家の人が「なんだ!? 俺がイメージしていた役と違うじゃないか」と思うような…求められているものを超えたくなっちゃうんです。だから、つぶやいちゃったっていうのはありますね(笑)

――(笑)。それは『光』でも?

『光』にしても立さん(大森監督)とは『まほろ駅前シリーズ』で気心が知れているぶん、「超えてやる」っていう思いが強かったです。僕が演じた輔は、(井浦)新さん演じる信之に対して幼いころからものすごく執着している役で。どうやったら新さんの心や肉体を動かせるのか、カメラが回っているところ以外でも観察して、チャレンジしました。大森監督はよく『心でやってくれ』って言うんですが、人間ですから、どこかで理性が働いてしまう。そこをいかに排除していくか――。最終的なジャッジは監督に委ねますけど、人間の感情や本来持っている要素を無限に広げていくことが俳優の仕事だとするなら、『光』も『リングサイド・ストーリー』も『ミックス。』もわりと上手くできたかな、楽しめたかなと。

――もちろん作品によってそれぞれでしょうけど、冒頭からおっしゃっている監督や脚本家が瑛太さんに「求めている」ものは何だと思いますか?

同世代の俳優も若い俳優もチャレンジングだし、ボーダレスになっているじゃないですか? ひとりの俳優を観に来るではなく、だんだんと作品を観にくるお客さんも増えている。そういうなかで僕も、常に概念を弾き飛ばしたい、イメージを超えたいと思っているし、いろいろなことにチャレンジしていける俳優でありたいと思っていて…何か求められるものがあるのなら“そこ”なんじゃないかなと。

――『リングサイド・ストーリー』で演じたヒデオは「俳優は“人に非ず”って書くんだよ」と。いい悪いは別として、そういう強い覚悟が必要なんでしょうね。

道徳観とかそういうことを完全に無視しちゃって、崖から飛び降りるような勇気、覚悟で生きていくというか。やっぱり予定調和じゃつまらないですしね。やるからには、ただのお仕事にはしたくない。チャレンジし続けたいという思いを改めてヒデオを演じる際に感じて、原点回帰できました。まあ…若いころとは違って今は家庭がありますからね。そこはいいバランスでやってければと思っていますけど(笑)。

――「原点回帰」して、「俳優として次の段階に行くタイミングなのかな」と思える作品に出会い、ひと周りした瑛太さんの次なるチャレンジが楽しみです。

今は大河ドラマで精一杯なんですけど、ほど良く負荷をかけながら、いい出会いを続けて、いろいろなことにチャレンジしていければいいと思っています。あとは…苦しみを楽しみに変えること。(趣味である)写真じゃないですけど、発見を繰り返しながら新しい景色が見られれば。で、大河が終わったら…ちょっと、のんびりしたいかな。気持ち的には覚悟を持ってやっていますけど、本当に「俳優は“人に非ず”」になっちゃうのは一家の長としてはマズいんで(笑)

 

◆映画『光』

(C)三浦しをん/集英社・(C)2017「光」製作委員会

監督・脚本:大森立嗣
原作:三浦しをん
出演:井浦 新、瑛太、長谷川京子、橋本マナミほか
新宿武蔵野館、有楽町スバル座ほかで全国公開中!

 

Interview&Text:TATSUNORI HASHIMOTO
Photo:JUNJI HATA
Styling:KEITA IZUKA
Hair&Make:KENICHI[eight peace]

 

 

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