2018.05.23 Wed UPDATE CULTURE

祝・カンヌ映画祭パルムドール!監督・是枝裕和があの話題作を語る

去る5月20日未明、フランス・カンヌから素晴らしいニュースが飛び込んできた。映画監督・是枝裕和氏の最新作『万引き家族』が、第71回カンヌ国際映画祭において、最高賞であるパルムドールを受賞したのだ。本誌Men’s JOKERでは6月号において是枝監督のインタビューを掲載していた。あの話題作について語ったそのインタビューを、Men’s JOKER PREMIUMにおいても紹介する!

 

“10年くらい考えてきたことを全部この作品に込めようと”

『そして父になる』でカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞し、その後も 『海街diary』や『海よりもまだ深く』『三度目の殺人』と話題作を精力的に発表し続ける是枝裕和監督。最新作は『万引き家族』。親の死亡届を出さずに、年金を不正にも らい続けていたある家族の、実際にあった事件をもとに、監督が「この10年間考え続けてきたことを全部込めた」と語る、渾身の一作だ。

「きっかけは、年金詐欺のニュースです。『死んだと思いたくなかった』という傍から見れば嘘でしかない家族の言い訳の背景に何があるのか想像したくなって。血のつながりとは何か。社会とは、正しさとは…10年くらい自分なりに考えてきたことを全部この作品に込めようと」

そして「万引き」。監督のファンならば思わずにやりとするシーンのひとつがタイトルとなっている。「好きなんです、万引き(笑)。今回で3度目になりますが(『誰も知らない』ほか)、年金詐欺と、この万引きをどうにか絡められないかなと」子供を置き去りにした母に代わり、弟妹の世話をする長男の姿を描いた『誰も知らない』。取り違えられた子供を巡り究極の選択を迫られる2つの家族を映した『そして父になる』。海の見える街に暮らす4姉妹が織り成す家族の絆を描いた『海街diary』など、さまざまな“家族のかたち”を追い続けてきた監督だが、タイトルに「家族」と付けたのは、実は今回が初めてとなる。「最初は『家族』って入れたくなかったんですよ。いわゆる “家族もの” と誤解されそうだと思って。でも英 語タイトルが決まり、ふと出来上がっていたポスター写真を見たら、これでいいなと。また“万引きする”家族、“万引きされた”家族という二重の意味も込められてよかった。 そこは映画を観れば分かってもらえるんじゃないかと思います」

〜撮りながら自分が描きたい物語の軸が見つかることもあれば、役者に引っ張られて当初とは違うところへ向かうこともあって。今回は、主に後者〜

物語の舞台は、東京の下町。罪を犯しながらも互いを慈しんでひっそりと生きる家族の愛情と焦燥を収めている。息子と協力して万引きを重ねる父・治をリリー・フランキー、その妻・信代を安藤サクラ、彼女の妹・亜紀を松岡茉優、家族の“定収 入”として年金を当てにされる祖母の初枝を樹木希林が演じた。「撮りながら自分が描きたい物語の軸が見つかることもあれば、役者に引っ張られて当初とは違うところへ向かうこともあって。今回は、主に後者。とりわけ、初めてご一緒した安藤さん。『そして父になる』で描いた“子供を産んだら母性を持てるのか…?”とは逆の問いかけをしたのですが、彼女の存在が大きかった。曲に例えると、僕が家族を描く上で違うメロディは作れても歌声は同じなんじゃないか…。そう思ったことも あったんですけど、演奏するのは役者なんだなと改めて思いましたね」

加えて、カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞し、監督の名を広く世に知らしめた『誰も知らない』から 『三度目の殺人』まで一貫している “父親不在”の物語でもある。「後半は、息子・祥太(城 桧吏) の父親への違和感にスポットを当てて いきました。もしかして社会的にダメな人なのかもしれない、今まで教わったことは間違いだったのかもしれないと、冷静に父親のことを見るようになる。それって男の子にとって、大きな転換点じゃないですか?きっと皆さんにもそういう時期があったと思うんですよね」

〜今はピンとこなくても自分が家族を持った時、もしくは亡くした時にもう一度観ていただけたらうれしいです〜

描かれているのは、罪を犯す特殊な家族だが、誰にでも思い当たるエピソードが散りばめられている。「そういう意味では普遍的な物語になったと思います。30歳くらいの読者の方にはピンとこない部分もあるかもしれないけど。僕自身、30代のころは家族なんて面倒くさくてしょうがなかったから(笑)」

結末に関係するため、多くは語れないが、やがて父になり、母になり、娘に、息子になる。家族それぞれの巣立ちの物語とも言えるだろう。「家族の中で家族を描くことは『海よりもまだ深く』で一度決着しているので、今回はむしろ再び社会のほ うへ視野を開いて、その中に家族を置いてみようと。だから“集大成”とも違う…“真骨頂”(笑)。今はピンとこなくても自分が家族を持った時、 もしくは亡くした時にもう一度観ていただけたらうれしいです。で、何かしら前とは違う感想を持ってもらえたら、それで十分ですね」

取材後、フランス・カンヌで開催される第71回カンヌ国際映画祭(5月8〜19日開催)の最高賞であるパルムドールを競うコンペティション部門に正式出品されることが明らかになった。“真骨頂”となる本作が、今回はどんな評価を得るのか。発表の時を楽しみに待ちたい。

 

『万引き家族』


家族を描き続けた是枝裕和監督が“家族を超えた絆”を描いた最新作。舞台は、東京の下町。犯罪で生計を立てている貧しい一家。ある日、父・治と息子・祥太は万引きの帰り道、団地の外で凍える幼い女の子を見つけ、連れて帰る。体中の傷から境遇を察した妻・信代は、家族として受け入れるが…。
監督・脚本:是枝裕和、出演:リリ ー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林ほか。6月8日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
©2018『万引き家族』製作委員会

 

PROFILE
是枝裕和
1962年6月6日生まれ。東京都出身。早稲田大学卒業後、テレビマンユニオンに参加。’14年に独 立し制作者集団「分福」を立ち上げる。’95年『幻の光』で監督デ ビューし、ヴェネツィア国際映画祭で金のオゼッラ賞を受賞。近作はカンヌ国際映画祭審査員賞ほか数々の賞に輝いた『そして父になる』や『海街diary』『海よりもまだ深く』『三度目の殺人』など。

Photo: TEPPEI HOSHIDA
Text: TATSUNORI HASHIMOTO

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