メロコアなどの影響を受けたストレートにカッコいい楽曲・演奏と、拠点とする街・大阪ならではのボケが満載の歌詞&MVで、若い世代を中心に人気急上昇中のバンド・ヤバイTシャツ屋さん。今回は最新シングル『どうぶつえんツアー』収録の楽曲『ヤバみ』について、その歌詞の裏側や、ものすごいボケがかまされるMVの制作秘話について聞いた。
――メジャー初のシングル『どうぶつえんツアー』のリード曲『ヤバみ』を聴かせていただいたんですが、今回も曲は圧倒的にカッコよくて、ミュージックビデオは面白かったです!
こやま いろんなところで注目してもらっている……と言われている中で出すシングルだったので、今回は少しプレッシャーがあって。でも完成してみたら、今しか出せへん作品というか、すごく納得がいく自信作になりました。こういう作品を、このタイミングで出せるのは、すごいいいことやなって思います。
――今のタイミングがいいというのは、特にどのような部分が?
こやま まずタイトルの「ヤバみ」が賞味期限のある若者言葉で、今出しとかへんと何のこっちゃ分からなくなる言葉やと思うんです。あと今回の歌詞は、今までの曲と比べて比較的マジメな部分もあったりするんですけど、そういう歌詞の曲を、活動をはじめて何年も経ってから出したら、ちょっと寒いなと。これをメジャー一発目のシングルで出したことで、「もうヤバTは何やってもいいんやぞ」と示せたのかなと思ってます。
――しばたさんはいかがですか。
しばた 今回は全然ジャンルの違う3曲が集まったシングルで、でも通して聴いたときにスッと自然に入ってくる。そこがすごくいいなと思いました。あと演奏面も、前のアルバムの頃よりも各々のパートがカッコよくなってるんじゃないかなと。どれも聴いている人がコピーしやすい感じの曲だと思います。
――ヤバTの曲をコピーしている人がいるという声はよく聞きますか?
しばた うれしいことですね、結構聞きますね。特に高校生や大学生の人がコピーしてくれているみたいです。
――やっぱりヤバTは歌詞が笑えて面白いし、曲はカッコいいので、そこが刺さるんだと思います。
しばた あと、絶妙にマネできる範囲の演奏……っていうのもあるかもしれないです。難しい構成はあまりしていないですからね。
――もりもとさんは、今回のシングルが完成した感想は?
もりもと 今回はこやまさんがプレッシャーを感じてるのが僕にも伝わってきて、曲が上がってくるのもギリギリだったんですけど、結果的にメジャーに切り込んでいくような凄くいい作品ができたなと思います。『ヤバみ』の歌詞も、曲のラインナップも含めて、凄く攻めてるシングルだなと。
――今回のミュージックビデオはビーチが舞台ですけど、場所は沖縄ですか?
もりもと 久米島の「はての浜」って場所ですね。
――この前の『あつまれ!パーティーピーポー』のメジャー版MVでは、あれ? インディーズ時代の焼き直し? と思わせておいて、実はハリウッドで撮影というスゴい仕掛けをかました映像でしたけど、今回もおもしろ要素を入れてきましたね。
こやま 曲ができた後で、「本当に言いたいもんなんて 本当は伝わらないもんね」という歌詞とリンクさせて、バンドの3人を物凄く引いた絵で撮ったら面白いかな……と思いついて。その伝わらない感が、引いた絵で出せたかなと思います。
――バンドのMVなのに、演奏している3人が豆粒くらいの大きさになってましたからね(笑)。レーベルの人は、沖縄まで行ってこんな悪ふざけをしたMVを撮ってきたことに文句を言ったりしてこないですか?
もりもと 一緒に面白がってます(笑)。
こやま むしろ「コスパいいね」って言われますね。
――久米島まで行っても、お金はそんなにかかってないんですか?
こやま 一発撮りやし、編集も僕がやっているので、費用はほとんど旅費だけですから。参加したのはメンバー3人とレーベルの人、マネージャーさん、カメラのスタッフさん2人、演者1人だけ。スタッフも最低限で済ませてます。これでも『あつまれ!パーティーピーポー』の倍ぐらいにはなりましたね。
――途中から、引いた絵でしか撮影しないドローンのオペレーターに3人が文句を言ってる声が入ってきて、歌が耳に入ってこなくなるのも面白かったです。
こやま ダウンロードして聴こうとしても、歌はまともに聴き取れへんから、新しい違法ダウンロード対策ですよね(笑)。歌と、喋ってる声と、片方ずつ集中して聴くには最低2回は必要やし、PV数も倍になります。
――いいことづくめですね(笑)。喋ってる声を歌に重ねちゃう……というアイディアは、いつ思いついたんですか?
こやま もう最初に決めました。普通に演奏して歌うだけやと印象が弱いし、どんどん引いた絵になっていくボケも伝わりずらいなと思ったので、「あ、自分でツッコめばいいんや」と思って。でも、こんなに喋ってる声が入ったMVってないし、結果的に新しいことできたかなと思います。
――『ヤバみ』は日本語の歌詞の部分にわりとメッセージ性があるので、そのまま歌に集中して聴かれちゃうとストレートに伝わり過ぎちゃう……ということもありそうですもんね。
こやま そうそう。それもありましたね。
――冒頭の英語の歌詞の部分は、何か本当にヤバイ雰囲気のことを歌ってますよね。
こやま 怒る人もいそうですね。
もりもと 俺、ちょっと怒ろうと思ったもん。「マジかよ!」って。
こやま 英語やし、大丈夫かなと思ってました。ユニバーサルの人もちょっと心配してて、いろいろ確認したみたいですけど、「あ、大丈夫でした」って言われました(笑)。
――しばらく歌った後で、「いっぱい英語で歌ってみたけどあんまり意味ないよ」と弁解もしてますからね。ちなみに「あんまり意味ないよ」というのは、英語で歌う日本人のミュージシャンへの批判だったりするんですか?
こやま そういうのは特にないですね。ヤバTのメジャー初のシングルで、Aメロが英語っていうボケをやりたかったのと、僕が好きでずっと聴いてきたdustboxや10-FEETも英語で歌っていたので、自分でも歌ってみたかっただけです(笑)。
――「日本語の乱れがどうたらこうたら言うけど いつの時代でもおんなし ふいんき良ければそれで全然大丈夫だから まじウケんね」という歌詞も、ヤバTが歌うと真面目なのかフザケてるのか、どっちなのか分からないですよね。
こやま もう、好きなように受け取っていただければと思ってます。いろいろな受け取り方ができると思うし、ホンマの意味とかは、雑誌のインタビューとか見たら書いてあったりするし(笑)。
――でも、「偏差値が20ぐらい下がってく音楽で頭空っぽにして 1番のサビで覚えた感じでみんなで一緒に歌ってね」という歌詞については、“何でもいいけど、とりあえず楽しもうぜ!”的なヤバTの姿勢がストレートに出ている歌詞なのかなと思いました。
こやま そうですね。自分たちは意味がないことに肯定的なバンドやと思っています。
――やっぱり常に人がやっていないことをやって行きたい感じですか。
こやま 何かズラしたいというか、真ん中行きたくないというのが大きいんでしょうね。でも、ちょっとずつ小ボケを重ねてきたことで、「ヤバTやから、ま、いっか」って言われるような環境づくりはできた気がしてて。「これ、普通やったら怒られるけど、ヤバTやし、まいっか」みたいなことが結構あるんですよ(笑)。
――MVでは前作でハリウッドで、今回は沖縄でしたけど、こうなると次撮る場所のハードルが上がりますよね。
こやま どうなるんでしょうねえ。また遠くに行くのも楽しいし、そこを裏切ってったらいいだろうし。とにかくMV、レコード会社のお金で旅行に行けるのがいいんですよ(笑)。
■■プロフィール
ヤバイTシャツ屋さん
大阪を拠点に活動する、こやまたくや(Gt.Vo.)、しばたありぼぼ(Ba.Vo.)、もりもりもと(Dr. Cho.)による3人組自称メロコアバンド。2013年に大阪芸術大学在学中に結成。躍動感あふれるパフォーマンスとストーリー性のある歌詞で50代女性をターゲットに活動中。
●初回盤(CD+DVD)
UMCK-9903
¥1,500(税抜)
※デジパック仕様
●通常盤(CDのみ)
UMCK-5623
¥1,100(税抜)
※デジパック仕様
【収録内容】
※初回盤・通常盤ともに共通
1.ヤバみ
2.寝んでもいける
3.肩 have a good day
4.ヤバみ(岡崎体育 remix)
【初回盤DVD収録内容】
●ヤバイTシャツ屋さんのどうぶつえんツアー
Photo:TAKAYUKI MISHIMA/Hair&Make:Storm[P-cott]/Interview:SEIICHIRO FURUSAWA