2018.12.03 Mon UPDATE INTERVIEW

走り続けて20年以上、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの最新アルバム『ホームタウン』完成インタビュー!

結成から20年以上、常に日本のロックの最前線を走り続け、今では世界規模で活躍するアジカンこと、ASIAN KUNG-FU GENERATION。3年半ぶりとなるオリジナル・アルバム『ホームタウン』は、国内外の気鋭ミュージシャンが多数参加し華やかさがありながらも、ロック道を走り続ける彼らの「芯の強さ」がうかがえる仕上がりに。その聴きどころについて、直撃した!

世界を見据えた音作りをするようになった

 

──前作『Wonder Future』(’15年)のリリース以降は、結成20周年を記念し2ndアルバムの再レコーディング盤『ソルファ(2016)』や、ベスト盤『BEST HIT AKG 2 (2012-2018)』の発売。さらに日本はもちろん、世界各地でのツアーなど、なかなか充実した時間でしたね。

後藤 アジカンの活動の他に、僕は別でも忙しくしていたし。改めて面白い経験ができた時間だったなと思いますよ。

喜多 なんだかんだとやることが多かったですね。4人のメンバーのなかで、比較的忙しくない僕でも、いろいろあった気がします(笑)。今回のアルバム制作も、曲作りから完成まで結構時間かかったし。ゴッチ(後藤)が忙しい時は、アレンジの作業をしたりとか。

山田 前作をリリースしてから3年半の活動で思い出すのは、海外でのライヴですね。南米で初めてツアーができたりだとか、そこで得た経験や刺激が、今回のアルバムに確実に反映されている部分があると思います。世界で自分たちの音楽を聴いてくださる人がいるんだ、ということを意識して視野が広がった音が完成したのかなって思いますね。

伊地知 僕も世界中にちゃんと聴いてくださっている人がいるんだという手応えを感じることができた3年半だった。そういう人たちを見据えた作品が出来たような気がします。

──そして完成した最新オリジナル・アルバム『ホームタウン』は、ウィーザーのリヴァース・クオモやフィーダーのグラント・ニコラス、さらにケイティ・ペリー、アヴリル・ラヴィーンなどを手がけてきたブッチ・ウォーカーといった海外ミュージシャン・プロデューサーも参加。より国際色豊かなものになったのでしょうか?

後藤 楽曲制作に関しては、特にそういうことは考えていないですね。ただ、いろいろ視野を広げたいと思って、国内外問わずにいろんな人に提供していただいたという感じですね。だから、彼らと一緒に細かくやりとりできる機会はなかったのですが、自分たち以外の血が楽曲に入るというのも面白いなと感じましたね。

──確かに。リヴァースとの共作曲は、ウィーザーっぽいテイストがうまく取り入れられていますしね(笑)。

後藤 そりゃ、そうなるわなという感じですよ(笑)。

喜多 でも改めて考えてみると、すごいことが実現できているんだなって思いますよ。学生時代だったら、絶対に考えられないことですからね。

後藤 そこに自分たちが慣れてしまったのが、怖いですよね。意外と、お願いしたら実現できることが多いんだって。それこそ前作では、フー・ファイターズのスタジオを借りてレコーディングもできちゃった訳だし。

喜多 思ったことは、実行してみるという姿勢になっていったのが、良かったのかもしれませんね。

山田 また『NANO-MUGEN』を通じて、僕らのことを知っていただいたというのもあるし。また国内に関して言えば、ホリエ(ストレイテナー)くんと一緒にスタジオ入って楽曲を制作したんですけど、メンバー以外の人とスタジオに入って作業するのが楽しかったですし、面白い楽曲に仕上がったのかなって。

 

今の音楽の聴き方にあう音作りを

 

──ホリエさんとのコラボ曲「廃墟の記憶」はアルバム本編ではなく、初回盤に付属される『Can’t Sleep EP』に収録。アルバムの全体像とは異なる雰囲気を持った楽曲に仕上がっているからかと思うのですが、今回アルバムとEPの2枚組構成にした理由は?

後藤 CD1枚に収録できなくはないボリュームの曲数だと思うんですけど、テイストの違いがあるから、全体が散らかってしまうという思いもあったし、また最近の音楽の聴き方からするに1枚で15曲というのはボリューミーだなと。自分でもサブスクリプションを使うと、アルバムを最初から最後まで聴くとなると、相当な覚悟が必要になるし(笑)。5,6曲聴いて、次のものに行くという聴き方が増えてきた。だから、10何曲もプレイリストがあると、身構えてしまう自分にハッと気づいたんですよね(笑)。今は、アルバムを発表するミュージシャンの数が減り、その代わりにEPをたくさん発表してスピード感を大切にする人が増えているし。

──スピード感やインパクトを重要視したと?

後藤 だいたい40分くらいで終わるくらいの作品になっていたら、今の時代聴かれやすいのかな?という考えはありましたけどね。その考えを、最終的には他のメンバー全員も共有してもらえたのではないかと思っています。

──『ホームタウン』のほうは、全体にストーリー性というか一貫した世界観を感じますよね。

喜多 当初は、いろんなタイプの楽曲があり、バラエティに富んだ作品になるのかな?と思ったんですけど、今回2枚に分けたことにより『ホームタウン』はまとまりのある仕上がりになったのかなと思います。力が抜けたリラックスした印象の1990年代パワーポップが、全体に流れているのではないかなと。ひとつひとつが完成度の高いものになっているけど、全体を通しても聴きやすさがあるという。今年最もお手軽に聴けるアルバムになったと思いますよ。

伊地知 基本的に最初の段階で作った楽曲が『Can’t Sleep EP』に収録されていて、その後低音を重視したものにしようという、はっきりとしたコンセプトが見えてきて、そこから完成したものが『ホームタウン』になったという感じですね。低音を重視すると、ドラムの音数を少なくしないと、全体のバランスが取れなくなってしなうので、なるべく空間を生かした演奏をするようになりましたね。だから、EPとアルバムでは異なる音色を楽しんでもらえると思います

 

背伸びをせず、卑屈にもならずにありのままの景色を歌に

 

──アルバムのコンセプトやテーマを教えていただけますか。

後藤 サウンド的には、自分たちが影響を受けた1990年代のパワーポップとか、オルタナといった音楽を、現代的に立ち上げ直したら、楽しいのではないか?と思って制作しました。だから機材や弾き方も変化しているし、また現代のロウ(低音)な感じを生かしているので、当時のものとは異なる音に仕上がっているのかなと思います。

──歌詞に関してはいかがですか?

後藤 歌詞を含む『ソング』の部分に関しては、何も気張らずに書いた感じですね。ある程度の年齢や経験を重ねて、それなりに歌詞もかけるようになれたという実感もあるので、そう悪いものは出来上がらないだろうと思い、街のこと、過去や未来のことを見渡しながら、あまり背伸びをせず、卑屈にもならず完成した楽曲が多いという印象ですね。今回の制作で最も気張ったのは、サウンド・メイキングだったので。そこでの苦悩はいろいろありましたが、歌詞に関しては比較的楽しんで作りたいなという気持ちで臨みましたね。

──では機材とかにこだわったんですか?

後藤 そうですね。ヴィンテージから最先端のものまで。まぁお金使ったわ、という感じで(笑)。

──そうしたら、出来るだけたくさんの人に聴いてもらわないといけないですね(笑)。

後藤 純粋に耳にしてもらえる時間を作ってもらえたら、それだけでいいですよ。お金はね「リライト」をカラオケで歌ってくれたら入りますから(笑)。可哀想とか思わないで、どんな手段でもいいので聴いてもらえるのがうれしいですね。

 

素晴らしい作品が出来ると、その後の活動が充実する

 

──また、このアルバムを完成させたことで、次のヴィジョンは見えましたか?

山田 今回はゴッチを中心とした音作りをして、ひとつの成果が出たような気がします。今後はそれをさらに追求するか?別の方向に行くのか?わかりませんが、面白いことができたら。

──山田さんは、『Can’t Sleep EP』収録の「イエロー」の作曲を手がけていらっしゃいますよね?

山田 この楽曲を作っていた頃は、アルバムの全貌が見えていなかった時期だったので、『ホームタウン』とはテイストの異なる楽曲になったのかなと。でも、この作品全体を通して聴いていただけたら、いろんなことをやっているバンドなんだなと感じてもらえる内容になったと思います。

喜多 この作品全体にいいフィーリングがあるように思います。山ちゃんが持ってくる、アジカンっぽい楽曲でもアレンジの手法で新しい雰囲気が生まれることもわかったし。

──また、この作品を携えたライヴの展望も気になるところです。

伊地知 まだ、どんなライヴをお見せできるのか?考えているところなんですけど。久々にオリジナル・アルバムを携えてのステージは、純粋に楽しみです。前回はプロジェクション・マッピングを駆使した演出をしたんですけど、次も趣向を凝らしたものをお見せできるように、頑張りたいですね。

後藤 今後のアジカンについての展望はよくわかりませんが、今回はとても素晴らしい作品が完成した気分なんです。そういった作品が完成した後の活動って、必ず充実したものになるので、今後さらに面白いことができるのかなって。だから他のメンバーも思ったことは、何でもやってみたらいいし。僕が何か他にやりたいことを見つけてしまったら、それに集中して(バンド活動は)テコでも動かない状況に陥ってしまうので、それまでにいろいろ試してみることはいいのかなって。まぁ、全員がいい歳になったので、周囲にあまり縛られることなく、自由に活動し続けていけたらいいですね(笑)。

PROFILE

写真左より、伊地知潔(Dr)、山田貴洋(B&Vo)、後藤正文(Vo&G) 、喜多建介(G&Vo)。1996年結成、03年メジャー進出。年末に開催される「COUNTDOWN JAPAN 18/19」への出演が決定。その他、最新情報はwww.asiankung-fu.comをチェック。

 

New ALBUM『ホームタウン』

キューン/4600円(2CD+DVD)/2018年12月5日発売

アニメ映画の主題歌となった「荒野を歩け」、先行シングル「ボーイズ&ガールズ」も収録。初回盤は、ストレイテナーのホリエアツシ他が参加した楽曲など、全5曲が収録された『Can’t Sleep EP』がついたCD2枚組仕様。アルバムとは異なる聴きごたえ。

取材・文:松永尚久

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