3月に発売されたシングル『CALLING』に続いて発表されるVAMPSの4thアルバム『UNDERWORLD』は、世界基準のヘヴィサウンドとキャッチィなメロディが押し寄せる挑発的な1枚。L’Arc〜en〜Cielとしても活動するボーカルHYDEが語る、自身の、VAMPSの、そして世界の“今”とは?
現れただけで空気が変わる圧倒的な存在感。しかし語り口は、落語で言う“ふら”を持つ優しいイントネーションで親しみやすささえ覚えさせる。そして天才的にキャッチィな返答の折に見せるいたずらっ子のような顔には、やはり抗いがたいカリスマ性がある。
そんなHYDEの主戦場は今、アメリカだ。VAMPS結成以来積極的に進出してきた海外で、2013年にはマドンナやレディ・ガガらの所属するLive Nationと提携。昨年は米国の大手マネージメント会社・10th Street Entertainmentと契約した。日本人が全米に乗り込むという事実は、挑発的な英語詞や音にも強く影響している。
「向こうのフェスに出ても負けないヘヴィでキャッチィなサウンドを考えると、叙情的なメロディーが求められる日本とはやはりレンジも歌い方も自ずと変わってきますね。歌詞もロックで攻撃的。今は日本より世界の最新シーンに照準を合わせた音楽をやりたいから…気に入ってもらえるとうれしいなと思います」
そうして出来上がったVAMPS約2年ぶりのアルバム『UNDERWORLD』のコンセプトは、目に見える世界の隙間に存在するダークサイド。「一見いないようだけど確かにいる…分かりやすく言うと、マフィアみたいな?」と笑うHYDEは、バンド名に似合う例えでタイトルの由来を語った。
「例えばベストアルバム『SEX BLOOD ROCK N’ ROLL』がVAMPSの“経典”の名前だとしたら、3rdの『BLOODSUCKERS』はファン…つまり“信者”を意味する言葉。今回は僕たちの集う“教会”になるのかなぁと思います」
フィンランドのチェリストによるヘヴィメタルバンド・APOCALYPTICAと組んだ全世界配信シングル『SIN IN JUSTICE feat. APOCALYPTICA』を含め、コラボレーションやフィーチャリング曲が多いのも今作の特徴だ。ゴスファッションに身を包むアメリカのメタルコアバンド・Motionless In Whiteのクリスをゲストボーカルに迎えた『IN SIDE OF ME feat. Chris Motionless of Motionless In White』、世界的に成功したドイツ出身バンド・RAMMSTEINのリヒャルトと共作した『RISE OR DIE feat. Richard Z. Kruspe of Emigrate/Rammstein』、そしてMAN WITH A MISSIONのベーシストKAMIKAZE BOYを迎えた『BREAK FREE feat. KAMIKAZE BOY of MAN WITH A MISSION』。この2年で世界を周る間に「自然と増えた」という名だたるアーティストとのダークで重厚かつポップな化学反応は、核を持ちながら多種多様なシチュエーションのライヴをこなしてきたVAMPSの柔軟性あってこそ。
「VAMPSはK.A.Zくんと僕のふたりだけなので、そういう意味では楽なんですよ。いいベーシストにはそのまま弾いてもらえるし、K.A.Zくんとツインギターになってもいい。新しい“血”が入りやすいというか、その変化がいい刺激になっていると思います」
そのメンバーがふたりともプレイヤーでありながらプロデューサー的視点を持つこともその柔軟性の礎となる。
「プロデューサーもついてるけど、任せきりじゃいけないとも思っているので。そういう自分が、今足りない曲を自分に作らせるんですよね。中盤に落ち着いた曲が必要だな…と思った頃には、自分でさり気なく『IN THIS HELL』を作ってた、みたいな(笑)。こんなハードなサウンドですが、みんな常に俯瞰で同じ方向を見て冷静に作っているんですよ…知的な不良という感じで」
結成から早9年。ハロウィンなどで見せるエンターテインメント性と、海外でも評価の高い音楽性で、常に予想外の愉しみを送り続けるVAMPS。ふたりの関係性に変化はあるのだろうか。
「K.A.Zくんとはもうお互いのことを分かってるんで、レコーディングは互いの得意な作業を任せあって没頭して、同時進行でひとつの曲を作る効率的な状態。それぞれ別個に作って持ち寄った前回の3rdアルバムに比べると、今回は互いのよさがグッと詰まった1stアルバムに戻った感触かも」
そして、〝籠城型ツアー〟と呼ばれる全国のZeppを中心としたライブハウスにおける連続公演に、国内外のツアーやフェスと、キャリアに比して異常なほどのライヴ数についてはナチュラルにこんなコメントが。
「よく『そんなにライヴやってて疲れません?』って言われるんですけど、逆なんです。僕がみんなのエネルギーを吸い取ってるんで(笑)。今回も元気吸わせてもらいますって感じですね」
まさにバンド名の通りのHYDEが音も見た目も老いずにいられる秘訣とは?
「うーん…欲しいものを欲しがるやんちゃな子供の気持ちのまま、守りに入らないことじゃないですか。ボクシングでも、防御より、負けてもいい覚悟の攻めの一発で戦う試合のほうが見ていて気持ちいい。僕もまだまだだし、もっと遠くを…上を見てるから。これがもう終わったな、守りだけでいいやと思ったら一気に老けると思いますよ(笑)」
HYDE
L’Arc〜en〜Cielのヴォーカリスト。2001年ソロデビュー。2008年、ギタリスト・K.A.ZとVAMPSを結成。2017年は6月21日水から9月18日月まで全国7ヶ所22公演のライブハウスツアーを実施予定。8月5日土、6日日には沖縄で「VAMPS LIVE 2017 BEAST PRTY」も開催。
目に言える物質的な“表の世界”ではなく、ダークサイドとも言える“裏の世界”にこそVAMPSの本質があるというコンセプトで製作された。全編にわたる英語詞は我々日本人に突きつけられたメッセージとしても、VAMPSと一緒に世界に突きつけるメッセージとしても聴ける、キャッチィかつヘヴィな1枚だ。Universal Music Japan 4月26日(水)発売
5000円(CD+Blu-ray)、4000円(CD+DVD)、1万7000円(CD+Blu-ray+DVD+スカジャン)、3000円(CD) ※すべて税別
Photo:DAISHI SAITO/Styling:YOSHIAKI TAKAMI
Hair&Make:NATSUKI KOJIMA/Text:KIWAMI SAKADO