第29回　スクーター編～その１

自由奔放でありながら、こなれたおしゃれ感で存在感を放ちまくる唯一無二なファッションと、ゆる～いけれど、独自の哲学に裏打ちされた大人な生き方が男子の憧れ。そんなノリさんのワードローブから“ド定番”のアイテムをひも解くメンズジョーカーの人気連載を「完全版」としてお届け！　また、『メンズジョーカー　プレミアム』では、各回のテーマにまつわる「番外編」も！

嗚呼、憧れの400㏄バイク　でも今は原チャリがド定番！

――前回（第27回、28回）は「机周りなど、まず自分の手が届く範囲から始めてみる」と、「男の基地」作りのアドバイスをもらいました。

机とイスから揃えつつ、文房具…最初に机周りを整えていって。次に好きな絵や写真、ポスターなんか貼ったりして。自分が集めてる時計とかフィギュア、レコード、本、クツなんかを並べてみる。で、そんなことやってるうちに、最終的に行き着く“並べモノ”が単車だろうね。

――所ジョージさんのようなガレージ付きのベース＝基地でバイクを磨き、改造する。まさに男の憧れですよね。

そうそう。所さんと違って大して機械には詳しくはないのに、とりあえず工具入れをレイアウトしたり。なぜか万力とか置いちゃったり。そいつを眺めながら、車庫でブランデーを飲んじゃったりして（笑）。かく言う俺も、何事もカタチから入る主義なんで。そういうアメリカンな感じに憧れて、21、22歳…とんねるずになりたてのころかな？　中型免許を取ったのね。合宿免許って言うの？

――合宿ですか!?　ノリさんが21、22歳といえば『オールナイトフジ』（’83年）が始まるか始まらないかのころ。教習所の生徒はさぞかし驚いたでしょうね。

そうね～。とんねるずの“小さい方”が毎日来るからビックリしてた（笑）。山梨の方まで泊りがけで行ってたんだけど。

――前に車の回（第５、第６回）では、自動車の愛車第１号は〈トヨペット〉コロナだったそうですが、最初のバイクは何を買ったんですか？

ウチの自転車屋（木梨サイクル）は当時、単車も置いてて。最初は50㏄の原チャリ。そのころはお金
がないし、中型は夢だったから、（石橋）貴明も俺んちで原チャリの新古車みたいのを買って。昔は
市ヶ谷にあった日本テレビとか、２人でよく通ってたよね。渋滞でも時間が読めるしで「わ、便利～
！」なんて言いながら。休みの日にはマネジャーと３台連なって遊びに行ったりもしてたな～。

――ちなみに車種は？

最初は〈ホンダ〉の“ラッタッタ（ロードパル）”や〈ヤマハ〉パッソル（※１）に始まり、『探偵物語』で松田優作さんが乗ってたベスパに憧れて（※２）。今も中古で同じタイプのべスパが出てると、それこそ「コレ、眺めながら飲みて～」って、たぶん乗らないのに買いたくなっちゃう（笑）。その後も中型に、ビッグスクーターと何台か乗って。八ヶ岳とかそのへんなら、毎週のように中型で往復してたこともあるよ。若いし反射神経もいいから、車の間をスイス～イってなもんで。最近の単車は速すぎるんでね。おっかないから少し休んでるとこなんだけど。ジジイになったら逆に、もう一回、大きいのもいいかな～とか思ってる。

――では、現在の愛車と言いますと…？

そういうのとは別に、チョイ乗り用に買ったのが〈ホンダ〉のスーパーカブ（アトリエのガレージで現物を見せていただく）。毎週のように競馬やってたころは「ヤっベ！　締め切りだ」って場外馬券場までコイツを飛ばしたり。腹が減った時は近くのコンビニに行ったりしてたよね。「してた」…っていうのは、しばらく乗らないうちにバッテリーが上がってたの！　「万力眺めながら飲んで…」とか言ってる場合じゃないし（笑）。男子たる者、少しは機械もイジれるようになんなきゃね。

【脚注】
※１　1976年2月、バイクでも自転車でもない、新しいジャンルの乗り物、ロードパルが発売。「ラッタッタ」のテレビＣＭとともに、その大衆価格、自転車代わりの便利さ、簡単な操縦性で人気に。パッソルは翌年、ロードパルの対抗車種として発売。1978年には上級車種としてパッソーラが登場。

※２　1979年9月18日から1980年4月1日まで日本テレビ系列で全27話が放送。松田優作演じる私立探偵、工藤俊作が人気に。彼が駆るベスパP150Xは当時の若者たちの憧れの的となった。

PROFILE
1962年3月9生まれ。東京都出身。帝京高校の同級生・石橋貴明ととんねるずを結成。若者のカリスマ的な存在となり、今も絶大な影響を与え続ける。佐藤健とのＷ主演映画『いぬやしき』が来年公開。語り手を務めるテレビ東京系『居酒屋ふじ』（毎週土24:20～）が放送中。