今週のコラムは前回に引き続き「メンズファッションの大原則」とも言えるようなお話しをいたします。
9月10日発売のメンズジョーカーはご覧頂けましたでしょうか。
「こなれミリタリーが新しい!」という見出しが目立ちます。書店で見かけたら是非手にとってお読みください。雑誌内に私のコーディネート解説が4Pに渡って掲載されているのですが書面では不十分でしたのでこちらでまとめて解説いたします。
▼おしゃれの大原則「ドレスとカジュアルのバランス」とは?
メンズファッションは「ドレスとカジュアルのバランス」をとることが大原則です。「ドレス」とはスーツスタイルのことです。テーラードジャケットやスラックスやシャツや革靴などを指します。またシルエットは細身が基本、配色はモノトーンが基本です。礼服やビジネススーツスタイルを連想すれば間違いないでしょう。カッチリとしていて緊張感のある大人っぽいスタイルですね。
そのドレスと相反する要素が「カジュアル」です。「カジュアル」とはスウェットパーカーやチェックシャツやインディゴデニムやスニーカーなどを指します。またシルエットはルーズが基本、配色はカラフルなものが基本です。普段着などを想像すれば間違いないでしょう。リラックスして余裕のある、言い方を変えれば少し子供っぽいスタイルです。
普段街で着るスタイル、つまり「街着」においては、この両軸のバランスをとってコーディネートを作ることが必要です。
「ドレス」だけで構成すれば単なる仕事中のビジネスマンに見られるだけです。「オシャレな街着」とは誰も思ってくれないでしょう。逆に「カジュアル」だけで構成すればコンビニに行くお兄ちゃんに見られるだけです。「オシャレ」からは程遠い存在でしょう。
この「緊張感」と「リラックス感」を象徴する、「ドレス」と「カジュアル」をバランスよく織り交ぜることがオシャレの大原則です。ビジネススーツの男性がネクタイをシュッと緩める時にふとした「色気」を感じさせる様に、街着も「緊張感」と「リラックス感」を織り交ぜたバランスを実践することで「色気」や「オシャレ感」が出てくるのです。
これは何も私だけが言っていることではありません。女性のファッション指南書でも出てきますし、多くの著名なデザイナーさんスタイリストさんもここまで論理的な言語ではありませんが、近いことをおっしゃっている方が大変多いです。
▼「街で着るスタイル」はそもそもミックスが前提となっている
そもそも「街着」とはミックスの文化です。「街着」のために作られた服はほとんどありません。テーラードはビジネス用として、ミリタリージャケットは軍用として、デニムは労働着として、スニーカーはスポーツウェアとして本来着るものです。それら異なる文化のもの、「本来街着のために作られたものではない服」をミックスして着ることが「街着」です。何故ならばミリタリージャケットにカーゴパンツにコンバットブーツを合わせたら軍人だからです。スニーカーにジャージを合わせたらスポーツ選手のトレーニングになるからです。スーツオリジナルのまま着ればオリジナルそのものにしか見えなくなります。街着はもとより「ミックス」が大原則なのです。
そしてそれらは「ドレス」と「カジュアル」に大きく分類できます。それらをバランスよく織り交ぜることが肝要なのです。
パトリシオさんに着せたコーディネート解説は分かりやすい例です。「カジュアル」なカーキのミリタリージャケットを同じくカジュアルなカーゴパンツに合わせるのではなく、スキニーデニムやレザーシューズで「ドレス」なアイテムで合わせるのです。そうすることでミリタリーの野暮ったさが上手く消えて、程よい緊張感が生まれ、粗野なミリタリーの中に「大人っぽさ」が生まれるのです。
逆も然りです。テーラードジャケットにスラックスにハットを合わせたスタイルは「キメすぎ」になってしまうことが多いです。肝心なのはバランスであり、いくらドレスライクなアイテムが好きだからといって「1カテゴリに傾倒する」ことはオシャレ観点的には、街着の歴史から考えてもNGなのです。
▼私たちは日本人だからこそ、少しだけドレス寄りにスタイルを組むべき
またもう一つ肝心なことをお教えします。私たち日本人は海外のオシャレスナップや、ブランドが出す外人モデルに着せたイメージルックなどを見て「結局外人だからカッコイイんだよなー」と思ったりもします。そしてそれは残念ながら事実です。
私たちは欧米の方々と比べ、胴長短足気味の体型が多く、また多くの方の顔は童顔です。上述の「ドレスとカジュアル」の説明でも出てきましたが、「ドレス」は大人っぽさの象徴であり、「カジュアル」は子供っぽさを表現します。
私たちは子供っぽい「童顔」と、未熟さを感じさせる「短足」といった、子供っぽい「カジュアル」な要素を生まれつき備えてしまっているのです。
「だからオシャレを諦めろ」という話ではありません。
「だから、海外の方々よりも、ブランドのイメージルックよりも、ドレス寄りに構築する」必要があるということです。
上記のパトリシオさんのコーディネートもそうですね。
カーキのミリタリージャケットという「カジュアル」なアイテムを使ったらからこそ、細身パンツと革靴と黒白のモノトーンの配色を使って、他要素をドレスに寄せているのです。
長くなりましたが、オシャレ構築において最も大事なことです。既に「自分がオシャレだ」と自認できる人の多くは、この論理を「感覚的」に理解しています。今上記の内容を読んで、「うんうん」と思った方も多いかと思います。実践している人は意識せずともこの論理が身についています。「答え合わせ」のように感じた方も多いでしょう。
今回はそんな「大原則」を語りました。次回以降はまた別の観点からロジカルファッションを紹介していきます。是非お楽しみに。
なお9月17日は私の自著「最速でおしゃれに見せる方法」の発売日です。amazonや各地の書店様でも購入可能です。上述の大原則をはじめ「おしゃれのロジック」をじっくりと語っています。是非手にとってみてください。
PROFILE
ファッションバイヤー、ファッションブロガー。バイヤーとして年間数十のブランドの展示会に足を運ぶ傍、ブログ「最も早くオシャレになる方法KnowerMag」を運営。感覚的だったメンズファッションの世界を「方程式」の様に論理的に語る内容が多方面から高い評価を得る。月額540円の有料メルマガ「現役メンズバイヤーが語る最も早くオシャレになる方法」では、有料メルマガのパイオニアである堀江貴文氏に次いで短期間で読者数ランキング4位をマーク。また9月17日に発売する書籍「最速でおしゃれに見せる方法」は予約段階ながらamazon全体での書籍売れ筋ランキングが最高3位をマーク。現在ブログやメルマガでの執筆の他「週刊SPA!」「WebNewType」「女子SPA!」「メンズジョーカー」や漫画「服を着るならこんなふうに」監修など多数の連載を抱えている今日本で一番忙しいファッションブロガーである(多分)。
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